2012 Fiscal Year Annual Research Report
コクサッキーウイルスB群3型を用いた悪性腫瘍に対する斬新な腫瘍溶解療法の臨床開発
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23240133
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
谷 憲三朗 九州大学, 生体防御医学研究所, 教授 (00183864)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 腫瘍溶解性ウイルス療法 / コクサッキーウイルス / GMP / 顆粒球マクロファージコロニー刺激因子 / microRNA |
Research Abstract |
1)CVB3の安全性検証の為のin vivo研究 a)野性型マウスを用いたCVB3用量漸増試験:B6マウスを用いてCVB3用量漸増試験を行った(1×10^4, 10^5, 10^6, 10^7, 10^8 TCID50 (n=5))。その結果、用量依存性に血清AST/ALT 及びアミラーゼ値の増加が認められ、全CVB3投与マウス群においては生存が確認された。b)担癌マウスモデルを用いた肺癌以外の固形腫瘍に対する抗腫瘍効果の検討、及びc)カニクイザルを用いたCVB3用量漸増試験:上記結果及び後述の組織特異的microRNA標的配列搭載CVB3の野生型CVB3に比較した安全性向上を確認できたため、同改変ウイルスを用いて1)-b, c) を実施することに計画変更した。 2)遺伝子改変CVB3の作製 a)組織特異的miRNA標的配列搭載CVB3(CVB3-miR-1&217、CVB3-miR-217)の作製と安全性確認試験:miRNA搭載CVB3投与マウス群において、野生型CVB3投与群で認めた体重減少、血清アミラーゼ値上昇、膵臓組織炎症細胞浸潤、腺管構造破壊が明らかに抑制され、安全性向上を認めた。さらに、抗腫瘍効果は野生型CVB3投与マウス群と同程度であった。b)マウスGM-CSF遺伝子搭載CVB3(CVB3-mGM-CSF)の抗腫瘍免疫誘導確認試験:CVB3-mGM-CSF作製に成功した。さらに、CVB3-mGMCSF作製時(肺癌細胞トランスフェクション時)にmGM-CSF産生をELISA 法により確認した。c)遺伝子改変CVB3療法の癌幹細胞に対する抗腫瘍効果の検討:ヒト癌幹細胞及び上皮間葉移行癌細胞分画(A549細胞)に対して、野生型CVB3は有意な抗腫瘍効果を呈した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
臨床研究実施可能性を検討する為のCVB3の大量生産、カニクイザル等における用量漸増試験は、新規作製miRNA標的配列搭載CVB3(CVB3-miR-1&217、CVB3-miR-217)を用いたマウスにおける用量漸増試験において、野生型に比較し安全性向上が確認できたため、当初の野生型CVB3を用いるよりも安全性向上遺伝子改変CVB3を用いるべきであると判断・変更し、平成25年度に行うこととした。尚、肺癌以外の担癌マウスモデルにおける野生型CVB3の抗腫瘍効果確認においても、安全性向上遺伝子改変CVB3を用いて平成25年度に行う方針とした。 ヒト肺癌H1299担癌免疫不全マウスを用いたin vivo実験において、CVB3-miR-1&217あるいはCVB3-miR-217投与マウス群では、野生型CVB3投与マウス群においてと同等な著明な抗腫瘍効果を認めた。さらに、CVB3-miR-1&217あるいはCVB3-miR-217投与マウス群において野生型CVB3投与マウス群で認めた著明な体重減少及び膵炎所見の消失が認められた。本実験結果よりこれら遺伝子改変CVB3の安全性向上がin vivoレベルで達成され、CVB3-miR-1&217あるいはCVB3-miR-217による臨床試験実施に向けた有力な基礎研究成果を得ることができた。尚、これらCVB3-miR-1&217あるいはCVB3-miR-217は特許出願済である。 さらに、抗腫瘍効果増強を目的としたCVB3-mGMCSFの作製を行った結果、CVB3-mGM-CSFベクターの構築に成功し、in vitroにおいてmGM-CSFの産生を確認した。以上の研究結果は、平成24年度の研究計画をおおむね満たしているものと考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
1)CVB3の安全性検証の為のin vivo研究 上述のように、平成25年度は従来計画していた野生型CVB3より、miRNA標的配列搭載CVB3(CVB3-miR-1&217、CVB3-miR-217)を用いた安全性検証の為のin vivo研究に移行する。先ず、これまで野生型CVB3精製実験で培った精製技術をこれらの遺伝子改変CVB3に応用し、遺伝子改変CVB3の大量生産及び精製を実施する。さらに、マウス及びカニクイザルを用いた遺伝子改変CVB3の用量漸増試験開始に向けた諸準備を完了し、体制が整い次第開始する。本研究においてカニクイザルにおける遺伝子改変CVB3のMTD(最大耐用量)を決定すると共に、血液および臓器毒性の有無、ウイルス投与後の体内動態を詳細に検討する。また、肺癌以外の担癌マウスモデル実験系を作製すると共に、これらを用いて遺伝子改変CVB3のin vivoにおける抗腫瘍効果発現対象腫瘍種を選定する。 2)遺伝子改変CVB3の作製と安全性検証の為のin vivo研究 平成24年度に引き続き、抗腫瘍効果増強を目的とした遺伝子改変CVB3-mGM-CSFを同系マウス皮下移植腫瘍(原発)或いは遠隔転移腫瘍に対する抗腫瘍効果及び抗腫瘍免疫誘導能の相違を対照ウイルス治療マウス群と比較検証する。遺伝子改変CVB3-mGM-CSFについてマウスin vivo抗腫瘍効果が明確に実証された場合、二重遺伝子改変CVB3(CVB3-miRT-hGM-CSF)を作製した後、GMPに準拠して大量に作製し、野生型或いはカニクイザルを用いた前臨床研究を実施する。また、野生型マウスを用いて上記複合遺伝子改変CVB3の用量漸増試験を行い、そのMTDを決定するとともに血液および臓器毒性の有無については病理学的診断を含め詳細に検討する。
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