2013 Fiscal Year Annual Research Report
匂いと食べ物の連合学習および食後睡眠時の記憶形成と固定化の神経メカニズム
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23240046
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森 憲作 東京大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (60008563)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2015-03-31
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Keywords | 嗅覚 / 記憶の固定化 / 摂食 / 睡眠 |
Research Abstract |
1. 食物探索行動・摂食行動を伴う匂い食物連合学習時の嗅球―嗅皮質―嗅結節・神経経路の活動記録: ラットの呼吸パターンをモニターしながら、嗅球、嗅皮質、および嗅結節から局所電場電位(およびユニット活動)を記録し、匂いと食べ物の連合学習をしたラットにおいて、「食べ物の匂いキューを嗅いだ時」および「食べ物を摂食する時」の各領野の応答を解析した。 この結果、「食べ物の匂いキューを嗅いでいる」吸気相で、嗅球から嗅皮質や嗅結節へ伝わるfast gamma oscillationが生じ、ひき続いて吸気相から呼気相への移行期にslow gamma oscillationが生じることを見出した。 この吸気相fast gamma oscillationは嗅球の房飾細胞回路で生じ、房飾細胞軸索を介して嗅皮質や嗅結節へ伝わるのに対し、移行期slow gamma oscillationは僧帽細胞回路で生じ、その僧帽細胞軸索により嗅皮質や嗅結節へと伝わることを見出した。さらに、長い呼息相では、beta oscillationが生じることも見出した。 2. 食後の徐波睡眠時では、嗅皮質のlarge irregular amplitude (LIA)ポテンシャルと前頭眼窩皮質の徐波が同期する: 徐波睡眠時に、前頭眼窩皮質や内側前頭皮質で広範囲に同期した徐波が生じることが知られている。 本研究により我々は、食後の睡眠時において、嗅皮質のLIAおよび鋭派の出現が、前頭眼窩皮質の徐波のUp-state時におこり、Down-state時にはおこらないことを見出した。 この結果は、徐波睡眠時において、嗅皮質と前頭眼窩皮質との情報交換は特定の時間枠内で限局しておこることを示す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
以下の点の進歩から、本研究課題の研究はおおむね順調に進展していると考えられる。 (1)食物探索行動および摂食行動をともなう匂い食物連合学習時の、嗅球ー嗅皮質ー嗅結節および、嗅球ー嗅皮質ー前頭眼窩皮質神経経路での、嗅覚情報の基本的流れが記録できた。(2)呼吸の吸息相で、嗅球から嗅皮質の浅層部への信号の流れが詳細にわかるようになり、さらに、呼息相では、嗅皮質の深層部神経回路の活動がおこることが判明した。 (3)食後の徐波睡眠時では、嗅皮質のLIAポテンシャルと前頭眼窩皮質の徐波のUP-stateが同期することがわかり、睡眠時での嗅皮質と前頭眼窩皮質間の情報交換の手がかりが得られた。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は食べ物のキューとなる匂いを嗅いだときや摂食時におこる、嗅覚中枢神経系の活動を、外界の匂い情報をOn-lineで処理する吸気相と、外界の匂い情報から遮断される呼気相(Off-line)での活動に分類して、モチベーション反応と関連した嗅覚入力の記憶メカニズムの解析を進める。 食後睡眠時の嗅覚記憶の固定化に関しては、徐波睡眠時における嗅皮質との間の情報交換を中心に研究を進めるとともに、食後休息期の呼気相における嗅皮質の活動と食後睡眠時の嗅皮質の活動との関連を解析する。
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