2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23000012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 教授 (70114494)
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Keywords | 病原細菌 / 感染 / 自然免疫 / バリアー / 粘膜上皮 / エフェクター / オートファジー / 低分子化合物 |
Research Abstract |
項目1.赤痢菌エフェクター機能と標的宿主因子の包括的解明:本研究では、赤痢菌よりIII型分泌装置を通じて宿主へ分泌される新規エフェクターの生物活性とその標的宿主因子を解明して、赤痢菌の自然免疫克服における普遍的・特異的な感染戦略を明らかにすることを目的としている。平成23年度は10種のエフェクターについて解析を実施した。その結果、菌の粘膜感染における新規感染機能に関わるエフェクターを以下に同定した。(i)マクロファージに対する赤痢菌の炎症性細胞死を促進する(論文投稿中)。(ii)上皮細胞侵入に伴うラッフル膜の制御を行う(論文準備中)。(iii)細胞侵入初期においてUBC13の脱アミド化によりTRAF6依存的な炎症応答を抑制する(Nature 2012)。(iv)細胞侵入に伴い破壊された形質膜のジアシルグリセロール(DAG)活性化を介したNF-κB活性化の抑制機構とその抑制因子。(v)感染初期の上皮細胞死誘導を抑制する因子とその抑制機構(論文投稿中)。 項目II.赤痢菌自然感染マウスモデルの開発:本研究では、赤痢菌のオートファジー回避不能変異株およびその認識に重要なAtg5を解析ツールとして、選択的オートファジーの開始に関わる新規宿主たんぱく質としてTecpr-1を同定し、さらにそのノックアウト(KO)マウスを作製した(Cell Host Microbe 2011)。作製したTecpr1-KOマウスは、BALB/cおよびC57BL/6マウスへ10世代までバッククロスした。得られたマウスより調製したMEFを用いて、選択的オートファジーのレベルが低下していることを確認した。項目III.エフェクター機能阻害剤の同定:本研究では、エフェクター機能を特異的に阻害する化合物の探索のためのハイスループットスクリーニング方法を時間分解蛍光共鳴エネルギー転移検出法により確立した。東大創薬イノベーションセンターとの共同研究で、赤痢菌のIpaHのユビキチンリガーゼ活性を阻害する化合物の小規模スクリーニングを実施し、いくつかの候補化合物を得た。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規なエフェクターの解明を通じて赤痢菌の感染初期における炎症応答抑制戦略を解明しNature誌へ発表した。また他のエフェクターについても一部は現在論文投稿中である。また赤痢菌を解析ツールとして選択的オートファジーに関わる新規因子を発見しCell Host Microbe誌へ発表し、その因子の欠損マウスを純系化して個体における意義を証明した。本研究では、病原細菌のエフェクター解析を通じて初めて宿主の自然免疫に関わる新規因子を見いだしオートファジーの理解に深く貢献できた。さらにエフェクター機能阻害化合物のハイスループットシステムの至適条件を検討し候補化合物を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
赤痢菌がIII型分泌装置より分泌する機能未知エフェクターとその宿主標的因を同定し、それらの粘膜感染と自然免疫回避における役割を、分子、細胞、組織、固体の各レベルで解明する。また、新規エフェクターについて生化学的性状を精査し、他の病原菌の類似因子と比較解析を行い、感染における特異性、普遍性を明らかにする。また、Tecpr-1ノックアウトマウスを利用した赤痢菌自然感染モデルの作成においては、マウス遺伝形質および腸管内のミクロビオータとの関係を精査する。さらにエフェクター機能を特異的に阻害する低分子化合物の探索は、確立したスクリーニング方法用いて大規模スクリーニングを行い、より特異性および活性の阻害剤候補を得る。
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Research Products
(30 results)