2012 Fiscal Year Annual Research Report
うつ病の予兆検知へ向けた身体活動時系列の臨床応用基盤に関する研究
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23240094
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
山本 義春 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60251427)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
内匠 透 広島大学, その他の研究科, 教授 (00222092)
北島 剛司 藤田保健衛生大学, 医学部, 准教授 (40360234)
佐々木 司 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (50235256)
吉内 一浩 東京大学, 医学部附属病院, 准教授 (70313153)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 心身の健康 / 気分障害 / 行動リズム |
Research Abstract |
本研究は、気分障害における身体活動の「行動組織化」の変調と「間欠性」の増大を切り口に、精神医学的・数理科学的・神経科学的エビデンスを伴った、精神行動異常の客観的・定量的かつ頑健な評価指標の設計・開発を行い、それを用いた気分変調の早期検知手法を確立することを目的とする。 本年度は、治療過程や再発、増悪、軽快といった「臨床的分岐点」における身体活動の特徴と臨床評価スコアとの共変性の検討、および先行研究で得られた行動異常指標の精神医学的妥当性を検証するため、躁・うつ状態を高頻度で繰り返す急速交代型の双極性障害患者(延べ9人)を対象に、長期連続身体活動計測(>6ヶ月)を行い、病相転移時期を含む身体活動と主観的気分の同時連続記録を得ることに成功した。双極性障害患者のうつ病相では、大うつ病性障害患者と同様、身体活動時系列における休息期間の系統的な増加(すなわち、間欠性の増加)がみられ、その分布形状(べき乗分布)を特徴づけるパラメータ(べき指数)の値が顕著に低下することを確認した。一方、軽躁病相では、そのような間欠性の増加が抑えられ、うつ病相と比較して、べき指数の値が増加(もしくは正常化)することを確認した。さらに、主観的気分と行動指標との間に、有意な正の相関が存在することを確認し、開発指標が双極性障害における病相の客観的評価のみならず、病相転移の評価にも有用であることを示した。また、時間解像度の高い診断手法の確立を目的に、主観的な抑うつ気分の経時的変化と、記録前後の身体活動度の統計量との共変性について検討を加え、うつ病患者で確認された身体活動の間欠性の増大を反映するような統計量(平均活動量の低下と二次・三次モーメントの増加の組み合わせ)を用いた統計回帰モデルの有用性・妥当性を確認した。また、数理科学的側面からのアプローチとして、行動組織化の現象論的モデルを提案した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
精神行動異常の客観的・定量的評価指標の開発に必要な臨床データの計測は順調であり、最適指標の探索や精神医学的妥当性の評価を行うに資するデータの蓄積が進んでいる。また、双極性障害の病相転移に伴う行動指標の変化など、開発指標の臨床妥当性を示唆する知見を得ている。さらに、数理科学的側面からのアプローチとして、行動組織化の現象論的モデルを提案している。一方、解像度の高い行動指標の提案を目的に、日内の局所的な行動変化と気分との共変性を明らかにするなど、研究目的を達成するのに必要十分な知見が順調に蓄積されている。
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Strategy for Future Research Activity |
精神行動異常の客観的・定量的評価指標の開発に資するデータの計測・蓄積を継続する。また、今年度は、治療効果や病態・病相変化などの臨床的分岐点にさらに視点を当て、行動異常を記述する最適な指標の開発・同定、兆候検知モデルの構築、およびそれらの精神医学的妥当性の評価を行う。
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Research Products
(11 results)