2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23224003
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
堤 誉志雄 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (10180027)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡本 久 京都大学, 数理解析研究所, 教授 (40143359)
中西 賢次 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (40322200)
澤野 嘉宏 首都大学東京, 理工学研究科, 准教授 (40532635)
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Keywords | 減衰項付きKlein-Gordon方程式 / Morawetz評価式 / エネルギー減衰評価式 / Lugiato-Lefever方程式 / 定常解の分岐 / 指数安定性 / 一般化された分数べき積分作用素 / Morrey空間 |
Research Abstract |
研究分担者の中西賢次氏は,L.Aloui氏やS.Ibrahim氏とともに,減衰項を持つ非線形クライン・ゴルドン方程式に対し,解の指数減衰について研究した.彼らは従来減衰項が付いていない保存系の非線形クライン・ゴルドン方程式で使われてきたMorawetz評価式を用いて,非線形項が反発的である場合は,その増大度によらず解は指数減衰することを証明した.先行結果は解の減衰のオーダーが非線形項に依存していたが,減衰のオーダーとしては指数減衰が自然であろうと予想されていた.今回空間無限遠での解の振る舞いをMorawetz評価式によって,より精密に制御することに成功した.この証明は,Morawetz評価式の新たの応用を開拓したと言える. 研究代表者の堤は,宮路智行氏と大西勇氏とともに,空洞共振器の数理モデル方程式であるLugiato-Lefever方程式の安定定常解の指数安定性を研究した.空洞ソリトン(Cavity Soliton)と呼ばれる解も安定定常解であると考えられるため,その安定性解析は重要である.今回は,減衰項付きの非線形シュレディンガー方程式に対し,時間大域的なStrichartz評価式を示し,それを用いて安定定常解の指数安定性を証明することに成功した.従来はエネルギー減衰評価式を用いていたため解はエネルギー空間に属さなければならなかったが,今回はStrichartz評価式を適用したので解は2乗可積分空間に属しているだけでよい.これにより,より広いクラスの初期摂動を附加しても安定であることが示されたことになる. 研究分担者の澤野嘉宏は,菅野聡子氏,田中仁氏とともに,一般化された分数べき積分作用素や分数べき極大作用素のMorrey空間での有界性を調べた.Morrey空間は,Lebesgue空間では捉えられない函数の正則性を調べる際に有用となる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
非線形波動・分散型方程式において,解の正則性と解の時間減衰は密接に関連している.たとえば,非線形波動方程式における零条件 (null condition) は,解の特異性が相殺するような特別な構造を持っており,通常の非線形性より高い正則性を持つと共に,速い時間減衰をすることが知られている.そのため,解の正則性・特異性を調べる際に,解の時間減衰評価を研究することは重要な役割を果たす.解の時間減衰は非線形散乱理論によって調べることができるため,平成23年度は散乱理論の観点から研究を行った.これにより,減衰項付きの非線形Klein-Gordon方程式に対しては,散乱理論で重要な役割を果たすMorawetz評価式を用いて,空間無限遠での解の振る舞いを制御することにより,従来のエネルギー法だけを用いた証明より精密な結果を得ることができた.また,やはり散乱理論において重要な役割を果たすStrichartz評価式を用いることにより,Lugiato-Lefever方程式の安定な定常解の指数安定性を2乗可積分函数の空間において証明した.これも,従来のエネルギー法だけに依った証明方法では,示すことができなかった結果である.さらに,これらの研究を通して,非線形散乱理論の適用範囲を広げることもできた.非線形散乱理論の精密化は,本研究課題の主要目的の一つであり,この方向については所期の目的をほぼ達成したと言って良いであろう.この点から,今年度の研究は,おおむね順調に進展したと考える.
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Strategy for Future Research Activity |
非線形散乱理論の精密化,およびその適用範囲の拡張については,かなりの成果を得た.今後は今までに得られた知見を生かし,解の正則性と特異性の解析を目指す.その際の典型的な問題として,非線形波動・分散型方程式において,確率項が解に与える影響を解析する.たとえば,多くの非線形発展方程式において,粘性項(数学的には,ラプラシアンに相当)を加えると解の正則化されることが確認されている.しかし最近,確率項が解の正則化を促す現象が発見されるようになった.この現象は,ノイズによる正則化 (stabilization by noise) と呼ばれ,まだ系統的な理論はなく,いくつかの現象が知られているだけである.ノイズによる正則化メカニズムの解明は,決定論的非線形発展方程式理論にも大きく貢献するものと期待される.また,確率項自身は方程式に現れなくても,Gibbs測度のようにハミルトン系を考えると自然に導入することができる確率的対象物もある.さらに,確率項は偏微分方程式論の立場からは,通常特異な項と見なされる.そのため,解の正則性・特異性を調べる際の,典型的な特異性を持つ項として確率的摂動項を考えるのは極めて自然である.これらの観点から,今後は決定論的非線形発展方程式だけでなく,確率非線形発展方程式も研究対象とする.さらに,直接解析するのが難しい流体力学の方程式,たとえば,非圧縮生Navier-Stokes方程式や非圧縮生Euler方程式に対しては,数値シミュレーションとともに数学的解析も行うことを目指す.これらに加え,数学解析の基礎となる調和か解析的研究手法の開発も行う.
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Research Products
(8 results)