2012 Fiscal Year Annual Research Report
X線自由電子レーザーを利用する液体中の中距離立体構造の解明
Project/Area Number |
23241033
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
八尾 誠 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (70182293)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
永谷 清信 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 助教 (30273436)
松田 和博 京都大学, 理学(系)研究科(研究院), 准教授 (50362447)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
|
Keywords | 自由電子レーザー / 液体の中距離構造 / クラスター / イオン液体 / 液体金属 |
Research Abstract |
日本のXFEL施設SACLAで利用実験を実施した。特に、X線自由電子レーザー(XFEL)を利用するX線散乱実験を行う際に重要となる、XFELが試料に与える損傷を評価するために、原子・分子や希ガスクラスターを試料としてイオン・電子分光を行った。実験から、XFEL照射により単一原子でさえも多数の光子を吸収する多光子過程が起こることが確認され、結果を専門誌に発表した。 また、海外グループとの共同研究として、SACLAを用いてシングルショットX線散乱実験を実施した結果について、タンパク質微結晶試料のX線回折実験による構造解析および異常散乱実験の結果を専門誌に発表した。 FEL利用によるポンプ-プローブ実験技術の開発を進めるために、SCSS試験加速器の極紫外FELパルスと赤外レーザーを用いて希ガスクラスターを試料とした実験を進めた。特に、ネオンクラスターを試料とした実験では、極紫外FELによりネオンクラスターに多数の励起子を生成することで、希ガスクラスターで励起子モット転移が起きていることを示唆する結果が得られた。これまでに得られている光電子分光などの結果と合わせて、FELの高強度パルス光でのみ誘起可能な新しい状態を創出していることが示唆されている。 イオン液体の平均的な中距離構造について検討を加えるために、実験室でX線小角散乱実験を行った。イオン液体では分子の電荷を担う部分と電荷を持たない部分がそれぞれドメイン構造を形成することが知られているが、このドメイン構造の形成について検討するために、分極性や非分極性の分子をイオン液体に添加し、溶質分子によるドメイン構造の変化について検討を進めた。 上記とあわせて、平成23年度に作成した試料作成真空槽やX線CCD利用に向けた装置の組み立てや調整を進めた。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SACLAの利用実験により、たんぱく質試料のX線構造解析を実施し、成果を発表するとともに、X線領域の多光子吸収過程などの試料損傷過程についての知見の蓄積も進んでおり、X線自由電子利用実験について順調に進展している。これと並行して、極紫外レーザー施設を利用して自由電子レーザー利用技術の開発も進んでおり、特にポンプ-プローブ計測による時分割計測実験の技術開発も順調に進展し、新たな知見も得られた。実験室でのX線散乱実験による試料検討も進めており、現時点で、研究目的の達成に向けて順調に研究が進展している。
|
Strategy for Future Research Activity |
25年度以降は、主としてクラスターや巨大分子など、原子・分子とは異なる複雑な物質を試料として、XFELと物質の相互作用について基本的な知見の蓄積を進めてゆく。これと並行して、X線構造解析のための実験技術開発を進める。可能な限り25年度中にSACLAで開発されたX線検出器を利用したX線回折実験を実施し、これまでに準備した装置の性能試験を行うとともに、液体試料も含めた興味深い試料への適用を目指す。
|
Research Products
(12 results)