2012 Fiscal Year Annual Research Report
非線形誘電率顕微鏡の高機能化及び電子デバイスへの応用
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23226008
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
長 康雄 東北大学, 電気通信研究所, 教授 (40179966)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平永 良臣 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70436161)
山末 耕平 東北大学, 電気通信研究所, 助教 (70467455)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 走査型非線形誘電率顕微鏡 / 原子双極子モーメント / 強誘電体記録 / 半導体原子計測 / 半導体デバイス計測 |
Research Abstract |
H24年度は以下の様な成果があった. 超高真空(UHV)環境に対応させたUHV-NC-SNDM装置の開発を進めた.二重除振機構の採用による除振性能の向上により,装置の安定性を向上させた.さらに,アトムトラッキング技術を実装することで,特定の単一表面原子・分子上における非線形誘電率のバイアス電圧依存性や探針-試料間距離依存性の室温環境での精密な測定が可能となった.その結果Si(111)-(7×7)再構成表面を水素で終端する初期過程において,水素が吸着したSi原子の同定に成功した.これにより,吸着サイトで原子双極子モーメントが大きく減少してほぼゼロになり,電気的にも中性化することが新たに見出された.水素終端Si表面は半導体表面上の吸着現象を理解する上で基礎的な系であるだけでなく,産業的にも表面不動態処理に関連して重要である. また,半導体表面の観察における原子分解能の起源に関して検討を行い,双極子モーメント分布と同時観察した時間平均トンネル電流像が類似することを明らかにした.類似のメカニズムを考察し像の類似がアーティファクトではなく,自発原子双極子上に局在した表面電位の誘起するトンネル電流の変調に由来することを明らかにした. 次に薄膜強誘電体記録媒体の開発に関する研究も行った.高速再生を可能とする高感度薄膜媒体を開発するため,様々な条件のもとPZT薄膜強誘電体を作製し,その非線形誘電応答を計測する実験を行った.一連の実験の結果,Zr/Tiの比率を変化させることで,非線形誘電率の値を制御できることを明らかにした.Zr/Ti比が52/48の近傍においてPZT薄膜の非線形誘電率は最大の値50 aF/Vを示したが,これは従来記録媒体として主として用いてきたLiTaO3の非線形誘電率より70倍程度大きな値である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
研究計画では予想されていなかった,アトムトラッキング技術の実装により,特定の単一表面原子・分子上における非線形誘電率のバイアス電圧依存性や探針-試料間距離依存性の室温環境での精密な測定が可能となった.また NC-SNDMをSi表面酸化膜やhigh-k膜など,絶縁膜の原子レベルでの観察に応用展開できる見通しを与えた. 半導体表面の観察における原子分解能の起源に関して検討を行い,双極子モーメント分布と同時観察した時間平均トンネル電流像が類似することが明らかになりそのメカニズムを確定した.この基礎研究を受けてNC-SNDMをベースにした表面電位の定量的測定手法の開発が可能となる見通しを得た.
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Strategy for Future Research Activity |
①当初の研究目的では電界の4乗項までの高次非線形誘電率信号を検出することを最大目標していたが,更に,電界の7乗項の非線形成分まで検出する超高次非線形誘電率顕微鏡法を新たに開発する.この“超高次非線形誘電率顕微鏡法”とういう計測法の名称は,単に各次数の高次の非線形項を検出する方法を表現しているのではなく,例えば,局所C-V特性を厳密に断熱的に再構成する手法など,多数の超高次のデータセットをフルに活用して材料ならびにデバイスの詳細な特性を抽出する一連の計測体系を指し,データの取得から分析までを統一した全く新しい計測法の学問体系として発展させる. ②前年度までの基礎研究を受けてNC-SNDMをベースにした表面電位の定量的測定手法を提案し,その有効性を実証する.本手法は,容量の電圧依存性を純電気的に測定するSNDMの特徴を活かした方法であり,既存のKPFMと異なり,表面双極子に由来する局所表面電位を定量できるユニークな手法として発展させられる可能性がある. 次にNC-SNDMの新領域への応用として,グラフェンの評価に関する研究を開始する. 4H-SiC(0001)基板上に形成された単層グラフェンの原子分解能像を得ることに成功すると同時に,上述の新規手法を適用し,形状像と表面電位分布の同時観察も行う. ③強誘電体プローブストレージの研究ではHDD型の試験装置を用いて,回転する強誘電体記録媒体上に高密度ドットパターンを記録する実験を行う.目標とするHDD型強誘電体記録の面記録密度は2 Tbit/inch2とする. ④①で開発した超高次非線形誘電率顕微鏡法を用いて,現在まで良い評価方法のないSiCパワーデバイス(DMOSFET)のドーパント分布計測や空乏層計測を行う.
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Research Products
(17 results)