2011 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロステップ光学素子を用いた1ショット広帯域実時間イメージング分光法の開発
Project/Area Number |
23241034
|
Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
|
Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 淳 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60202165)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 郁文 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (80432532)
菊池 あづさ 横浜国立大学, 工学研究院, 助教 (30452048)
北島 正弘 防衛大学校, 応用科学群, 教授 (00343830)
|
Keywords | フェムト秒 / イメージング / エシェロン / シングルショット / 光誘起相転移 / フォトクロミズム / 光化学反応 |
Research Abstract |
本研究では、温度制御したナノプロセッシング技術により、0.2μm以下の加工精度で1μmオーダーのステップ構造を持つ階段状光学素子(超精密反射型エシェロン)を作製する。これをプローブ光の遅延時間発生光学素子として用いることにより、極微量・極微小サンプルの(不可逆)光反応のダイナミクスや光劣化を伴う紫外線吸収剤の励起状態間のエネルギー移動を可視化する(1)高時間分解能、(2)スポット集光、(3)広帯域、(4)時間・波長2次元同時検出すべてを満たす世界唯一の1ショット広帯域実時間イメージング分光法を開発する。また、この分光手法を駆使し、高密度励起下における微小有機結晶の非線形不可逆光応答(絶縁体-金属相転移や光誘起相転移)やフォノンポラリトン伝播のダイナミクスの時間・周波数特性を広帯域で1ショット検出する。 本年度は、ダイアモンドバイトと温度制御したナノプロセッシング技術により、0.2μm以下の面精度で、段差5μm、段幅20μm、全段500段の超精密反射型エシェロンを作製した。そして、これを予備的に立ち上げているイメージング分光光学系に組み込み、1ショット実時間イメージング分光法を構築した。この分光法のテストとして、再生増幅レーザーからのフェムト秒光パルス自身のFROG(Frequency-Resolved Optical Gating)計測を第2高調波発生法と偏光ゲート法により行った。その結果、1ショットベースで光パルスのスペクトルや位相特性を定量的に計測できることがわかった。次に、強誘電体フォノンポラリトン伝播とベータカロテンの超高速内部転換のイメージング計測を行い、物性計測への応用も問題なくできることがわかった。これらの結果は、構築した分光技術がこれまでの分光技術に比して、不可逆光反応の動的過程の解明に有用であることを示している。一方、本分光技術のターゲットの1つである紫外線吸収剤の光劣化の原因を一重項及び三重項状態のエネルギー準位と寿命の観点から明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた超精密階段状光学素子による1ショット実時間イメージング分光手法を構築できた。これを用いてフェムト秒光パルス自身のFROG計測と有機分子であるベータカロテンの超高速過渡応答及び強誘電体フォノンポラリトンの実時間イメージング計測に成功した。また、この分光法のターゲットの1つである紫外線吸収剤の光劣化の原因をESRや寿命測定から明らかにした。これらの成果は、当初実施計画の70~80%を達成したことになる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後の研究では、まず、構築した1ショット実時間イメージング分光手法の高感度化・広帯域化を行う。高感度化のため、実際のサンプルの過渡応答と参照光信号を2次元検出器に同時に取り込むことを実現する。また、広帯域化を目指し、開発した超精密反射型エシェロンをテラヘルツ分光に組み込み、テラヘルツ帯でのシングルショット計測技術の開発を模索する。また、強誘電体フォノンポラリトン伝播の研究においては、ダブルパルスや空間位相変調器により整形された光パルス列を用いて、特定の波数を持つフォノンポラリトンの増強や抑制などの制御を行う。
|