2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23241058
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
森下 真一 東京大学, 新領域創成科学研究科, 教授 (90292854)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
橋本 真一 金沢大学, 医学系, 特任教授 (00313099)
武田 洋幸 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80179647)
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Project Period (FY) |
2011-05-31 – 2014-03-31
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Keywords | ゲノム / DNAメチル化 / 塩基置換 / 進化 / 近交系 / ヒトゲノム |
Research Abstract |
メチル化シトシン周辺において、非メチル化シトシン周辺と比べて塩基置換率が50%以上上昇することを、全ゲノム、全エクソン、全イントロン領域で確認し (p値 < E-2170)、さらにヒトゲノムにおける SNP 率でも確認し (p値 < E-836)、Genome Research 誌に報告した。現在は、パラローグの組のプロモータ領域の塩基保存率とメチル化の関係を調べているが、塩基保存率は低くなっても、メチル化状態の相関が高いパラローグの組が数多く存在することを観測している。一方、同じ種内においては1世代のメチル化の変化率 (いわゆる SMP) が、塩基置換率に比べて 3-4 桁高いことがシロイヌナズナをモデル生物としてEcker らが報告している。高い SMP 率は、環境変化への適合のしやすさを説明するための原理のひとつと考えられている。パラローグにおいてメチル化状態が高いことと必ずしも矛盾するわけではなく、また変化が生じるタイムスケールの大きさも顕著に違うので、異なる視点からこれらの観測事実を平成25年度は解釈したいと考えている。 クロマチン構造について考察したところ、初期胚、精巣において転写開始点下流でヌクレオソーム構造がアレイ状に固定して存在する遺伝子のクラスが見つかった。これらの遺伝子には、塩基率、発現量、進化的保存度に関して共通した性質が見られた。さらにクロマチン構造については線虫をモデル生物として考察を行った。線虫では trans-splicing により転写開始点以降の不定長配列が SL1 leader に置き換わる現象が知られているため、まず trans-splicing を受ける前の転写開始点を収集した。その結果、転写開始点周辺で他のモデル生物と同様に、ヌクレオソーム構造がアレイ状に固定する現象が観測された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
平成24年度は、DNAメチル化と遺伝的多様性に関する新しい結果を Genome Research に報告できた。さらに、パラローグとメチル化率の保存に関しても新しい現象を見出した。また線虫における転写開始点を同定し、転写とクロマチン構造に関する知見を得ることができ、結果が Genome Research に掲載予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成25年度は最終年度である。研究を進める中で新たに観測された現象の意味をさらに追及して、論文化できるように努めたい。 またクロマチン構造については線虫をモデル生物として考察を行ったが、線虫では trans-splicing により転写開始点以降の不定長配列が SL1 leader に置き換わる現象が知られているため、まず trans-splicing を受ける前の転写開始点を収集した。その結果、転写開始点周辺で他のモデル生物と同様に、ヌクレオソーム構造がアレイ状に固定する現象が観測された。さらに SL1 サイト周辺にもヌクレオソームが固定する位置も存在している。これらは転写とヌクレオソーム構造の間の関係を解明する際に注目すべき現象である。なお、線虫の転写開始点を分析することにより、プロモータの新たなモチーフ、モチーフといくつかの転写因子の相関、bi-directional プロモータの候補領域が多数見つかった。線虫の転写制御を今後進める上で大きな足掛かりとなった。平成25年度はこれらの点もさらに考察する。
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Research Products
(5 results)