2014 Fiscal Year Annual Research Report
スーパー・ブレンステッド酸触媒を用いる迅速化学合成
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23225002
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Research Institution | Chubu University |
Principal Investigator |
山本 尚 中部大学, 総合工学研究所, 教授 (20026298)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 分子性触媒 / 選択的合成 / スーパー・シリル基 / アルドール反応 / ケイ素ルイス酸 / フロー型反応 |
Outline of Annual Research Achievements |
(1)嵩高いスーパー・シリル基を用いた前例のない逐次反応を進行させ、分子内アルドール反応と分子間アルドール合成を組み合わせたプロセス開発を行った。6員環、7員環等の環状化合物の精密合成で、旧来の手法ではまったく合成できない様々な環状化合物の完璧な立体選択的合成に成功した。今後本反応の完成を図る。 (2)スーパー・シリル基、ベンジル基、トリエチルシリル基を持つスーパー・シリル・エノール・エーテル立体選択的合成に成功し、98%以上の立体選択性でアルドール合成が進行することを見いだした。これによって、複数の水酸基の連続した化合物群の一挙合成への道を開いた。 (3)ケイ素ルイス酸の開発において、不斉発現に重要なケイ素基の分子間移動を押さえることを達成した。これによって、スーパー・シリル基を用いて、シリル基の移動プロセスを完全に制御できる。今後の新しいシリル・ルイス酸触媒を分子設計に用いる。 (4)一般的高分子合成のメチルメタクリル酸エステル逐次縮合で、カルボン酸のスーパー・シリルエステルを用いて、縮合が2段階、あるいは3段階で完全に停止させることに成功した。予想通り、反応はジアステレオ選択的に進行する。 (5)更に上記反応に於いてシリル基ではなく、トリス3,5-ジーt-ブチルフェニル基のメチルメタクリル酸エステルでも、上記の高分子化停止反応が収率良く進行した。この特殊なトリチル基はX線結晶解析で3個のフェニル基がほぼ平面に位置する独特の構造を示していた。偶然見いだされたこの知見で、新しい炭素ルイス酸触媒等の展開を図ることができる。 (6)フロー型反応システムも連続型のアルドール合成反応が簡便な操作で速やかに進行するまでに研究が進展した。今後、反応適応範囲の拡大を図る。さらに、チューブをいくつか組み合わせることで多段階合成システムの構築を図る。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
嵩高いスーパー・シリル基を用いた初期の実験で逐次型のアルドール合成が可能なことを見いだし、第2世代の向山アルドール合成を完成させた。その後の展開で、ハロゲン基をα位に持つジアルドール、トリアルドールにも成功した。しかし最も重要な展開は、水酸基を自在にα位に導入することである。すなわち、これによって、5員環・6員環の糖、あるいはマクロライド等の大員環の水酸基導入に用いることが出来る。本プロジェクトの成功は、そのマイルストーンとなるものである。さらに、本法をフロー・シスステムに用いることで、夢の連続型のアルドール合成機のひな形を作ることが出来た。
また、高分子合成反応は非常に多くの炭素-炭素結合生成反応が連続して進行し、これを所望の場所で停止させることは極めて難しいと考えられてきた。しかし途中停止に成功すれば、これまでの有機合成では達成できなかった新しい小分子合成法が可能となる。その内、最も一般的なマイケル付加重合反応で、スーパー・シリル基を保護基として用いることで、途中停止させることが可能なことを示すことに成功した。これは今後の高分子合成の途中停止を目指す研究分野の展開に極めて重要な貢献をなしえたと思う。
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Strategy for Future Research Activity |
私共の開発したスーパー・シリル基を用いる反応制御は、今後の有機合成化学に於ける一つの新しい手法を提供したと思う。すなわち、反応に於けるジアステレオ立体制御や、不安定な反応中間体の高収率合成、逐次反応に於ける高分子化の途中停止反応等は、従来の有機合成に於いては未開拓の分野であった。 シリル基が単なる保護基でなく、積極的な反応制御ツールになることを示した。これによって、既存の反応群に新しい応用に向けた未開の側面が示されたと考えられる。例えば、アルドール合成がアルデヒドの段階で停止させること、また、α位に様々なハロゲン、酸素、窒素等の官能基を導入できることで、アルドール合成のスコープの飛躍的拡大に有効であり、これまで、不可能と考えられていた多官能基化合物迅速合成への道を開いた。今後はこの潮流を更に前進させ、アルドールや、マイケル付加だけでなく、様々な有機合成反応の復活を図る。具体的にはα位窒素導入のアルデヒド合成、ラジカル重合や開環重合の途中停止反応、分子内マイケル付加やカチオン型閉環反応の位置と反応点制御等が考えられる。しかし、こうした新反応開発に止まらず、今後、様々な予想を超える応用が期待される。
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[Presentation] 明日を開く分子技術2014
Author(s)
山本 尚
Organizer
第45回中部化学関係学協会支部連合秋季大会
Place of Presentation
中部大学 春日井キャンパス (愛知県・春日井市)
Year and Date
2014-11-29 – 2014-11-29
Invited
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