2012 Fiscal Year Annual Research Report
比較可能性がとれた海水中栄養塩濃度の全球分布及び総量に関する研究
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23221003
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Research Institution | Japan, Meteorological Research Institute |
Principal Investigator |
青山 道夫 気象庁気象研究所, 地球化学研究部, 主任研究官 (80343896)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
村田 昌彦 独立行政法人海洋研究開発機構, 地球環境変動領域, チームリーダー (60359156)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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Keywords | 化学海洋 / 環境計測 / 地球温暖化 |
Research Abstract |
「海洋での栄養塩の正確な空間分布を明らかにする。」ための基礎となるデータセット作成を中心に研究をすすめた。またデータ処理のためのツールの開発と陸上での国際共同実験を行い、栄養塩データの比較可能性の程度を検討した。データセット作成のために、栄養塩標準を用い分析の不確かさが0.2%より良い測点間の比較可能性が確保されている航海を4航海行った。複数のデータセット(CCHDO、WGHC、CARINA、PACIFICA、気象庁)から栄養塩データが存在している航海を抽出し、データセットに組み込んだ。 これらのデータから、栄養塩標準を使用し比較可能性が明示的に確保されている航海を基準として、全球243点で交点での解析をおこない、各種のパラメーター毎に得られている栄養塩濃度を補正し、比較可能性を明示的に確保された値とするためのファクターを計算した。 得られたファクターはほぼ1.00+-0.12(硝酸塩の場合)となり、陸上での国際共同実験で評価された比較可能性の程度と一致した。この得られたファクターを使用し、栄養塩濃度を補正した後に、深度面で整合性のある0.5度メッシュ、平均50m厚み136層の格子点データセットを作成する作業を進めた。 海洋内部での人為起源のCO2蓄積量を正確に見積もるための準備を開始した。比較可能性を確保し補正された栄養塩濃度のデータセットに対して、全炭酸とアルカリ度のデータを統合し、解析のための予備的データセットの作成も完了している。当初の予定にはなかったが溶存酸素量のデータについても栄養塩データと同様な処理を行い、データセットに組み込んでいる。これにより、海洋での炭素:窒素:りん:酸素(C:N:P:O)比の挙動の検討も可能となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1.栄養塩標準を用いた比較可能性が確保された航海を行い最終的に全海洋をカバーするデータセットを作成する予定であったが、インド洋において海賊が出没するため取り止めとなった航海がある。その代替として過去データのなかから比較的高品質の航海を選び出し、データセットに組み込んだ。 2.当初予定にはなかったが、南大洋における栄養塩標準を用いた比較可能性が確保された航海を行い、データを取得することができた。しかし、航海終了が2013年2月であったため、データセットへの組み込みが2013年3月となり、全体のデータ処理に遅れが生じた。 3.北大西洋および大西洋側の北極海における高品質データを入手するために英国やオランダ等複数の国の海洋研究機関を訪問した。最終的にはデータを入手することができたが、入手時期が2013年3月となったため、上記南大洋のデータと併せて全体のデータ処理に遅れが生じたが、研究に必要なデータの収集は完了した。 4.データ処理のためのツールの開発は終了した。
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Strategy for Future Research Activity |
データ収集が完了するとともに格子点データ作成のためのすべてのツールも完成している。また、(栄養塩については)比較可能性がとれたデータセットが平成25年3月末に出来上がっている。 従って、平成25年度は当初の研究目標である深度面および密度面での整合性のある0.5度メッシュ、平均50m厚み136層の格子点データセットを作成する。また、海洋での窒素(N)、りん(P)、けい素(Si)の総量計算と検証を行う。さらに得られた硝酸塩とリン酸塩の濃度からN/P比を計算し、N/P比の現実的な空間分布を作成する。これらのデータはデータベースの作成手順を示したドキュメントとともに論文として投稿する計画である。 さらに、海洋内部での人為起源のCO2蓄積量を正確に見積もるという本研究の課題については、今回得られようとしている比較可能性を確保して補正された栄養塩濃度のデータセットに全炭酸とアルカリ度のデータを統合したデータセットを作成する。炭酸系物質の測定では事実上の世界標準があり、全炭酸とアルカリ度についてはすでに国際的な同化作業としてGLODAP,CARINA,PACIFICA等のプロジェクトとして行われ、比較可能性を高めるための補正値が決められつつある。栄養塩データと統合する際には、これら炭酸系の測定値に対する補正値を組み込み、世界で最も比較可能性が確保された栄養塩―炭酸系―溶存酸素量統合データセットを作成する。これをベースに海洋内部での人為起源のCO2蓄積量のより正確な見積もりを行う。 上記により、本研究課題の終了年度である平成25年度内に研究目標は達成できる見込みである。
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Research Products
(7 results)
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[Presentation] Activity summary of SGONS
Author(s)
Aoyama, M
Organizer
2012 RMNS I/C study and future, INSS Workshop 12-15 Nov 2012, held at NIOZ, the Netherlands in Collaboration with PML
Place of Presentation
テクセル、オランダ
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