2011 Fiscal Year Annual Research Report
コクサッキーウイルスB群3型を用いた悪性腫瘍に対する斬新な腫瘍溶解療法の臨床開発
Project/Area Number |
23240133
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 憲三朗 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (00183864)
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Keywords | コクサッキーウイルス(CV)B3 / 密度勾配遠心法 / miRNA相補配列挿入CVB3 / microRNA / 遺伝子改変CVB3 / miR-1 / miR-217 / CVB3精製 |
Research Abstract |
本年度は以下の計画を実施した。 1)CVB3の安全性検証の為のin vivo研究 臨床試験に将来的に供することを最終目的にCVB3精製実験を行った。先ず立案時研究計画に従って実験を進め、さらに諸条件を検討した結果、10~60%ショ糖密度勾配遠心法によってウイルスタンパク分画の分離に成功した。また、野生型マウスを用いたCVB3用量漸増試験においてはCVB3を投与したマウス各臓器(脳、心臓、肺、腎臓、肝臓、大腸、膵臓)におけるCVB3の存在をTCID50法によって評価し、過去の報告と同様、マウス膵臓に多くのCVB3が検出された。さらにヒト非小細胞肺癌以外の膵癌、大腸癌、悪性中皮腫癌細胞株に対するin vitro抗腫瘍効果を確認し、これらの細胞のin vivo抗腫瘍効果を検討するために担癌マウスモデルを作出した。 2)遺伝子改変CVB3の作製 腫瘍特異的プロモーター搭載制限増殖型CVB3の作製実験に関しては、hTERTよりも効果・安全性に優れることがより強く期待される組織特異的miRNA(microRNA)相補配列挿入CVB3作製に計画転換した。これまでの自他によるCVB3 in vivo投与実験より、心筋、膵臓に強いウイルス増殖親和性及び炎症応答を認めた為、組織特異的miRNAにmiR-1(筋特異的)、miR-217(膵臓特異的)を選択した。miR-1及びmiR-217相補配列挿入CVB3プラスミドベクターの構築に成功し、遺伝子変異がないことを確認後、in vitro転写にて作製したRNAをA549細胞に導入し遺伝子改変CVB3CVB3miR-1,217を産生した。miR-1,217は肺癌細胞で殆ど発現がない為、CVB3 miR-1,217は肺癌細胞で選択的に増殖・殺細胞効果を発揮するが、肺正常細胞では増殖能が著明に低下することを確認した。以上のように膵臓及び筋組織特異的制増殖型CVB3miR-1,217の遺伝子改変に成功した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究実施可能性を検討する為のCVB3の精製実験に関して、本年度はCVB3の精製分離に成功し、in vivo投与時のマウス臓器障害性の検討ができたが、同ウイルスの大量生産には至っていない。また、非小細胞肺癌以外の悪性腫瘍として、in vitro実験結果より膵癌、大腸癌、悪性中皮腫に著明な抗腫瘍効果が期待できることがわかったため、各担癌マウスモデル作出まで至っている。さらに次世代腫瘍溶解ウイルス療法の開発を目指し遺伝子改変CVB3の作製を行った結果、膵臓及び筋組織特異的miRNA相補配列挿入CVB3の作製に成功し、膵炎及び筋炎等の有害事象を回避することが期待でき、CVB3ウイルスベクターの安全性向上が達成される可能性をin vitro実験で明らかにできた。以上の実験結果は、本年度計画をおおむね満たしているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
(CVB3ウイルスの安全性検証の為のin vivo研究) CVB3の大量精製をGMP準拠において行い、前臨床研究を実施していく。当初の計画通り23年に引き続き、Balb/cマウスを用いてCVB3ウイルスの用量漸増試験を行い、安全性を検証しMTDを決定する。その結果を参考に、カニクイザルを用いた精製CVB3ウイルスの容量漸増試験開始に向けた諸準備を完了し、霊長類医科学研究センターに申請して、受け入れ体制が整い次第開始する。本研究においてカニクイザルにおけるCVB3ウイルスのMTDを決定する。また、大腸癌或いは悪性中皮腫担癌マウスモデルを用いてCVB3のin vivoにおける抗腫瘍効果を検討する。 (二重遺伝子改変CVB3:CVB3miR-1,217/GM-CSFの作製) 当初の計画通りH23年に引き続き、CVB3miR-1,217を担癌マウスに投与し、膵炎、筋炎発症予防の有無を確認する。さらに、同改変CVB3にマウスGM-CSF遺伝子を搭載したCVB3miR-1,217/GM-CSFウイルスを作製する。同改変ウイルスを用いて同系マウス皮下移植腫瘍(原発)或いは遠隔転移腫瘍に対する抗腫瘍効果及び抗腫瘍免疫誘導機構の相違を対照ウイルス治療群と比較検証する。 (癌幹細胞或いはEMT癌細胞に対する抗腫瘍効果の検討) 当初の計画通りH23年に引き続き、抗癌剤及び放射線治療に対し高い治療抵抗性を呈する癌幹細胞(CSC)に対して、上記改変CVB3ウイルスが有意な抗腫瘍効果を有するかについて検証する。CSCはSP分画細胞や癌幹細胞マーカー陽性細胞を用いてFlow cytometry法あるいはMACS法により純化する。EMT癌細胞は関連転写因子(Snail, Twist等)遺伝子導入癌細胞を作製し実験に供する。
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