2011 Fiscal Year Annual Research Report
地形・土壌・植生の入れ子構造的発達をふまえた流域水流出特性の変動予測
Project/Area Number |
23221009
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
谷 誠 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 教授 (00314245)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
勝山 正則 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 研究員 (40425426)
小杉 賢一朗 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 准教授 (30263130)
藤本 将光 立命館大学, 理工学部, 助教 (60511508)
中北 英一 京都大学, 防災研究所, 教授 (70183506)
北原 曜 信州大学, 農学部, 教授 (80324234)
内田 太郎 国土技術政策総合研究所, 危機管理技術研究センター, 主任研究官 (60370780)
野口 正二 独立行政法人森林総合研究所, 東北支所, チーム長 (90343780)
細田 育広 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, チーム長 (60353843)
黒川 潮 独立行政法人森林総合研究所, 関西支所, 主任研究員 (10353674)
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Keywords | 水循環 / 自然災害 / 森林影響 / 地形土壌発達 / 比較水文学 |
Research Abstract |
研究実績は下記のようである。 1)花崗岩山地小流域において、電気探査や土壌内・風化基岩内の地下水位・水分量の観測を実施するとともに、各種溶存物質、水の同位体、ストロンチウム同位体などを計測して、地下の流出機構について解析した。その結果、流域内部での水移動・地下水の入れ替わりに要する時間が長く、マツ枯れ発生から15年以上経過した時点でもその影響が持続したこと、小流域内部でもサブ流域間で地下流出経路の差によって水質変動が異なることなどが明らかになった。また、堆積岩と花崗岩山地で基岩地下水の変動を比較した結果、前者の変動が大きくかつ局所的であること、地下浸食によって流れの特性が時間変化することなどが示唆された。2)堆積岩流域における林齢の異なる流域の流出特性を観測解析する予定であったが、台風12号により試験地へのアクセス道路の崩壊があり、次年度に延期された。3)崩壊輪廻の予測シミュレーション改良に向け、地形量と土層厚さの空間分布を三次元雨水浸透流計算に導入した結果、飽和帯の拡大が詳しく予測できるようになった。4)崩壊が多数発生した試験地を設定し、地形・地質・植生データを収集し、空中写真による崩壊抽出作業を実施した。5)崩壊に及ぼす根系分布の三次元的広がりの影響を評価するため、ヒノキ、カラマツ林で根系分布調査を行い、崩壊防止力のもっとも弱くなる部位を特定した。また、樹種毎の引き抜き抵抗力の差が細胞壁率に基づくことが明らかになった。6)流域間流出特性の比較水文学的解析においては、降雨がすべて洪水流出になる傾向が多くの流域で認められ、そうした損失降雨の消失する大規模出水では単純な貯留関数が適用しやすくなることが示された。このことから、大規模出水での流域間比較が流域特性の指標として重要であることが示唆された。7)熱帯雨林、多雪の小流域では、比較解析のためのデータベース化を進めた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、野外試験地における詳細な地中の流出観測、根系の強度実験、土壌層発達・崩壊に関するモデリング、流出特性に関する比較解析などが、サブテーマとなっている。いずれも、順調に研究が開始されているところである。ただ、台風12号による林道被害によって試験地へのアクセスが遮断され、調査ができなかった。これについては、林道復旧を待ち、量水装置の堆積土砂を除去し、平成24年度に調査を再開し、水量・水質のデータを取得した。代表的な成果として次のような成果を発表した。 風化基岩への雨水浸透の水収支に及ぼす影響解析(Matsumoto論文)、広葉樹、畦畔樹種の根系強度試験結果(若杉論文、宮田論文)、洪水予測のための流出特性の抽出に関する方法論(谷:水文・水資源学会発表)、表層崩壊と湧水流量の関係解析(Fujimoto発表)、斜面浸透計算の検証(梁発表)、基岩内地下水の動態解析(小杉発表)、地下水の滞留時間解析(Katsuyama発表)、基岩地下水の渓流水質への影響の小流域間比較(岩崎発表) 、森林保水力に関する考察(谷:日本森林学会発表) 以上のように地中の流出機構に関してとくに多くの調査結果が得られており、今後、モデル化や比較水文学への発展が期待されるところである。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように、本研究は順調に開始されたが、研究範囲が広く、調査場所が異なるところも多いので、共同調査を実施すること、研究集会を開催して成果の討議を基に計画を調整することが重要だと考えられる。また、山岳地形における土壌発達と崩壊の繰り返しに関するモデルが、本研究の重要課題であるため、土壌年代、侵食速度に関して研究を行っている研究者を加え雨必要が強く感じられた。
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Research Products
(26 results)