2011 Fiscal Year Annual Research Report
抗腫瘍免疫ネットワークのキー操作技術開発による効果的な複合がん免疫療法の構築
Project/Area Number |
23240128
|
Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
河上 裕 慶應義塾大学, 医学部, 教授 (50161287)
|
Keywords | がん免疫療法 / 免疫抑制制御 / エフェクター細胞 / 樹状細胞 / 生体内腫瘍破壊法 |
Research Abstract |
本研究では、抗腫瘍免疫制御に重要な各免疫制御要素技術の開発・改良を行い、その併用により、より効果の期待できる複合的がん免疫療法の開発を目的としている。本年度は、直接的な抗腫瘍活性をもつ分子標的薬や化学療法剤などの抗がん剤が、がん細胞増殖抑制や細胞死誘導効果に加えて、がん細胞が発現する免疫抑制性分子の産生を抑えることにより、担がん生体免疫抑制状態にある樹状細胞の機能回復、骨髄由来免疫抑制細胞の減少や免疫抑制活性の低下、制御性T細胞の誘導抑制などにより、抗腫瘍免疫応答を増強できる可能性、さらに、抗がん剤によっては、がん細胞への作用を介さずに、直接的に樹状細胞の機能増強や骨髄由来免疫抑制細胞の誘導を阻害する場合があることを明らかにした。また、細菌由来アジュバント新規製剤や転写因子を抑制した樹状細胞のマウス腫瘍モデルへの投与は、樹状細胞機能増強効果を介して、抗腫瘍免疫応答と抗腫瘍効果を増強することを明らかにした。がん幹細胞に発現するヒト腫瘍抗原として同定した分子は、そのノックダウンにより、がん細胞株の増殖が抑制されることが判明し、免疫療法において、腫瘍抗原の消失が起こりにくい可能性が示された。これらの樹状細胞の機能増強法、担がん生体免疫抑制の改善法、がん細胞の増殖に関与しがん幹細胞にも発現する腫瘍抗原の同定などは、より効果の期待できる複合免疫療法の開発において利用できる重要な要素免疫技術である。次年度以降、このような抗腫瘍免疫応答における重要ポイントの制御法の研究をさらに進め、その併用による抗腫瘍免疫誘導と抗腫瘍効果の増強をマウス腫瘍モデルを用いて検討する予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初計画した抗腫瘍免疫応答制御の重要ポイントの制御法について、複数の方法が有用である可能性を示すことができた。次年度以降の計画である複合免疫療法の開発に結びつけることができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年度は、昨年度の計画の継続研究を中心に進める。具体的には、直接的抗腫瘍作用をもつ抗がん剤による抗腫瘍免疫調節作用の検討、特に担がん生体免疫抑制環境を改善できる抗がん剤の検討、樹状細胞の機能増強法、特に各種樹状細胞の機能を増強するアジュバントなどの検討、がん幹細胞やがんの増殖生存に関与するヒト腫瘍抗原の同定などを進める。本年度後半から最終年度にかけて、それらの併用による、より効果の期待できる複合免疫療法の検討を開始する。当初予定した光線力学療法による生体内腫瘍破壊は企業からの装置の提供が困難になったため、計画から削除し、抗がん剤を用いた研究を中心に研究を推進する予定である。
|
Research Products
(22 results)