2012 Fiscal Year Annual Research Report
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23000012
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
笹川 千尋 東京大学, 医科学研究所, 名誉教授 (70114494)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 病原細菌 / 感染 / 自然免疫 / バリアー / 粘膜上皮 / エフェクター / オートファジー / 低分子化合物 |
Research Abstract |
I.赤痢菌エフェクター機能と標的宿主因子の包括的解明:今年度解析した6種のエフェクターに関して、①マクロファージの炎症性細胞死誘導に関わっていた(論文準備中)。②感染時に生ずるファゴソーム膜断片がDAMPsとして認識され、その炎症応答を制御した(投稿中)。③感染に応答してカスパーゼ4依存的な細胞死が誘導され、これに対してカスパーゼ4活性を阻害した(投稿中)。④腸管感染でIgAの分泌量を調整した。⑤新たな炎症応答を阻害した。⑥OspIエフェクターの標的因子Ubc13との共結晶を作製し酵素-基質間の分子構造を解明した(JMB 2013)。⑦赤痢菌の上皮細胞間拡散のルートとしてtricellular junctionを同定し、クラスリン依存的なエンドサイトーシスにより隣接細胞へ菌が取り込まれることを発見した(Cell Host Microbe 2012)。 II.赤痢菌自然感染マウスモデルの開発:本研究で同定した、選択的オートファジー開始に関わる新規宿主因子、Tecpr-1のKOマウス由来MEFで、赤痢菌感染に対するオートファジー誘導能低下が確認された(Cell Host Microbe 2011)。Tecpr-1KOマウスへ赤痢菌を経口投与すると、菌が腸粘膜へ定着し、粘膜破壊・炎症応答が誘導された。即ち赤痢菌自然感染モデルとして有望であることが認められた。 III.エフェクター機能阻害剤の同定:前年度は、IpaHファミリーのユビキチンリガ−ゼ活性を抑制する化合物を探索するためのスクリーニング系を確立した。①今年度は、確立したスクリーニング法を用いて東大創薬オープンイノベージョンセンターの化合物ライブラリーを用いて高効率スクリーニングを実施した。②得られた候補化合物のIpaH機能阻害特異性を調べるために、IpaHファミリータンパク質2種類を用いて阻害能を測定、比較検討を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究は、新規なエフェクターの解明を通じて、赤痢菌の感染初期に認められる上皮細胞死としてカスパーゼ4存在性の細胞死を同定し、またその活性を特異的に阻害するエフェクターとそのメカニズムを解明した(Cell Host Microbe 投稿中)。また細胞侵入に伴い誘導される炎症応答抑制戦略の一端を解明した(PLoS Pathog 投稿中)。また赤痢菌の細胞間拡散のメカニズムとして、tricellular junctionおよびクラスリン依存的エンドサイトーシスが関与していることを明らかにした(Cell Host Microbe 2012)。本成果は、上皮細胞間における病原体のみならず巨大分子輸送モデルとしても高く評価されFaculty1000で紹介された。また赤痢菌を解析ツールとして選択的オートファジーに関わる新規因子を発見し(Cell Host Microbe 2011)、前年度にその欠損マウスをBALB/cで純系化した。Tecpr-1KOマウスは、赤痢菌の経口感染により、菌が腸粘膜へ定着し赤痢様の症状を呈した(未発表)。Tecpr1-KOマウスはこれまで不可能とされてきたマウス自然感染モデルになりうるものとして、次年度はそのメカニズムを解明する。さらにエフェクター機能阻害化合物のハイスループットシステムを東大生物機能制御化合物ライブラリーへ導入し候補化合物を得た。
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Strategy for Future Research Activity |
赤痢菌より分泌される機能未知エフェクターとその宿主標的因を同定し、それらの粘膜感染と自然免疫回避における役割を、分子、細胞、組織、固体の各レベルで解明する。今後残された機能未知のエフェクターについては、全ての遺伝子欠損変異株を作製する。また、新規エフェクターについて、結晶化と生化学的性状を精査し、他の病原菌の類似因子と比較解析を行い、感染における特異性、普遍性を明らかにする。また、Tecpr-1-KOマウスによる赤痢菌自然感染モデルの、赤痢菌感受性規定因子を、マウス遺伝形質および腸管ミクロビオータとの関係で明らかにする。さらにエフェクター機能を特異的に阻害する低分子化合物の大規模スクリーニングにより得られた候補化合物の基質特異性を精査し阻害剤候補をさらに絞り込む。
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