2013 Fiscal Year Annual Research Report
マイクロステップ光学素子を用いた1ショット広帯域実時間イメージング分光法の開発
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23241034
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Research Institution | Yokohama National University |
Principal Investigator |
武田 淳 横浜国立大学, 工学研究院, 教授 (60202165)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
菊地 あづさ 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (30452048)
片山 郁文 横浜国立大学, 工学研究院, 准教授 (80432532)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | シングルショット / フェムト秒分光 / 光構造変化 / イメージング / 紫外吸収剤 / エシェロン |
Research Abstract |
本研究では、温度制御したナノプロセッシング技術により、0.2μm以下の加工精度で1μmオーダーのステップ構造を持つ反射型エシェロンを作製する。これをプローブ光の遅延時間発生光学素子として用いることにより、極微量サンプルの(不可逆)光反応のダイナミクスや光劣化を伴う有機分子の励起状態間のエネルギー移動を可視化する①高時間分解能、②スポット集光、③広帯域、④時間・波長2次元同時検出すべてを満たす1ショット広帯域実時間イメージング分光法を開発する。また、この分光手法を駆使し、高密度励起下における微小有機結晶の非線形不可逆光応答(絶縁体-金属相転移や光誘起相転移)や紫外線吸収剤の光劣化過程、フォノンポラリトン伝播のダイナミクスの時間・周波数特性を広帯域で1ショット検出する。 昨年度までに上記分光技術を構築し、いくつかの標準物質で分光手法の評価を行ってきた。本年度はそれを受け、(1)生体系有機分子(ベータカロテン)の過渡吸収変化及び(2)光記録材料GeSbTeの光誘起アモロファス化のシングルショット計測を主要なテーマとした。特に後者は、記録マーカーが形成される閾値以上ではシングルパルスでアモロファス化が生じ、アモロファス相から結晶相へはそのままでは戻らないため、「真のシングルショット計測」が必要となる。 (1)においては、ベータカロテンの超高速内部転換を420~650nmの広範囲においてシングルショットで可視化し、真の緩和定数を定量的に評価した。(2)においては、光誘起アモロファス化の時定数を決定し、アモロファス化がGe-Teの振動モードにより誘起されることを見出した。一方、本分光技術のターゲットの1つである紫外線吸収剤から酸素分子へのエネルギー移動により一重項酸素が生成(光増感生成)する可能性について、一重項酸素からの発光を観測する時間分解近赤外発光法により実験的に明らかにした。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたように、2年目までに、可視域~紫外域の広帯域で動作する1ショット実時間イメージング分光手法を構築することができた。本年度はその物性応用と言うことで、可視・紫外域における(1)生体系有機分子の超高速過渡応答のシングルショット検出、(2)光記録材料GeSbTeの超高速アモロファス化のシングルショット検出、を行った。(1)においては、ベータカロテンの超高速内部転換を420~650nmの広波長範囲においてシングルショットで可視化することに成功し、光劣化を伴うマルチショット計測との比較から、その緩和過程を定量的に評価できた。(2)においては、光誘起アモロファス化の時定数・吸収変化を励起密度をパラメータとして決定し、アモロファス化がGe-Teの6配位構造の振動モードにより誘起されることを見出した。 一方、紫外吸収剤においては、UV-B吸収剤であるoctyl 4-methoxycinnamateおよび新しいUV-B吸収剤であるdioctyl 4-methoxybenzylidenemalonateへのトリプレット-トリプレット(T-T)エネルギー移動を定常光励起時間分解りん光スペクトル法により実証した。一方、この手法が適用できないサンプルにおいては、パルスレーザーを励起光源とするパルス励起時間分解りん光法によりT-Tエネルギー移動の実証実験を行った。また、代表的な活性酸素である一重項酸素が紫外線吸収剤から酸素分子へのエネルギー移動により生成(光増感生成)する可能性について、時間分解近赤外発光法により検討した。その結果,ベンゾフェノン系紫外線吸収剤においては一重項酸素を生成する化合物と生成しない化合物の両者が存在することが判明した。
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Strategy for Future Research Activity |
可視域~紫外域のシングルショット分光研究においては、引き続き光記録材料であるアモロファスカルコゲナイド半導体(GeTe、GeSbTe他)の光相変化のシングルショット計測を行い、これらの光反応の解明を行う。また、ダブルパルス励起を組み込み、相変化のコヒーレント制御の可能性を検討する。 テラヘルツ領域のシングルショット分光研究においては、これまで実際の物性計測までは至っていない。そこで、これまでテストした半金属薄膜の非線形吸収飽和、一次元パイエルス絶縁体の絶縁体・金属相転移の過渡応答計測の他に、金属薄膜や上記アモロファスカルコゲナイド半導体の光応答計測を行う。
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Research Products
(24 results)