2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23000014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 近 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70172210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 治夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (40292726)
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
金井 隆太 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50598472)
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Keywords | イオンポンプ / 膜蛋白質 / 結晶解析 / エネルギー変換 |
Research Abstract |
(a)筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseの残された中間状態と変異体の高分解能構造決定:これまでにSERCAlaのE1(Ca^<2+>無し)結晶に関し、原子モデルを構築できるところまで達し、サルコリピンと考えられるヘリックスが解像された。さらに、筋小胞体から精製した場合、どうしてもサルコリピンが混入することから、SERCA1aの大量発現・生産と結晶化を試みた結果、発現蛋白質の結晶ではそのヘリックスは存在しないことを確認した。また、Cys残基を導入した架橋実験によって、モデルの正当性を検証できた。これは、カルシウムポンプの調節機構に関する大きな前進である。変異体に関しては、膜内通路のゲートであるE309の構造解析を進めている。結晶は既に得られているが、微結晶であるため、データ収集に時間を要している。一方、疾病との関連で重要なSERCA2A/Bの大量発現にも成功した。 (b)Na^+,K^+-ATPaseの反応中間体の構造決定:EIP・3Na^+・ADP状態の構造決定が当面の目標である。現在分子置換法による解を求められるような結晶が得られ、解析を進めている。しかし、まだナトリウムイオンを解像できるような分解能ではないので、結晶化条件をさらに改良する必要がある。 (d)植物液胞のH^+ポンプであるH^+-PPaseの高分解能構造決定:既に複数の状態での高分解能の結晶構造解析に成功しており、基質の加水分解に伴って、膜貫通ヘリックスの一本が動きゲートの開閉を行うというまったく新しいメカニズムが見出された。現在、論文執筆中である。 (e)結晶中の脂質二重膜の可視化の新技術の開発:方法論的開発が必要であったコントラスト変調を利用した研究はほぼ完成し、カルシウムポンプの構造変化に応じて膜が変形する場合だけではなく、蛋白質全体が傾斜する場合もあることが判明した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アデノウィルス・COS細胞系による大量発現システムが予想以上に順調に稼動した結果、サルコリピンに関する予想外の構造情報が得られた。また、予定よりも早く、SERCA2A/Bの大量発現・精製に成功し、構造決定への道が開けた。H^+-PPaseに関しても、予想を上回る情報が得られ、プロトン輸送に関する予想外のメカニズムが明らかになった。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓病との関連で、カルシウムポンプの調節蛋白質サルコリピンの結合様式が明らかになったこと、SERCA2Aの大量生産に成功したことは非常に大きな進展である。次に、より直接的にSERCAの制御に関わるフォスフォランバンとの共結晶化を試みる。また、大量生産系が順調に稼動した結果、マラリア原虫のポンプPfATP4/6、パーキンソン病に関わるtypeVP型ポンプの解析も進める。Na^+,K^+-ATPaseに関しても、結晶化に重要な因子が理解されたので、E1P・3Na^+・ADP状態のみならず、他の状態の構造解析、薬剤との複合体の構造解析も急速に進展すると期待できる。
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