2014 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23226013
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Research Institution | Hosei University |
Principal Investigator |
陣内 秀信 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40134481)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 毅 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20168355)
岡本 哲志 法政大学, デザイン工学部, 教授 (20709349)
出口 清孝 法政大学, デザイン工学部, 教授 (30172117)
石神 隆 法政大学, 人間環境学部, 教授 (30297999)
宮下 清栄 法政大学, デザイン工学部, 教授 (40139382)
高村 雅彦 法政大学, デザイン工学部, 教授 (80343614)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 都市史 / 建築史 / 環境政策 / 都市環境 / 文化的景観 / 水都 / 緑地環境データベース / 港町 |
Outline of Annual Research Achievements |
国内外の水都に関する現地調査を実施した。陣内は北伊のヴェネト地方を対象に、ヴェネツィアを支えた本土の役割について、3本の河川流域に着眼し、筏流し、舟運、水車の産業の点から調査した。特にトレヴィーゾでは歴史的不動産台帳・地図を用いて水車を用いた産業の分布構造を分析した。石神は陣内とともに、米国のニューヨーク、ボストンをはじめとする主要港湾都市の地域形成、物流変遷および産業変化について現地調査を進めた。また、米国東部における水力工業都市の形成史を調査し、日本での水車利用の歴史とも比較研究した。出口はフランスの水都研究として、アルザス・ブルゴーニュ地方を中心に現地調査を実施した。発電施設、自然保護湿地帯等、建築や周囲環境を含めて視察すると共に関連資料を収集した。アジアでは、高村が上海とバリにおいて、前近代の土地の性格、つまり湿地帯、土壌、地質などが後の近代の都市形成にいかに影響を与えたか、特に湧水や水路係からその関係性を読み解く研究を行なった。国内では、伊藤は柴又地域調査を実施し、帝釈天の門前地区、その周辺の微高地上の農村地区、その外側の低地耕地ゾーンでの水辺の文化的景観形成を解明した。宮下は街路樹や生け垣,保存樹木などの小規模な緑地の把握を目的とし、小金井市を対象に精密な緑地環境データベースを構築した。岡本は三陸の港町・漁村の価値評価のための現地調査を深めた。 国際交流につとめ昨年10月に、これまでの研究の中間的な成果発表の場として、国際シンポジウム「「水都学」の方法を探って」を開催し、インド、イタリア、米国より専門家を招き、特に重要な論点を掲げる三つのセッションを設けて、水都学の方法に関する議論を展開した。個別の外国人専門家による講演会を5回開催した。陣内は、2015年1月にヴェネツィアで開催された「ヴェネツィアと東京の水都比較」の国際シンポジウムに招かれ、基調講演を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
主要な港町のみか、中小の水の町へも対象を広げ、さらに都市の背後に広がる地域との水を媒介とした繋がりをも研究対象とし、「水都」研究の概念、方法を拡大するという方針転換のもと成果をおおいにあげてきた。その考えの下、国内外の諸地域に関する現地調査に基づく研究を順調に進展させることができた。欧米に関しては、2013年度末に実施した米国北東部の港町、内部の水力工業都市群に関する調査の結果を分析・考察を進め、その成果を発表しつつある。イタリア北部ヴェネト地方の河川流域に関する研究は、現地調査の成果を報告書、査読付き論文等ですでに発表している。都市の後背地の地域にまで水都の研究を広げる試みを、江戸東京と比較しながら進めることができた。海外で欠けていた北欧のスウェーデン、ノルウェー、そしてオーストラリアのシドニーに関する現地調査も実施し、港湾都市比較の視点を拡大できた。こうして西洋における水都形成の歴史的系譜を、古代、中世から近世、初期近代、近代後期と動的に把握でき、同時にそれと都市再生との結び付きにも考察を深めている。国内に関しては、水循環都市東京という新たな視点で研究を深めた。 昨年10月に、これまでの研究の中間的な成果発表の場として、国際シンポジウム「「水都学」の方法を探って」を開催し、インド、イタリア、米国より専門家を招き、特に重要な論点を掲げる三つのセッションを設けて、水都学の方法に関する議論を展開した。その成果は、『水都学IV』(特集:「水都学」の方法を探って、法政大学出版局)として、6月末に刊行の予定である。研究分野が関連する科研基盤研究(S)「わが国における都市史学の確立と展開にむけての基盤的研究」(研究代表者:伊藤毅)との連携を実現し、『水都学III』の刊行にあたって伊藤氏らの協力を得た。また、12月にイタリアからの研究者F.マンクーゾ氏を招いての講演会も共同で開催した。
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Strategy for Future Research Activity |
最終年度にあたる本年度は、水都研究にとって重要な概念となる柱をより鮮明にしつつ、水都に関する歴史と環境の視点からの比較研究を集大成する作業を行い、その上に水都再生のための理念と実践的方法を提示することを目指す。先ずは、立地と形態から見た水都の類型を歴史的に分析考察する作業を完成させると同時に、各類型の都市が1960年頃から物流革命にともない衰退状況にあった古い港湾空間をいかに再生しつつあるか、今後どのような思想と方法で水の都市を創造すべきかを考察する。 一方、近年重要性が認識されてきた「地域」再生の視点から、新たに導入した「テリトーリオ」(地域)の概念とその研究方法をより深め、水都研究の大きな柱として確立する。特に、水都としての東京の再評価を下町・都心部の低地エリアに限定せず、首都圏にまで広げ、豊かな水循環都市、エコシティとしての東京の成立基盤をダイナミックに解明しながら、世界に向けて東京の新たな水都像を描く。北伊のヴェネト地方(ヴェネツィアの後背地)、米国北東部などの地域との同じ視点からの比較研究を通じて、都市・地域の水循環、水を媒介とした経済文化の地域ネットワークを解明する方法を探究する。一方、アジアとも通ずる、水と共生してきた歴史をもつ日本が世界に発信すべき水都研究の特徴をさらに明確化させる。さらには、水都再生に重要な災害の問題、水辺を舞台とする文化創造産業・観光の在り方、水車など自然エネルギーの再評価、水辺の冷却効果の環境評価なども取り込んで、水都学の確立をめざす。今年度末にはこうした5年間の研究成果の集大成として、『水都学V』(特集:水都学の到達点)を刊行することにしている。また、12月に法政大学で開催される都市史学会の第二回大会のシンポジウムにおいて、水都学の方法に関し歴史学、考古学、地理学、建築学等を横断する学際的な討論を企画している。
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[Presentation] 地域の視点2014
Author(s)
伊藤毅
Organizer
手賀の湖と台地の歴史を考える会
Place of Presentation
柏の葉UDC(千葉県柏市)
Year and Date
2014-04-22
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