2012 Fiscal Year Annual Research Report
多機能ゲルが誘導する軟骨自然再生における間葉系細胞内情報伝達機構の解明
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23240070
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
安田 和則 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (20166507)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
近江谷 克裕 独立行政法人産業技術総合研究所, バイオメディカル研究部門, 研究部門長 (20223951)
大橋 俊朗 北海道大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (30270812)
黒川 孝幸 北海道大学, 創成研究機構, 特任助教 (40451439)
田中 伸哉 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 教授 (70261287)
北村 信人 北海道大学, 医学(系)研究科(研究院), 講師 (80447044)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | ダブルネットワークゲル / 軟骨分子 / 自然再生 / 細胞内情報伝達 / 光イメージング / 細胞メカニクス / 質量分析 |
Research Abstract |
①ATDC5細胞のインシュリンによる軟骨分化過程において、Caチャンネル阻害剤はATP振動を抑制した。1細胞レベルで2色発光モニタリングでは、軟骨分化過程ではCa振動が先に誘導され、その後同周期のATP振動が誘導された。PAMPSゲル上でATDC5細胞を培養すると、インシュリン存在下と同じ周期のATP振動が発生し、それらはCaチャンネル阻害剤によって抑制された。さらに骨髄由来間葉系幹細胞を用いた同様な実験でも、ATDC5細胞と同様の結果が得られた。 ②DNゲルを用いた自然再生7日目における再生細胞(兎)を採取し、DMEM培地で2週間培養した。早期にdish上に接着し、骨髄間葉系幹細胞様と同様の形態を示す多くの細胞を認めた。DNA chipを用いた解析では、この再生細胞の軟骨関連遺伝子発現は成熟軟骨のそれと近似していた。 ③DNゲル上のATDC細胞の培養では、24時間、3日、7日の時点でJak-Statシグナル経路に関与する分子群の発現量増加、活性化が見られた。さらにPAMPSゲル上で培養すると、Jak-Statシグナルに加え、BMP-Smad、p38 MAPK、p42/44 MAPK (ERK)シグナルに関与する分子群の発現量の増加・活性化が見られた。 ④DNゲル上での培養3日目で細胞は凝集し、1細胞の弾性率は有意に上昇し、アクチン骨格にはコーティカルレイヤーの形成が認められた。一方,インスリンを用いて分化誘導を行った単層培養ATDC5細胞では,上記のような構造と力学的特性の変化は見られず、アクチン修飾タンパク遺伝子の発現も異なった。 ⑤兎に1週間埋植したDNゲルを3分割し、各層からペプチド性物質をSEP-PAKカラムで回収してMS/MSプロテオミクス解析を行った。各層は様々なペプチドを吸着しており、その多くは共通するが、軟骨再生が起こる1層には特異な5種のペプチドが存在した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
DNゲルが誘導する軟骨分化過程における細胞代謝動態の1細胞レベルでの解明」に関しては当初の計画以上に進展し、多くの発見・解明を行って5編の英文論文を発表した。「軟骨自然再生系の組織からの間葉系幹細胞の分離・同定と幹細胞培養系の確立」に関しては、確立した培養細胞の網羅的遺伝子解析を追加したためにやや遅れているが、すでに細胞表面抗原の解析に入っているので、この遅れはすぐに取り返せると判断している。「DNゲルが誘導する軟骨分化過程における細胞内シグナル伝達機構の解析」はおおむね計画通りに進展し、現在英文論文を準備している。「軟骨分化過程にある1細胞の力学的特性の変化の計測」もおおむね計画通りに進展し、現在英文論文を準備している。「DNゲルのリザーバー機能の解析」もおおむね計画通りに進展し、現在英文論文を準備している。以上を総合すると、本年度の「研究の目的」はおおむね順調に進展していると評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
①「軟骨分化における細胞代謝動態の解明」に関しては、ATP振動現象と分化した軟骨細胞の凝集現象との関係を解明し、代謝の振動現象の生命体の器官形成における意義を解明する。②「DNゲル軟骨分化の情報伝達機構の解析」では、Jak-Stat、BMP-Smad、p38 MAPK、p42/44 MAPK経路の発現・活性化を特異的阻害剤およびRNA干渉法を用いて阻害し、軟骨マーカー遺伝子の発現抑制を検証し、どの時点のどのシグナル経路がDNゲルによる軟骨分化誘導に必須であるのかを解明する。③「軟骨自然再生系の組織からの間葉系幹細胞の分離・同定と幹細胞培養系の確立」に関しては、分離した幹細胞様細胞群の特徴と機能をFACS解析およびRT-PCR法にて解析し、骨髄由来の幹細胞のそれと比較する。④「1軟骨分化細胞の力学的特性の変化の計測」では、DNゲル上での培養開始から24時間までの間の細胞弾性率の変化を解明し、細胞周期と細胞弾性率、細胞形態、アクチン骨格構造との関連を調べる。さらに接着性の強いPAMPSゲル上での培養において細胞内張力を変化させ、細胞弾性率および軟骨分化との関連について調べる。⑤「DNゲルのリザーバー機能の解析」ではDNゲルによる再生細胞の膜抽出物をMS/MSプロテオミクス解析によって発現受容体のプロファイリングを行い、ゲルから抽出された蛋白分子群に関する網羅的プロテオミクス解析結果と比較して、ゲル・細胞間のリガンド・レセプターの存在を検討する。
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Research Products
(12 results)