2023 Fiscal Year Research-status Report
Elucidating electricity market mechanisms through sophisticated forecasting methods: integrating empirical insights from Japan and Europe
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22KK0217
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Research Institution | Kanazawa University |
Principal Investigator |
松本 拓史 金沢大学, 融合科学系, 准教授 (60883163)
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Project Period (FY) |
2023 – 2025
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Keywords | 電力市場 / エネルギー / ファイナンス / 予測 / 実証分析 / 裁定取引 / フォワードプレミアム / スパース回帰 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は,当該研究テーマに関する研究について,主に以下の成果を得た. ①分位点回帰やGAMLSSのモデルを用いて電力市場価格を予測し,それをスポット価格とインバランス価格間の裁定取引に応用する手法を開発した.特に,新たな指値入札に基づく最適な取引戦略を定式化し,その結果,市場間価格差を縮小させるだけではなく,市場価格のボラティリティを安定化させる対価としての追加的な裁定機会が存在することを解析的に導いた.また,日本と英国の実データを用いて,提案手法が価格差予測に基づく従来型の裁定取引よりも高い取引利益をもたらすことを示した.これにより,指値入札に基づく裁定取引が,市場の効率性と安定性を同時に向上させ得ることを理論と実証の両面から明らかにした. ②再エネの普及に伴って様々な気象条件が電気価格に影響を与えていることを踏まえ,その影響を精緻に捉えられる高精度かつ解釈可能な電力価格予測モデルを構築した.具体的には,Tayらが開発した主成分誘導型スパース回帰モデル(pcLasso)を活用し,複数の気象変数と系統情報を同時に取り入れたモデルを推定し,提案モデルの頑健性や解釈性を多角的に検証した.日本市場のデータを用いた実証分析の結果,pcLassoは予測精度とパラメータ推定の妥当性の両面で,LassoやRidge回帰などの先進モデルを上回ることが明らかになった.また,短期の予備率予測情報が価格予測の精度を大幅に改善させることを明らかにし,電力系統情報の透明性を向上させる意義についての政策的議論を展開した. なお,①は英国のロンドン・ビジネス・スクールに約1か月滞在して国際共同研究を行ったことによる研究成果であり,国際会議で発表するとともに,拡張した論文を国際学術誌に投稿するなどした.また,②はドイツのデュースブルク・エッセン大学との共同研究であり,今年度中に論文を国際会議に投稿するなどした.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
モデル構築やデータ分析が滞りなく進み,研究成果を国際会議の場で発表したり国際学術誌に投稿したりするなど,おおむね順調に進展しているといえる.
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Strategy for Future Research Activity |
価格予測モデルや市場取引手法を開発し,日欧市場の実証的示唆の獲得については,順調に研究成果を得ることができ,おおむね順調に進展しているといえる.今後も,より発展的な研究に取り組みつつ,国内外の発表を積極的に行うなどして,研究内容をさらに拡充させていく予定である.
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