2015 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23000014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
豊島 近 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 教授 (70172210)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小川 治夫 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 准教授 (40292726)
三村 久敏 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (30463904)
金井 隆太 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (50598472)
椛島 佳樹 東京大学, 分子細胞生物学研究所, 助教 (00580573)
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Project Period (FY) |
2013 – 2016
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Keywords | イオンポンプ / 膜蛋白質 / 結晶解析 / エネルギー変換 |
Outline of Annual Research Achievements |
(a)筋小胞体Ca^<2+>-ATPaseの残された中間状態と変異体の高分解能構造決定 : 結晶化条件の改良の結果、心筋のカルシウムポンプであるSERCA2Aの複数の状態を含む5つの構造決定に成功した。特に重要なものはCa^<2+>非存在下でATPアナログを結合した構造であり、「燐酸転移反応の活性化シグナルとは何か」に関し重要な情報が得られた。大量発現・生産システムをさらに改良した結果、形質膜のCa^<2+>-ATPaseの大量発現にも成功し、生化学的な検討を開始した。また、量子化学計算をE309Q変異体に適用し、大規模な構造変化の原因を究明した。E2構造にも適用した結果、量子化学的に正しい原子モデルを構築できた。(b)Na^+, K^+-ATPaseの反応中間体と薬物との複合体の構造決定 : E2・MgF_4^-・2K^+結晶を用いたK^+とT1^+の置換実験と温度因子の解析から、細胞外側ゲートの開閉に伴う構造変化を導出し、論文として出版した。また、多数の強心配糖体との複合体の結晶構造解析を、特に臨床試験段階にある薬剤に重点をおいて進めた。回折の異方性を考慮した結果、電子密度図は大きく改善された。さらに、このポンプを陽イオンチャネルに変えてしまう海産物毒パリトキシンとの複合体の結晶化に成功し、パリトキシンの一部のモデリングにも成功した。(d)植物液胞のH^+ポンプであるH^+-PPaseの構造決定 : ATPアナログ結合状態では、細胞質側ゲートは開状態から閉状態まで広範囲の構造を取る採り得るが、加水分解によって閉状態のみが許されることを見出した。(g)脂質二重膜の可視化 : 4状態のカルシウムポンプ結晶中の脂質二重膜を溶媒コントラスト変調により可視化し比較した結果、膜貫通ヘリックスの運動によるエネルギーコストを最小化する機構が明らかになり、論文も完成した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成27年6月に蛋白質大量生産のためのウィルス作製に使用した細胞が別のウィルスで汚染されていた疑いが発覚し、清浄な細胞を用いて再度、ウィルス作製・大量生産を行なう必要があった。そのため、研究計画を変更し研究期間を6ヶ月延長する必要が生じた。変更後、27年度終わりまでに蛋白質大量生産をやり直す予定であったが、予定通り大量生産に成功している。Ca^<2+>-ATPaseに関しては、SERCA2の複数の状態の構造決定が完成したこと、Na^+, K^+-ATPaseに関してはパリトキシンとの複合体の結晶化に成功したことなど、当初の計画以上に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
ウィルス作製に使用した細胞の汚染の問題も解決し、停止していたマラリア原虫のイオンポンプに関しても大量生産に成功したので結晶化を再開する。SERCA2bに関しては、予備的結晶化には成功しているため、結晶化条件の改良によって構造決定を目指す。本研究は最終段階にあるため、論文執筆に注力する。
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