2014 Fiscal Year Annual Research Report
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23241032
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
村田 靖次郎 京都大学, 化学研究所, 教授 (40314273)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | アザフラーレン / 水 / 水素 / 核磁気共鳴 / 緩和時間 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究では,フラーレンケージへの窒素原子のドープに起因するフラーレン骨格内部の性質の変化を明らかにするために,C59Nの内部空間に小分子を導入する有機化学的手法を開発した.また,内包小分子として,フラーレンケージ上の窒素原子との相互作用が期待される水分子および相互作用をほぼ無視できる水素分子を選定し,NMRアクティブな内包小分子のプロトン核磁気緩和時間を測定することにより,C59N骨格内部の性質について考察した. 小分子内包C59Nを合成するために,(1) 小分子内包C60から直接誘導する方法,(2) 前駆体の11員環開口部を拡大し,小分子を導入した後,元の大きさの開口部まで閉環し,C59N骨格を構築する方法の2通りの手法を開発した.合成したH2O@(C59N)2,H2@(C59N)2の260–360 Kの温度範囲においてスピン格子緩和時間T1を測定した.その結果,H2@C59NのT1はH2@C60とほぼ同程度であったにも関わらず,H2O@C59NのT1はH2O@C60の約3倍の値をもつことがわかった.これは,内包された水分子とフラーレン骨格上の窒素原子との間に何らかの相互作用が存在することを示している.H2O@(C59N)2におけるより長い緩和時間の起源を明らかにするために,モデル化合物HC59Nの静電ポテンシャルを理論計算を用いて評価した結果,予想に反し,窒素原子上の静電ポテンシャルは,骨格外部では負に,骨格内部では正に帯電していると示唆された (Figure 2).このことから,窒素原子上の非共有電子対の大部分がフラーレン骨格のπ共役に参画しており,内包水分子の酸素原子は骨格上の窒素原子との間にむしろ引き合うような相互作用が働いていると考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、小分子を内包したアザフラーレンを合成することができた。さらに、水分子を内包した場合では、外側の反応が加速されるという予想外の結果を見いだしているため。
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Strategy for Future Research Activity |
ゲストを内包した開口フラーレンの開口部をゲストを内包したままで縮小する。一旦、活性化学種がフラーレン内部に捕捉されれば、安定に取り扱いができるものと期待する。最後に、残存する有機基を除去し、内包 C60 の合成を行う。得られた化合物の単結晶を育成し、誘電率の温度変化を測定し、内包化学種の動的挙動との相関を明らかにする。特に、酸素分子内包体においては、光照射による励起一重項酸素の発生とその緩和過程の解明に取り組む。また、鉄原子内包体では磁性に興味が持たれる。 申請者らは既に、開口部への硫黄挿入とフラーレン骨格の減炭素反応により、C59S ならびに C69S の開口体の合成を報告している。そこで、これらの開口部を修復し、これまでに達成例の無いチアフラーレン C59S, C69S を合成する。このチアフラーレンにおいては、分極した硫黄イリド構造の寄与が予想できるため、結晶状態での分子配列を明らかにし、電荷移動特性を評価する。また、他のヘテロ元素 (B, O, Si, Ge, Sn, P, Se, Te) を開口部に組み込むことにも取り組む。特に、ホウ素活性種との反応を検討したい。開口部の修復がうまく行かない場合には、開口部にかさ高い置換基を導入して室温における内包化学種の放出を抑制し、その内包体の物性評価を行う。
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Research Products
(10 results)