2013 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23227005
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
竹縄 忠臣 神戸大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (40101315)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2016-03-31
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Keywords | ホスホイノシタイド / SKIP / Sac1 / PI4P / インスリン シグナル |
Research Abstract |
ホスホイノシタイドの膜でのダイナミックな機能の解明には時空間的にホスホイノシタイドがどのように制御されているかを明らかにする必要がある。今年度はSKIPとSac1の制御機構について明らかにした。 1. SKIPによる特異的なインスリンシグナル制御 インスリン情報伝達特異的にシグナルを負に制御するPI(3,4,5)P3 5-ホスファターゼ、SKIPが何故インスリンシグナル特異的にPI(3,4,5)P3の時空間制御を行なえるのかを調べた。その結果、無刺激時にはSKIPは小胞体中でGRP78と結合し、活性の無い状態に保たれているが、インスリン刺激を受けると細胞膜へと移動し、GRP78と離れてPak1と結合する。その結果インスリン受容体近くで産生されるPI(3,4,5)P3を時空間特異的に分解できるので、他のホスファターゼと異なり、インスリンシグナルを特異的に制御出来ることを明らかにした。SKIPは筋肉で高く発現しているため、筋肉での糖代謝、エネルギーに重要な役割を果たしている。実際にSKIPをノックダウンした筋培養細胞ではインスリンシグナルで重要なキナーゼAkt2のリン酸化が増強し、SKIPの発現は逆にAkt2のリン酸化を抑制した。興味深い事に小胞体ストレスを与えるような高脂肪食投与やob/ob マウスの筋肉に於いて、SKIPやGRP78の発現が上昇していた。 2. Sac1によるゴルジ体のPI4Pの制御 ゴルジ体に存在するSac1 PI4P 4-ホスファターゼのノックダウンにより、MCF-7細胞の細胞間接着が弛み(EMT様現象)、運動能,浸潤能が上昇することを見つけた。Sac1ノックダウン細胞ではゴルジ体のPI4P量が上昇していた。逆にPI4Pを減少させるPI4KIIIβのノックダウンではCadherin-11の細胞間接着部位での局在が増し、浸潤能も低下した。次にゴルジ体でのPI4Pのターゲットを探し、GOLPH3を見つけた。GOLPH3の活性はPI4Pに依存し、EMT/METの制御に関わっていると考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ホスホイノシタイドの膜微細構造構築への関与に関しては、ホスホイノシタイド結合タンパク質で膜変形活性をもつPSTPIP2,SH3YL1やArap1のポドゾームやドーサルラッフル形成における役割を明らかに出来た。またホスホイノシタイドの時空間制御に関してはSKIPやSac1というホスホイノシタイドホスファターゼによるホスホイノシタイドの特異的な制御について明らかに出来た。これらの成果からおおむね順調に進展していると判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
膜微細形態形成へのホスホイノシタイドの関与の研究については、ほぼ順調に目標は達成しているので、我々が見いだしていた、細胞外突起形成に働くホスホイノシタイド結合タンパク質、IRSp53の機序解明を新たに行なう。すでに我々はIRSp53及びその類似体が微絨毛形成に必須である事を発見している。IRSp53は微絨毛の先端にEps8と共局在し、IRSp53のノックダウンにより微絨毛の形成が抑制される。更に、その作用にはホスホイノシタイドとの結合が必須であることを見いだしている。よって、如何にしてIRSp53が微絨毛形成に関与しているかの詳細な機序を明らかにしたい。すでに重要な知見は得られているので、研究期間内に本目的は十分達成できる。 またER ストレスによってどのようにしてSKIPの発現が増すのか?がん患者において体重が減少し、筋肉量が減少するカヘキシアががん患者の体力を奪う大きな問題となっている。インスリンシグナルは筋肉の再生にも関与しており、実際SKIPのヘテロノックアウトマウスでは筋肉量の増大が認められる。今後SKIPのカヘキシアへの関与について明らかにし、SKIP抑制で筋量の減少が抑制できるかを確かめる、などSKIPのERストレスによる調節とSKIPを阻害した場合どの程度筋肉でのインスリンシグナルを回復できるかを検討したい。 ゴルジ体でのPI4Pの機能についても、GOLPH3の下流で何が細胞接着を制御しているのかを明らかにしたい。更にはPI4KIIIβの阻害剤を探し、がん細胞の浸潤転移がどの程度抑制できるかを確かめ、新たながん治療薬開発の足掛かりとしたい。PI4Pの量ががんの悪性化に重要な役割を担っている事は非常にインパクトある知見であるので、ぜひこの課題を継続したい。
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