2023 Fiscal Year Research-status Report
テクスチャ表面における添加剤吸着挙動の解明と新規潤滑システムへの応用
Project/Area Number |
22KK0236
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Research Institution | Saitama University |
Principal Investigator |
田所 千治 埼玉大学, 理工学研究科, 准教授 (00736770)
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Project Period (FY) |
2023 – 2025
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Keywords | トライボロジー / 潤滑油 / 添加剤 / 表面テクスチャ |
Outline of Annual Research Achievements |
機械の高効率化や長寿命化のために可動部には潤滑油が用いられている。潤滑油は、主成分である基油と極微少量の添加剤から成る。潤滑油が摩擦損失を低減させるのは、摩擦面に潤滑膜を形成させて金属同士の直接接触を妨げるためである。潤滑膜には、基油が流体力学的に作用して形成させる流体膜と、添加剤が金属表面に優先的に吸着して自発的に形成させる自己組織化膜(吸着膜)がある。また、表面加工による凹凸構造(表面テクスチャ)の付与は、流体膜形成の増強効果や油溜まり効果、摩耗粉のトラップ効果が期待されるが、表面テクスチャが摩滅して機能が失われる可能性がある。本研究では、表面テクスチャの流体膜形成の増強効果と油溜まり効果により添加剤の吸着膜の形成を促進・制御することで、吸着膜と基油との相互作用を増強し、吸着膜により表面テクスチャを保護するという相乗的な潤滑効果により、実機条件下においても低摩擦性を維持可能な潤滑システムの創成を目的としている。また、代表者の「吸着膜の形成能力の評価技術」と共同研究者の「表面テクスチャの設計技術・潤滑性評価技術」および「実機条件における潤滑性評価技術」の融合により、「テクスチャ表面における吸着膜形成挙動の解明と新規潤滑システムへの応用」を目指す。 本年度では、レーザ加工による表面テクスチャを付与した試験片を作製し、基油の流体膜形成能力に対する表面テクスチャの効果を実験的に調べるとともに、解析的に効果を予測するための解析モデルを準備した。また、実機条件下で表面テクスチャの潤滑性を評価するため、高速往復摺動型摩擦試験機を改良して、摩擦面のin-situ観察を可能にした実験環境を構築した。さらに、吸着膜の形成を評価するために、潤滑膜厚分布計測の空間分解能を高めた実験環境を構築した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
表面テクスチャを付与した試験片を作製し、基油の流体膜形成能力に対する表面テクスチャの効果について実験的評価が完了したため。また、吸着膜の形成能力を評価するための実験環境と実機条件下の潤滑性を評価するための実験環境が整ったため。
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Strategy for Future Research Activity |
基油の流体膜形成能力を解析的に評価可能にすることで、昨年度の実験で得られた結果と比較し、表面テクスチャの効果について考察する。また、吸着膜形成能力の評価と実機条件下の潤滑性評価を実施する。
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