2011 Fiscal Year Annual Research Report
高効率な光捕集・局在化を可能にする光アンテナの開発とその太陽電池への応用
Project/Area Number |
23225006
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (S)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
三澤 弘明 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (30253230)
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Keywords | 局在プラズモン / ナノ材料 / 光物性 |
Research Abstract |
1.大きな光電場増強を実現する光アンテナの設計と創成 酸化チタン単結晶(ルチル, 0.05 wt% Nbドープ)基板上に、電子ビームリソグラフィー/リフトオフ法により構造のエッジがシャープな金のナノブロック構造を作製する方法論を明らかにした。加速電圧125 kVの高精度電子ビーム露光装置を用い、これまで塗りつぶし描画法によりパターニングを行っていたが、新たにスキップスキャン露光法を取り入れ、高精度且つ高速にパターニングすることが可能となった。具体的には、構造サイズ100 nm×200 nmの四角いパターンを横および縦、それぞれ200 nmおよび300 nmのピッチで1.7 cm四方の領域にほぼ1日程度の描画時間で高精度に作製することが可能であることを明らかにした。また、クロムのナノパターンをマスクとして、エッチング法により光アンテナ機能を有する金ナノ構造を作製することが可能であることも明らかにした。 2.太陽光を金ナノ構造に強く結合させるナノシステムの開発 本課題の重要な点は、波長800-1000 nmの近赤外光を高効率にアンテナし、光電変換に有効利用する点にある。しかし、近赤外波長域において、光アンテナ構造が示す局在表面プラズモン共鳴は、放射モードと結合して散乱光として散逸してしまう欠点を有する。本研究では、金(30 nm)/ガラス(10 nm)/金(30 nm)の3層から成る構造体を作製し、ファノ効果による散乱を抑制する光アンテナの構造設計を見出すとともに、その光学特性を明らかにすることに成功した。また、双極子モーメントの大きい分子であるシアニン色素のJ会合体と金属ナノ構造の強結合状態を形成させ、光を比較的長い時間閉じ込める光アンテナの構造とその光学特性を明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の研究達成項目から本課題が計画通り順調に進展していると判断した。 平成23年度の研究実施計画通りに構造のエッジがシャープな光アンテナ構造を125 kVの加速電圧を有する電子ビーム露光装置を用いて作製する方法論を導出することに成功した。また、エッチング法においても構造作製方法を明らかにすることに成功した。さらに、光を金ナノ構造に強く結合させるナノシステムの開発においては、平成23年度の研究実施計画通りに双極子モーメントの大きい物質と金ナノ構造との強結合状態を形成し、光を閉じ込める光アンテナ構造を明らかにするとともに、ファノ効果による散乱を抑制する金ナノ構造を当初の計画通り作製することに成功した。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究において、光と金属ナノ構造を強く結合させ、より長い時間光を閉じ込めることが可能な光アンテナ構造の作製方法と設計指針を導出した。今後は、光がどの程度の時間光アンテナ構造に捕捉されているかについて、実時間で追跡することが可能な時間分解計測系を構築し、サブフェムト秒の時間分解能で緩和過程を明らかにする予定である。また、本実験結果を構造設計にフィードバックし、構造設計の最適化を行う。同時に時間領域差分法による電磁場シミュレーション解析も行い、本実験の有用性を示す。また、散乱を抑制する構造を用い、最適化された光アンテナ構造が光電変換効率に及ぼす効果についても検討する予定である。
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