2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23240017
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
舘 すすむ 慶應義塾大学, メデイアデザイン研究科, 特任教授 (50236535)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | バーチャルリアリティ / テレイグジスタンス / 臨場感 / 身体性 |
Research Abstract |
平成24年度は,平成23年度に構築した能動的身体性を有する臨場感検証プラットフォームを用いて,実施項目(2)「臨場感における能動性・身体性の主要パラメータの抽出と,臨場感モデルの構築」および実施項目(3)「構築した臨場感モデルに基づく,能動的身体性を有する臨場感の伝達」を実施した. 実施項目(2)としては,臨場感の伝達における頭部運動の能動性の寄与について定量化を行った.すなわち,頭部6自由度を有し全方位移動が可能な遠隔操縦ロボットを開発し,探索活動を想定した行動空間において頭部運動自由度が対象認識や探索時間に与える影響を調査した.その結果,頭部6自由度の運動が許容される条件においては,単眼視であっても頭部運動を伴わない場合の両眼視と同程度もしくはそれ以上の奥行き認識精度が得られることがわかった.また頭部運動における能動性が増すほど,探索タスクにおけるタスク遂行時間・衝突回数・個人差が減少し,さらには習熟速度が向上するという結果を得た. また,当初の研究計画に加えて,能動的な身体性に基づく臨場感の伝送として,空間方向だけではなく時間軸方向の臨場感の伝送を行う際に求められるパラメータの抽出を試みた.具体的には,視覚を遮断し聴覚及び触覚のみを伝送する臨場感伝送システムを構築し,実時間と記録された聴覚・触覚情報の差異を低減させることで,他者とのコミュニケーションを行う中で時間を昔に戻しても,体験者が実時間の感覚情報と記録された過去の感覚情報との間の遷移に気づかないまま会話を継続できることを確認した. さらに,平成25年度に実施予定である実施項目(3)に向け,ネットワークに接続されたテレイグジスタンスロボットを広い地域に分散させ様々な場所から体験可能なユビキタステレイグジスタンスの概念に基づき,その実証システムとして簡易型テレイグジスタンスシステムTELUBeeを開発した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
実施項目(1)「ロボットを用いた能動的身体性を有する臨場感検証プラットフォームの構築と自己投射性の検証」については,平成23年度に予定通り実施し臨場感検証プラットフォームを2つ構築している.同プラットフォームを用いることで,能動的な自己接触に伴う視覚・触覚双方から自己投射を促し,自己帰属・自己定位の向上が認められた.さらに,代理ロボットを介した平面内の能動的な移動を行うことができ,被験者の腕の動きを反映させたロボットアームにより,能動的なジェスチャ・握手・マニピュレーションなどの動作を可能とし,身体性を有することが分かった.総じて,構築したプラットフォームを介した自己投射性が可能であることを示した. 平成24年度実施予定である実施項目(2)については,臨場感における能動性・身体性の主要パラメータとして,頭部運動自由度を抽出した.これは平成24年度に構築する臨場感モデルの能動性に関する主要パラメータとして,頭部運動自由度が媒介変数となりうることを示唆しており,当初の計画通り臨場感モデルの構築が進んでいる.この成果に加えて,前述のとおり,空間方向だけでなく時間軸方向へ拡張した臨場感の伝送を行なっている.この結果から,時間軸方向の臨場感伝送において,時間軸の変更に伴い生じる違和感が主要パラメータであり,この低減が効果的であることが分かった.この結果は時間軸方向に拡張された臨場感モデル構築のための基礎的な知見であり,今後能動性・身体性を踏まえたモデル構築に寄与する成果である.これらのことから,抽出したパラメータに基づき臨場感モデルの構築を行ったことに加えて,モデルを時間軸方向へ拡張するという成果を得ている. 上記のように,(2)における時間軸への拡張に着手したことと,来年度(平成25年度)実施予定である実施項目(3)に向けた実証システムの構築に既に着手しているため.
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Strategy for Future Research Activity |
まず臨場感検証プラットフォームを用い,実施項目(2)「臨場感における能動性・身体性の主要パラメータの抽出と,臨場感モデルの構築」および,平成25年度に予定している実施項目(3)「構築した臨場感モデルに基づく,能動的身体性を有する臨場感の伝達」を継続して実施していく. 実施項目(2)を継続させることで,実用化可能なパラメータを定量化し,既に得られている臨場感モデルを実用化可能な段階へ引き上げるとともに、24年度に新たに着手した時間軸方向の臨場感伝送における臨場感に寄与するパラメータの抽出を試みる. さらに構築したモデルと抽出したパラメータを用い,実施項目(3)として,実用化可能な遠隔コミュニケーション/遠隔作業のための設計手法の確立をめざす.具体的には,ユビキタステレイグジスタンスの概念に基づき設計された簡易型テレイグジスタンスロボットを実空間上で距離の離れた複数地点に設置することで,これらのロボットにユーザが自在にテレイグジスタンス可能な環境を構築する.これにより,理想的な通信状況ではなく,実際のネットワーク遅延や帯域制限などの影響を受けた実世界・実社会の中で実用可能な設計法・最適パラメータ設計を行う.さらに,構築した環境を用いた基礎的な実証実験を通して,能動的身体性を伴う高臨場感遠隔コミュニケーション/遠隔作業を実施する. これらにより,実際のネットワーク遅延を考慮した設計法や,規模性を有しつつも自己投射可能な最適パラメータ設計を行うとともに,提案手法の効果を実証する.
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