2012 Fiscal Year Annual Research Report
生体高分子の高次構造と機能制御のための高分子材料設計
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23240074
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
丸山 厚 九州大学, 先導物質化学研究所, 教授 (40190566)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | 高分子電解質複合体 / フローストレッチ法 / コイル-グロビュール転移 / インターカレーター |
Research Abstract |
共重合体と核酸との相互作用および形成される複合体の性状を一分子蛍光観察法により解析した。通常、ポリリ シンのようなポリカチオンは、核酸をコイル状態からコンパクトなグロビュール状態に凝縮させ、その後二次凝 集を誘起し、結果的に複合体は沈殿する。一方で、くし型共重合体は、グラフト率に依存して異なる可溶性複合 体を形成することを既に溶液中の一分子計測により明らかにした。本年は、核酸と共 重合体を二重ラベ ルした液中一分子計測および フローストレッチング法を取り入れた一分子観 察法により、共重合体が核酸構造 に与える効果を 高い時空間分解能で解析した。具体的には、λファージ DNA などの長鎖核酸の片末端にビオチ ン修 飾し、表面をポリエチレングリコールにより不活 性化したカバーガラス表面に固定した。このカバ ーガ ラス上にフローセルを構築し、バッファーを 流すことで、核酸鎖を伸張させる。さらに、バッファーを種々の 共重合体を含むバッファ ーに交換し、核酸の構造変化をリアルタイム共焦点顕微鏡(CLM)で観察することで、共 重合体との 相互作用を評価した。その結果、共重合体はDNA長を20%程度収縮させるものの、グロビュール化を誘起しないことがわかった。また、DNAの収縮は、DNAの可視化に用いている蛍光性インターカレーターのDNAへの結合を共重合体が競合的に抑制する結果で有り、共重合体自体は、DNA鎖長に影響しないことがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
既にカチオン性くし型共重合体が核酸構造に与える影響を液中観察により評価してきたが、共重合体の与える影響を充分に評価することができなかった。本年、フローストレッチング法を導入することで、高感度に共重合体の影響を観察することができた。具体的には、核酸にインターカレートする色素が核酸を伸張させることを検出できる条件下で、共重合体の影響を観察し、共重合体が核酸長に影響を与えないことを見出した。さらに、共重合体と核酸との相互作用により、インターカレーター色素の結合が阻害されることがわかった。一般に、色素の結合阻害は、核酸構造をグロビュール化される結果と考えられているが、本研究により、カチオン性高分子が核酸のグロビュール化を誘導することなく、色素の結合を阻害することが初めて見出された。この知見は、一般に核酸のグロビュール転移の評価法として広く用いられている色素排除法には、慎重な議論が必要であることを示している。
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Strategy for Future Research Activity |
くし型共重合体が、通常のカチオン性高分子と異なりグロビュール化を伴わずDNAと相互作用することが明らかとなった。このような相互作用におけるポリマー構造の影響を今後検討する。特に、側鎖グラフト率、側鎖長、主鎖長の影響を検討するために、種々のくし型共重合体を調整し、核酸との相互作用をフローストレッチング法により観察する。また、これら高分子と核酸との結合性を、ゲル電気泳動法や蛍光相関スペクトル法により検討する。一方、核酸とポリカチオンの相互作用に関わる速度論に関する情報はこれまで極めて少ない。フローストレッチ法では、構造転移を経時的に観察することが可能で有り、相互作用の速度論的解析が可能と推測される。核酸へのカチオン性高分子の結合、構造転移さらに解離のそれぞれの過程を今後速度論的に解析する計画である。 一方、核酸以外の生体高分子、とりわけ構造解析が容易なポリペプチドの構造転移に及ぼすくし型共重合体の効果を調べ、機能性ペプチドの機能制御を目指す。
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Research Products
(6 results)