2023 Fiscal Year Research-status Report
Interference effects caused by multiple scattering of the near-infrared electric fields in super-concentrated solutions
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22KK0243
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
藤井 宏之 北海道大学, 工学研究院, 准教授 (00632580)
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Project Period (FY) |
2023 – 2025
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Keywords | 超高濃度溶液 / 近赤外分光 / 電場の干渉 / 電場の多重散乱理論 / 輻射(ふくしゃ)輸送論 |
Outline of Annual Research Achievements |
本国際共同研究では、化学工学などで使用される超高濃度(体積分率20%以上)のコロイド溶液における、近赤外波長帯域の散乱電場の干渉が及ぼす光散乱特性への影響(干渉効果)を普遍性の観点から、理論、計算、実験より明らかにすることを目的としている。2023年度では、ロスキレ大学(デンマーク)、Jeppe Dyre教授の研究グループと議論し、彼らが開発しているGPU計算による高速な分子動力学計算手法を習得した。分子動力学法による計算結果を、研究代表者が開発している電磁波理論に組み込み、新たな光散乱特性モデルを開発した。分子動力学法によって、コロイド粒子間の多様な相互作用(斥力と引力)を考慮することができる。相互作用モデルとして、レナード・ジョーンズモデル、モースモデル、斥力のみ考慮したカットオフモデルを用いた。それぞれのモデルにおける光散乱特性の密度依存性の結果は異なる。この結果に対して、ロスキレ大学が知見を有している、スケーリング解析手法を光散乱の場合へと拡張し、光散乱特性の普遍性について、部分的にではあるが示すことができた。開発した解析手法では、フィッテングパラメータを導入しないため、スケーリングの物理化学的意味が明確である。よって、本研究の自然科学の基礎研究として意義は大きい。研究計画では、過剰エントロピースケーリングの適用を考えていたが、計算結果が一致するマスターカーブは得られなかった。そのため、別手法を共同で模索・考案した。帰国後、ロータリーエバポレーター(真空ポンプ、恒温槽、冷却器など)による濃縮システムを構築した。研究計画では、帰国期間、北海道大学にて、超高濃度溶液における光計測を実施する計画である。最大の体積分率が20%である原液を濃縮する予定である。凝集を避けるため緩やかな濃縮条件を現在探索している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初受け入れを了解頂いていたロスキレ大学の教員(Trond准教授)が2023年度から異動したため、急遽、同研究室の教員であるJeppe Dyre教授に受け入れて頂いた。初対面であったため、研究内容や計画を説明し、また、話すことで人柄を理解するところから始めた。そのため、2023年度の初期の段階では進捗は遅れていた。しかし、滞在期間中、密に議論させて頂き、当初の計画、分子動力学法と電磁波理論の融合、普遍性解析、濃縮装置の開発まで概ね達成している。そのため、上記の区分とした。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度では、Leung Tsang教授(ミシガン大学、アメリカ)の研究室に4カ月間(9月から12月まで)滞在する計画である。本研究で着目する超高濃度溶液では、電場の多重散乱を考慮する必要があり、Foldy-Lax(FL)方程式の高次解を必要とする。Tsang教授研究室に滞在し、FL方程式の計算コードを共同で開発する。FL方程式をベクトル球面波動関数で展開し、逐次的に解く。粒子配置の熱揺らぎに起因した電場の揺らぎを考慮するため、FL方程式の解に対して統計モーメント平均をとる。平均に必要となる、展開次数に応じたモーメント次数の密度相関については2023年度で計算している分子動力学法の結果を利用する。得られる平均電場エネルギーより、光散乱特性の体積分率・波長依存性を計算する。 国内にいる間では、ロータリーエバポレーターより溶液を濃縮し、体積分率20%以上の超高濃度溶液を作製する。溶液として体積分率20%の脂肪乳剤を原料とする。ロータリーエバポレーターの回転速度、恒温槽と冷却器の温度などを調整し、緩やか、かつ効率よく濃縮する条件を探索する。作製した溶液に対して光計測を実施し、光の換算散乱係数(光散乱特性の一つ)を実験的に算出し、濃度依存性を解析する計画である。得られた散乱係数の実験データに対して、研究代表者らが開発しているモデル式を先ずはそのまま適用し、モデル式の適用範囲を検証する。検証結果より、モデル式の改良を試みる。また、2023年度で開発した分子動力学法に基づいた光散乱特性モデルによる計算をより細かな温度や体積分率の条件にて実施し、加えて粒子数を増やし、堅実な計算データを取得する。ロスキレ大学のJeppe Dyre教授とは現在オンラインベースで定期的に議論している。2023年度の研究内容についてまとめ、成果発表を実施する計画である。
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