2012 Fiscal Year Annual Research Report
モデルマウスを用いたミトコンドリアセントラルドグマの破綻病理の解明
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23240058
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Research Institution | University of Tsukuba |
Principal Investigator |
中田 和人 筑波大学, 生命環境系, 教授 (80323244)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | ミトコンドリア / ミトコンドリアゲノム / 突然変異 / エネルギー欠損 / ミトコンドリア病 / 病態モデルマウス |
Research Abstract |
ミトコンドリアゲノム(mtDNA)の突然変異が、ミトコンドリア病のみならず、糖尿病や神経変性疾患、さらにはがんや老化など、多様な疾患の遺伝的原因になる可能性が示唆され、変異型mtDNA分子種を起点とした多様な病態発症機構の存在が注目を集めている。本研究では、変異型mtDNAを導入したマウス(ミトマウス)群に加え、異なる変異型mtDNA分子種を導入した新たなミトマウスを随時作製して、多様な変異型mtDNA分子種を起点としたミトコンドリアセントラルドグマの機能基盤、さらには、核セントラルドグマとの連携、そしてそれらの破綻による病理機構の全貌解明を目指している。 今年度の成果としては、1)欠失型mtDNAの蓄積に対する細胞特異的な感受性により、単一の欠失型mtDNA分子種が複数の病型を誘導できることを実験的に立証し、2)欠失型mtDNAの病原性制御に糖代謝が重要な役割を果たすこと、さらには、3)欠失型mtDNAの病原性制御にミトコンドリアの分裂/融合といったミトコンドリアの動的性格が重要な役割を果たす可能性を見出した。また、4)変異型mtDNAの導入により活性酸素種が漏出されるモデルマウスではリンパ腫と高血糖が誘発されることが分かり、5)ランダムな突然変異が生じた多様な変異型mtDNA分子集団もミトコンドリア呼吸機能低下を誘発できることを突き止めた。モデルマウスの作製に関しては、6)複数の変異型mtDNAを導入したES細胞の樹立に成功し、キメラマウスの作製に至った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既に作製を完了しているモデルマウスを活用した詳細な病態発症機構の解明に関する解析は、当初の計画以上に進展していると感じている。特に、変異型mtDNA分子種の病原性制御機構として核遺伝子、特に糖代謝やミトコンドリアの動的性格との関連を実験的に類推できた点は極めて重要な成果であると感じる。しかし、新たなモデルマウスの作製に関しては、変異型mtDNA分子種を導入した複数のマウスES細胞株の樹立/確保には成功しているのもの、病原性の強弱により、キメラマウスの樹立までには至っていないものが多い。今年度は、そのうちいくつかの変異型mtDNA分子種を導入したマウスES細胞からキメラマウスの作製には成功したので、全体としておおむね順調に進展していると自己評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
前述のように、変異型mtDNAを導入したマウスES細胞からキメラマウスの作製に成功したので、今後は全身性に変異型mtDNA分子種を含有する病態モデルの取得を目指したい。また、変異型mtDNAの病原性制御に関わる核遺伝子や生体環境を見出しているため、病原性の低い変異型mtDNAを導入したモデルマウスにおいて、その病原性を増強させることで新たな病態誘導を起こせるか、否かも検証したい。この検証を通して、変異型mtDNA分子種と核背景との協調的な病態発症機構の提案を目指したい。また、この視点を活用し、病原性の低い変異型mtDNA分子種を導入したモデルマウスを作製し、その後、この病原性を増強する核背景を再導入するという戦略で新たなモデルマウスの樹立も行いたい。
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Research Products
(5 results)