2022 Fiscal Year Research-status Report
ベージュ脂肪前駆細胞の増殖能を制御する機構の解明~心房細動の新たな治療戦略~
Project/Area Number |
22KK0278
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Research Institution | Oita University |
Principal Investigator |
安部 一太郎 大分大学, 医学部, 客員研究員 (00747595)
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Project Period (FY) |
2022 – 2024
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Keywords | 心外膜脂肪 / 心房細動 / 前駆脂肪細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
代表者は,心臓手術中に得られるヒト心房組織の解析に着手し,“心房筋に浸潤する心外膜脂肪”が持続的な炎症と線維化を惹起し持続性心房細動の原因となるという知見を発表した。この,線維化をともなった心外膜脂肪浸潤こそが,持続性心房細動の治療を困難にする元凶であると確信し,同部位への介入手段を検討する必要性を感じた。また,平成30年度に続き,令和3年度 科研費若手研究 21K16092「心外膜前駆脂肪細胞の分化誘導による量と質の制御~心房細動の新たな治療戦略~」(基課題)が採択されている。基課題の目的は,「心外膜由来前駆脂肪細胞を,悪玉の白色脂肪ではなく善玉のベージュ脂肪へ分化誘導し,“心房筋に浸潤する心外膜脂肪の量と質の制御”により,線維化をともなった脂肪浸潤を減少させ,心房細動の抑制を可能にする」 ことである。本国際共同研究では,“ベージュ前駆脂肪細胞の新たな増殖機構の解明”を目的とし,基課題と相互補完的に実施することで,これまで難治性とされてきた長期持続性心房細動の治療を飛躍的に向上させることへの布石となる。本研究(基課題+国際共同研究)をとおして健康社会の実現に貢献したい。代表者は,心房組織において,ベージュ脂肪細胞の存在を確認し,初代培養ヒト心外膜由来前駆脂肪(間葉系)細胞を,培養液の調節により脂肪細胞へ分化誘導することに成功した。さらに,マウス心房筋に浸潤する心外膜脂肪を同定し,高脂肪食負荷による炎症と線維化の変化を解析中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
CD81陽性前駆細胞の系統追跡モデルマウスを用いた解析 まず初めに,成熟白色脂肪細胞に発現しているβ3アドレナリン受容体が,CD81陽性前駆細胞には発現していないことを確認したうえで,生体マウスではβ3アゴニスト投与によりCD81陽性前駆細胞由来のベージュ脂肪細胞が増殖することを,CD81陽性前駆細胞にGFPを発現させた系統追跡モデルマウスを用いて明らかにした。このことは,β3を介さないCD81陽性前駆細胞の増殖経路が存在することを示唆しており,またCD81陽性前駆細胞において,脂肪酸トランスポーターとして知られるCD36が高く発現していることから,β3受容体を発現している成熟白色脂肪細胞の脂肪分解により放出された遊離脂肪酸が鍵ではないかと着想した。→ CD81陽性前駆細胞は,寒冷・β3アゴニスト刺激下でβ3アドレナリン受容体非依存的に増殖し,脂肪酸トランスポーターCD36が, CD81陰性前駆細胞と比較して高発現している。
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Strategy for Future Research Activity |
CD81陽性細胞特異的CD36KOマウス・初代培養細胞を用いた解析 現在,CD81陽性前駆細胞特異的に,脂肪酸トランスポーターCD36をノックアウトしたマウスを作製し,検討を行っている。CD81陽性細胞特異的CD36KOマウスで,寒冷刺激下でのCD81陽性前駆細胞の増殖能の増加程度,ベージュ脂肪の出現について検討する。
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