2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23000014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 近 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70172210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
小川 治夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (40292726)
金井 隆太 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50598472)
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Project Period (FY) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | イオンポンプ / 膜蛋白質 / 結晶解析 / エネルギー交換 |
Research Abstract |
(a)筋小胞体Ca2+-ATPaseの残された中間状態と変異体の高分解能構造決定: SERCA1aのCa2+無しのE1.Mg2+結晶に関し、3.0 A分解能での構造決定を終了しNature誌に論文を発表した。これにより、Mg2+イオンによる反応促進の機構を説明し、2つのCa2+結合部位が段階的に形成される過程を明らかにした。一方、この結晶ではサルコリピンと考えられる膜貫通ヘリックスが解像され、架橋実験とサルコリピンを含まない組替えSERCA1aの結晶構造決定によって、構築した原子モデルの正当性を証明するとともに、サルコリピンによる阻害機構を明らかにした。アデノウィルス・COS細胞による発現系を最適化し、1Lの培養液から1 mgの精製蛋白質を得ることができるようになった結果、疾病との関連で重要なSERCA2A,Bの大量生産・精製にも成功した。SERCA2aに関しては複数の状態での結晶化にも成功した。 (b)Na+,K+-ATPaseの反応中間体と薬剤との複合体の構造決定:E1~P.3Na+.ADP状態の構造決定を進めている。分解能が向上した結果、3個のNa+の結合と配位の様式を同定でき、M5ヘリックスの運動とその制御の重要性が明らかになった。これによって、Na+,K+-ATPaseがNa+に対する親和性は低いにも拘らずK+やCa2+を排除してNa+ポンプとして働き、一方でほぼ同じ残基を使いながらK+を対向輸送できる理由を構造から説明できた。現在、論文を執筆中である。さらに、薬剤との複合体に関しても、ウアバインとの高親和性複合体の結晶解析を進めている。また、種々の強心配糖体との複合体の生化学的解析、燐脂質がNa+,K+-ATPaseの活性・安定性に与える影響に関し、デンマーク、イスラエルグループとの共著論文を出版した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
アデノウィルス・COS細胞系による大量発現システムの最適化に成功し、分子量10万を超える高等動物膜蛋白質であるにもかかわらず、1Lの培養液から1mgの精製蛋白質を得るという大きな進展があった。このことは、ほぼ自由に結晶解析に十分な量のイオンポンプ蛋白質を得ることができるようになったことを意味する。この結果、SERCA2aに関しては2つの状態での結晶化に成功し、その一つに関しては原子モデルまで構築できている。その結果、SERCA1aとの予想外の構造的差異が明らかになった。また、Na+,K+-ATPaseの結晶解析も予想外の結果が得られ、結晶化も当初計画より順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
心臓病との関連で、SERCA2aの大量生産と単体での結晶化に成功したことは非常に大きな進展である。サルコリピンより直接的にSERCAの制御に関わるフォスフォランバンとの共結晶化を進めるべく、共発現の系を最適化している。また、サルコリピンと熱発生の関係を明らかにすることが次の課題である。Na+,K+-ATPaseに関しても、結晶化に重要な因子が理解されたので、E1~P.3Na+.ADP状態のみならず、他の状態の構造解析も進展するであろう。薬剤との複合体もウアバインのみならず、他の強心配糖体との結晶化を進める。
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