2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23226014
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Research Institution | Kyushu Institute of Technology |
Principal Investigator |
松本 要 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (10324659)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吉田 隆 名古屋大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20314049)
淡路 智 東北大学, 金属材料研究所, 准教授 (10222770)
西嵜 照和 九州産業大学, 工学部, 准教授 (90261510)
MELE Paolo 広島大学, サステナブルデベロップメント実践研究センター, 講師 (70608504)
堀出 朋哉 九州工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 助教 (70638858)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | 薄膜 / ナノ組織制御 / 超伝導 / 磁束ピン止め / シミュレーション |
Research Abstract |
人工的な量子化磁束のピン止め点(人工ピン)導入による臨界電流密度の最適化を進めてきた.大規模な3次元のTDGLシミュレーションを開発中であり,量子化磁束がナノロッドやナノドットからピン止めからはずれるデピンニング過程の可視化に世界で初めて成功した.SmBCO薄膜に1次元のBaHfO3人工ピンを導入することで77 Kにおいて15 Tの不可逆磁場を得るとともに,28 GN/m3の巨視的ピン止め力を達成した.ナノロッドと超伝導との界面においてはファセット面が現れることも確認された.これは原子レベル分解能のTEMによって確かめられた.さらには,ナノロッドと超伝導体との歪みに関してもVASPやX線回折を用いた解析も行い,ナノ領域で材料の複合則が成り立つことが分かった.人工ピンを導入したREBCO(RE:希土類)膜に対し,磁束ピンニングモデルを構築し,これによってナノロッドによる磁束ピンニング機構を説明することができるようになった.また,ピン止め構造のミクロな評価,および,超伝導/ピン止め物質界面の秩序パラメータの空間変化の局所測定をめざして低温走査型トンネル顕微鏡(低温STM)を用いて,SmBCO/BaHfO3界面の超伝導ギャップエネルギーのスキャン測定を実施した.低温STMを用いたナノロッドのギャップエネルギーの観測は世界で初めての結果である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3次元TDGLシミュレーションに基づいて,量子化磁束の動的なデピンニング過程の画像化・可視化に成功しており,この技術はピン止め制御技術の発展において大きく貢献すると期待できる.1次元人工ピンと多層薄膜手法によってナノスケールの精度で人工ピンの空間分布の精密制御に成功した.この手法によってマッチング磁場以下の領域でピン止め点の定量的な評価が可能となり,Jcの理論値とのずれから,量子化磁束格子の変形や積層欠陥等の付加的なピン止め点の影響などが議論できるようになった.今後より発展させていけば,上記のシミュレーションと理論・実験との比較検討が可能となり,信頼性の高いピン止め制御技術が確立できると考えている.SmBCOとナノロッドの組み合わせによって15 T@77 Kという従来にない不可逆磁場が達成されるとともに,28 GN/m3@77 Kという高い巨視的ピン止め力も得られるようになった.この試料に関しては,今後,順次低温での測定を行っていく予定であるが,既存の実用超伝導線材の低温特性との比較から,Jc/J0 > 30%という性能が得られる見通しが得られている.詳細なTEMによるナノ構造評価,低温STMによる電子状態分布観察,第一原理計算等による電子状態や組織エネルギー等との比較も可能となりつつあり,エピタキシャル薄膜へのナノ構造導入の観点からも意義深いと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
理論的上限に近いローレンツ力下において量子化磁束をピン止めするには,ピン止め力が量子化磁束の張力を上回る条件が必要であり,理論およびシミュレーションを用いて見出すとともに,実際の物質で実現するための物質設計を行う.現実に近い3次元TDGLシミュレーションの計算コード開発を完成させ,大規模なシミュレーションを実行して,ピン止めから量子化磁束がはずれるデピンニングプロセスを明らかにし,Jc/J0 > 30%を得る最適ピン止め構造を示していく.REBCO薄膜へのナノ構造導入の実験的研究も継続して進めていく.人工ピンを種々組みわせることで,最終的にはこれら手法を駆使して Jc/J0 > 30%を達成するための薄膜技術を確立することを目指す.また,結晶成長に関わる材料科学にも焦点をあて,エピタキシャル超伝導薄膜中のナノ構造成長プロセスの解明も進める.成膜プロセスの改善によって,マトリックスの劣化を最小限に抑えながら形状の揃ったナノロッドをREBCO導入する技術によって,当初目標であるJc/J0 > 30%を達成できる見通しを得つつある.低温磁場中における輸送特性と磁化測定による高いJcを実測していく.低温STM及びTEMによるピン構造の測定,低温X線による内部ひずみの評価,さらには,低温強磁場におけるJc特性の詳細評価も実施する予定である.
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Research Products
(17 results)