2014 Fiscal Year Annual Research Report
高強度フェムト秒レーザープラズマ高速電子パルスによる高速時間分解電子線回折の実証
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23226002
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
阪部 周二 京都大学, 化学研究所, 教授 (50153903)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 電子顕微鏡 / 超高速電子線回折 / 高強度レーザープラズマ / フェムト秒レーザー / レーザー加速 |
Outline of Annual Research Achievements |
単一電子パルスによる高速時間分解電子線回折像の所得を実証することを目的に、レーザー加速電子線源の高品位化に関する研究を行っている。高品位化とは、(A)電子パルスの短パルス化と(B)電子線量の増大である。 (A)レーザー生成・加速電子のパルス幅とレーザーパルス幅が同程度であることを電子線偏向・自己相関法で検証した結果を基に、電子の短パルス化のために、レーザーシステムの短パルス化を昨年度に実施したが、この短パルス化したレーザーを用いて、レーザーとポリエチレン薄膜との相互作用により発生・加速した電子パルスを位相回転法により圧縮した。電子線の短パルス化が確認されたが、電子線量の減少もあり、線量の増大がさらに重要であることが明らかとなった。 (B)今まで電子線源用標的にポリエチレン薄膜を用いていたが、アルミニウム薄膜を用いる(B-1)ことにより電子線量が増大するが、電子線源の低品位化の問題が生じた。それを避けるために、レーザーシステムにプラズマミラーシステムを開発導入した。さらなる、電子線量の増大に向けて、レーザーと薄膜との相互作用によるプラズマ電子生成とそのレーザー加速を詳細に調べ、電子線源から電子が放射し易い状況を作り出す手法を見いだした。薄膜の裏面(電子放射面)にあらかじめ、加速用レーザー強度に比して強度の低い短パルスレーザーを照射し薄膜裏面をプラズマ化膨張しておくことにより、裏面のシース電界が弱まり、加速電子が薄膜から大量に放射されることが明らかになった。この薄膜の表裏ダブルレーザー照射方式(B-2)により、電子線量が20倍に増す事を実証した。また、昨年度に発見した金属細線を標的とすることによる電子の集束効果を利用するために、繰り返し照射を可能とする薄膜と金属細線を近接した照射系(B-3)を提案構築し、金属細線直接照射に比べ、細線端からの放射線量は減じるが、電子の集束を実証した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
単一パルスにより撮像可能な超高速電子線回折装置に必要な要素研究を実施してきた。具体的には、レーザーと固体標的との相互作用により、レーザー生成・加速された電子パルスを用いるもので、「超高速」に必要な短パルス電子線源、「単一パルスにより撮像可能」に必要な高電子数の電子線源を開発してきた。当初、目標としてきた性能を得るための手法が明らかになった。本研究の目的とする成果は得られたので、当初計画通りであるが、加えて、本研究の大きな成果は多くの派生を生み出したことである。(1)プラズマミラー装置の開発:高品位電子源生成のために主パルスに付随するプリパルスの除去が必須であることを見いだし、この除去のためにプラズマミラー装置を開発したが、その性能において世界最高を実現した。これは、超高強度レーザー科学分野には大きな貢献となる。(2)金属細線標的による電子の集束の発見:レーザー生成・加速電子の放射特性を詳細に調べて、金属固体の場合、その表面に沿って多くの電子が放射することを見いだし、その応用発展として金属細線を用いると細線方向に電子が集束することを発見した。(3)金属細線を用いたサブテラヘルツ表面波の発生:(2)の物理を詳細に調べた結果、レーザーにより金属細線上に電磁波(表面波)が誘起されていることを実験的に検証した。これが、電子の集束誘導の密接に関係していると考えられるが、同時に、サブテラヘルツ源として有効であることが示された。半サイクル短パルス、高効率長距離導波伝送、細線テーパー端での波長以下への集束、高輝度などの特徴を有すると考えられ、新たなテラヘルツ源として、高強度電磁場下の物性科学への応用の可能性がある。
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Strategy for Future Research Activity |
今までの4年間に実施してきた単一パルス撮像可能な超高速電子線回折に必要とされる高品位パルス電子源に関する要素研究の成果を踏まえて、超高速電子線回折装置の設計・製作を行う。高品位パルス電子源とは短パルスと高電子数である。短パルスについては、レーザー生成・加速電子のもつ運動量広がりを利用した位相回転による自己パルス圧縮法が有効であることを検証してきたので、この位相回転自己圧縮法を実施する。レーザー加速直後の電子パルス幅がレーザーパルス幅と同程度になることを実験により検証して、それを踏まえてレーザーシステムの短パルス化を実施してきた。引き続き、このレーザーシステムを用いることを基本として装置設計をする。つぎに、電子線源としては、可能性のあるものを全て試行できる装置の設計を行う。具体的には、電子線源として (B-1)アルミニウム薄膜 (B-2)薄膜の表裏ダブルレーザー照射方式 (B-3)薄膜と金属細線を近接した照射系 を用いることのできる、電子線回折装置の設計・製作を行う。(B-1)の場合は、プラズマミラーを使用しなければならないので、プラズマミラー駆動装置のさらなる整備を行う。(B-2)の場合は表裏用それぞれのレーザーパルスに大きな時間間隔を設けることができるように設計する。(B-3)については、パルスの位相回転自己圧縮法の可能性がまだ検証されていないので、まずは、計算機シミュレーションにより、その検証を行う。 また、観察試料の励起を紫外線短パルスで行えるように、レーザー電子加速用のレーザーからパルスを分岐し、波長変換により330nmのパルスを発生できるように設計する。つまり、我々のレーザー装置からのパルスを、3つに分岐する。(1)観察対象試料光励起用パルス、(2)電子発生用薄膜の予備照射プラズマ化用パルス、(3)電子発生・加速用パルス。以上の要素を全て含めた、装置の設計と製作を行なう。
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Research Products
(18 results)