2011 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の予兆検知へ向けた身体活動時系列の臨床応用基盤に関する研究
Project/Area Number |
23240094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 義春 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (60251427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
佐々木 司 東京大学, 大学院・教育学研究科, 教授 (50235256)
内匠 透 広島大学, 医歯薬学総合研究科, 教授 (00222092)
吉内 一浩 東京大学, 大学院・医学研究科, 准教授 (70313153)
北島 剛司 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (40360234)
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Keywords | 心身の健康 / 気分障害 / 行動リズム |
Research Abstract |
本研究は、気分障害における身体活動の「行動組織化」の変調と「間欠性」の増大を切り口に、精神医学的・数理科学的・神経科学的エビデンスを伴った、精神行動異常の客観的・定量的かつ頑健な評価指標の設計・開発を行い、それを用いた気分変調の早期検知手法(sign-based Ecological Momentary Assessment)を確立することを目的とする。 本年度は、治療過程や再発、増悪、軽快といった臨床的分岐点における身体活動パターンと臨床スコアとの共変性の検討、および先行研究で得られた行動異常指標の精神医学的妥当性を検証するため、大うつ病性障害患者を対象に修正型電気痙攣療法施行過程(n=6、約4週間)および薬物治療過程(n=19、治療前後の約一週間)における身体活動の連続計測を行った。また、抑うつと躁状態を頻繁に繰り返す急速交代型の双極性患者を対象とした長期連続計測(>6ヶ月)を開始した(n=9)。 一方、双極性障害と遺伝的・病態的にも共通する部分が多い統合失調症患者の身体活動を計測し(n=19、約一週間)、行動組織化指標について検討した。その結果、大うつ病性障害患者と同様に、健常対照群に対して休息期間の系統的な増加がみられ、その分布形状(べき乗分布)を特徴づけるパラメータ(べき指数)に有意な減少を確認した。一方、活動期間分布(伸張型指数分布)の裾野の形状を特徴づけるパラメータ(伸張指数)は、うつ病患者とは異なり有意に減少した。このことは、統合失調症患者では、休息期間の持続性が増大する(間欠性の増大)とともに活動期間についても持続性が増す、すなわち、行動生起頻度は低下する(休息状態から活動状態への移行が生じ難い)が、一度活動を始めると終了しづらい(休息へ移行しづらい)ことを意味する。このような行動変調は、統合失調症における解離行動や反復・緊張病性などの行動異常を反映していると考えられた。また、行動組織化に関する行動異常指標はうつ病などの気分障害の評価のみならず、統合失調症の行動異常の定量化にも有用であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精神行動異常の客観的・定量的評価指標の開発に不可欠な臨床データの計測は順調であり、次年度以降、最適指標の探索や精神医学的妥当性の評価を行うに資するデータの蓄積が進んでいる。また、行動組織化則の数理モデルの構築を前進させる新たな知見を、統合失調症患者の身体活動時系列の解析により得ている。
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Strategy for Future Research Activity |
精神行動異常の客観的・定量的評価指標の開発に資するデータの計測・蓄積を継続するとともに、臨床的分岐点に視点を当てた解析により、行動異常を記述する最適な指標の開発・同定、およびその精神医学的妥当性の評価を行う。開発指標により兆候検知モデルの構築を行う。一方、神経科学的および数理科学的側面からのアプローチにより行動組織化の現象論的モデリングとその機序の解明を目指す。
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Research Products
(6 results)