2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23241058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森下 真一 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 教授 (90292854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
武田 洋幸 東京大学, 大学院・理学系研究科, 教授 (80179647)
橋本 真一 金沢大学, 医学系研究科, 特任教授 (00313099)
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Keywords | DNAメチル化 / 塩基置換 / 進化 / 近交系 / ヒトゲノム / メダカゲノム |
Research Abstract |
ゲノムの多様性は、主として自然選択説と中立説から解釈されてきた。これらの説を補う第三の視点として、クロマチン構造およびDNAメチル化が多様性にあたえる影響を本研究では分析する。そのためには、多様性が著しい複数の近交系をもち、さらにゲノムが解読されたモデル生物が研究対象として好ましい。近交系はプロタイプ間の差が殆どなく正確な観測を可能にする。これら条件を満足する脊椎生物としてメダカに注目した。なぜなら塩基置換率が3.4%と多様性が顕著な2つの近交系を利用可能だからである。 メダカのクロマチン構造およびDNAメチル化の状態を、超高速DNA解読装置を利用して全ゲノム規模で測定し、多様性への影響を分析した。DNAメチル化が進化に与える影響としてはCがTへ塩基置換される率が、他の置換に比べて著しく高いことが従来から知られている。これはメチル化されたシトシンがdeaminationによりチミンへと置換されたとき、それを修復する酵素の効率が低いことが原因と解釈されている。この修復は1塩基単位で起こるのか?もしくは周辺の配列も含めて修復されるのか?興味深い。もし周辺の配列を含めた修復であれば、メチル化されたシトシン周辺の塩基置換率は、非メチル化状態にあるシトシンのそれよりも有意に高いはずである。 この仮説は、塩基置換率の高いメダカの2つの近交系を比較することにより検証できると考え分析した。2つの近交系において、精巣および生殖細胞様の0.5日目の初期胚をサンプルとして、全シトシンのメチル化状態を調べ、両者でメチル化状態が一致する領域は、進化の過程でメチル化パターンが一致していると考えられる。これらの領域周辺での塩基置換率を調べたところ、メチル化シトシン周辺では、非メチル化シトシン周辺と比べて塩基置換率が50%以上上昇することが、全ゲノム、全エクソン、全イントロン領域で確認された(p値<E-2170)。この傾向は、ヒトゲノムにおけるSNP率でも確認された(p値<E-836)。 以上のように、DNAメチル化状態が、従来のC->T置換に留まらず、周辺塩基の置換にも大きな影響を与えることをわれわれは初めて確認した。進化のドライピングフォースとしてのDNAメチル化の重要性を再確認した結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
DNAメチル化状態が、従来のC->T置換に留まらず、周辺塩基の置換にも大きな影響を与えることを初めて確認できたため。これは遺伝学の中でも重要な発見であると考えているため。
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Strategy for Future Research Activity |
DNAメチル化とDNAクロマチン構造の相乗的効果が転写開始点の進化に与える影響を引き続き分析する。
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Research Products
(3 results)