2013 Fiscal Year Annual Research Report
RNAとタンパク質の相互作用を用いたヒト細胞運命制御システムの構築
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23221011
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
井上 丹 京都大学, 生命科学研究科, 教授 (40114855)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | シンセティックバイオロジー / RNP / バイオナノテクノロジー |
Research Abstract |
テーマ1)人工 RNP ONスイッチによる細胞運命制御システムの構築。 これまでの研究で構築した特定のヒトmRNA の翻訳を抑制する分子スイッチ(OFF switch)に加えて、特定のmRNA の翻訳をONにする分子スイッチの開発に成功した。このスイッチは、NMD (nonsense mediated decay)を応用したものであり、一般的に、これまで開発されて来たすべてのOFF switchをON switchに変換する可能性をもつ。特定のmRNAに、このスイッチを結合して細胞に導入し、同スイッチに特定のタンパク質を結合させると、mRNAにコードされたタンパク質が合成される。一方、細胞内に特定タンパク質がないとmRNAが分解され、タンパク質は合成されない。例えば、このスイッチと細胞死を誘導するタンパク質とを結びつければ、がん細胞だけを死滅させるシステムを構築することができる。 テーマ2)分子テザインによる新規多機能性RNPの構築とその細胞運命制御システムへの応用。 これまでにヒト細胞表面レセフターからの信号伝達の人工的な制御法開発に使用する材料として、三角形RNPおよびその誘導体を開発した。今回、これらによるヒト細胞表面に露出する特定の細胞表面レセフターへの特異的な結合法の開発に成功した。さらに、レセプターを形成するパーツであるタンパク質ユニット(これらの集合によりレセプターとして働く)に三角形RNPを結合させて同ユニット間の距離を調節し、信号伝達のON/OFFを制御して、アポトーシスの誘導及びその阻害を三角形のサイズ変化に応じて定量的に行うことに成功した(論文投稿中)。また、同様のツールとなる新しいRNPナノ構造体の設計および構築を行い、box C/D-L7Aeを用いた「王冠状のRNP」およびrRNA-L1モチーフを用いた「四角形状RNP」の構築に成功した。これらは、より高次の機能をもつRNPを創製するための基盤となる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
上記のように、全体として順調に研究は進展している。しかし、当初の目標の一つである細胞内マーカータンパク質に特異的に結合するアプタマーによる翻訳制御の試みにおいて、既知のアプタマーと対応する結合蛋白質を用いる当初の計画は成功が確定していない。そのためシステムの改良または新たなものの創成に時間がかかる。
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Strategy for Future Research Activity |
三角形RNPに代表されるRNPの精製法を開発する必要があるが、現時点では、RNAと蛋白質をミックスしてRNPを精製させた系中から、その形成にあずかれない単体のRNAと蛋白質を様々な方法で除去することにより、RNPの精製を行う方法を開発しており、その論文を作成中である。この方法が完成すれば、三角形RNPの信号伝達システムへの効果をより正確に定量的に評価することが可能になり、研究の推進に大きく寄与すると思われる。 細胞表面レセプターからの信号伝達を確実にON/OFF制御するシステムが完成した。この完成により,細胞表面での新しいsynthetic biologyおよびナノバイオテクノロジー研究を立ち上げることができた。具体的には、人工的にヒト細胞外から信号を送り、ひとつは細胞の運命制御、また細胞内で特異的に物質生産を行う手法の確立、さらには最近のトピックである細胞を用いるバイオコンピューティングの入力法として、これまでになかった新装置を提供することができる。そのため、26年度、キメラレセプターへの信号入力法としてこのシステムを発展させ、より高度な、また、一般性を有する外部入力にダイレクトに反応する信号伝達システムの構築をおこない、細胞内のイベントを制御することを試みる。 なお、25年度の論文発表数は少ないが、論文作成の準備は整っており、26年度、6報以上の論文を順次発表する予定である。
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