2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of a landform evolution model to predict floods with debris flows due to climate change
Project/Area Number |
22KK0239
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
井上 卓也 広島大学, 先進理工系科学研究科(工), 准教授 (20647094)
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Project Period (FY) |
2023 – 2025
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Keywords | 土砂洪水氾濫 / 混合粒径 / 岩盤 / 水理実験 / 数値解析 |
Outline of Annual Research Achievements |
豪雨により生産された大量の水と土砂が洪水氾濫を起こす“土砂洪水氾濫”が増加している.土砂洪水氾濫を予測するためには,河床・河岸・岩盤の侵食による土砂生産と,生産された混合粒径土砂の堆積による洪水氾濫を考慮する必要がある.応募者が開発する地形シミュレータMRSAAモデルは,河床・河岸の侵食に加え,岩盤の風化侵食も考慮できる点に他に無い特徴を持つ.また流体力学に基づく洪水解析も可能である.しかし,土砂の堆積位置を正確に把握するために必要な混合粒径土砂の移動機構を考慮していない. そこで研究初年度は,混合粒径砂礫が岩盤床を侵食する際の移動・堆積状況を観察するため,モルタルを施工した疑似的軟岩水路上で,混合粒径砂礫を供給する模型実験を実施した.既往研究によると,単一粒径の場合,粒径が大きいほど岩盤侵食量は大きくなる.しかし,我々の実験の結果,混合粒径の場合,粒径の平均的な大きさのみではなく岩盤の凹凸や粒度構成によって,岩盤侵食量は変化することが明らかとなった.これは岩盤の凹凸と粒度構成によって,流砂の移動量・堆積量が変化し,岩盤の衝突摩耗量が変化するためである. また,土砂洪水氾濫リスクを評価するために将来気候の流出土砂量を予測することは重要である.そこで,混合粒径において斜面崩壊と河床侵食を考慮した既往モデルを用いて北海道のペケレベツ川流域を対象に将来の流出土砂量を予測した.その結果,d4PDF(5km解像度)の降雨量増加率は1.2倍から1.6倍であるのに対し,流出土砂量の増加率は3.0倍から5.5倍とかなり大きくなった.これは,降雨パターンの変化により斜面崩壊が増加し,斜面からの細かい土砂の供給により河道の流砂能力が増加するためである.ただし,既往モデルには上記の水理実験から明らかになった岩盤床の凹凸の影響が加味されていないため,今後さらなる検討が必要である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
混合粒径砂礫に関する水理実験を実施し,その結果を用いて共同研究者であるテキサス大学オースティン校のJoel Johnson准教授と議論を行った.また,土砂洪水氾濫リスクを評価するために必要な将来気候における流出土砂量予測を,既往の混合粒径モデルを用いて実施しており,新たな混合粒径モデルが開発でき次第,気候変動の影響予測が行える準備を整えた. 共同研究については,2024年3月からテキサス大学オースティン校への留学を開始しており,2024年9月まで客員研究員として同校に滞在し,Joel Johnson准教授と共同で研究を進める予定である. 以上のことから研究は当初計画通り順調に進展していると考える.
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Strategy for Future Research Activity |
研究初年度に実施した実験結果について,共同研究者であるテキサス大学オースティン校のJoel Johnson准教授と議論を行った結果,混合砂礫の堆積面に対する岩盤凹凸の突出率が,砂礫の移動量や岩盤侵食量に大きな影響を与えている可能性があるとの結論に至った. そこで,テキサス大学留学中(2024年3月~9月)にJoel Johnson准教授と研究2年目の実験条件について議論を行い,日本に戻った後に水理実験を実施する予定である.その後,実験結果を用いて,Joel Johnson准教授ともう一人の共同研究者であるダラム大学(イギリス)のRebecca Hodge教授を含め,新たな混合粒径モデルの開発を行う予定である. 研究3年目は,上述の混合粒径モデルと申請者が開発を続けている地形シミュレータMRSAAモデルとの融合を行う.その後,気候変動予測の違いが,山地から扇状地にかけての区間で発生する土砂洪水氾濫に及ぼす影響について分析する予定である.
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