2013 Fiscal Year Annual Research Report
「インド哲学諸派における<存在>をめぐる議論の解明」
Project/Area Number |
23242004
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸井 浩 東京大学, 人文社会系研究科, 教授 (30229603)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
和田 壽弘 名古屋大学, 文学研究科, 教授 (00201260)
吉水 清孝 東北大学, 文学研究科, 教授 (20271835)
小川 英世 広島大学, 文学研究科, 教授 (00169195)
片岡 啓 九州大学, 人文科学研究科(研究院), 准教授 (60334273)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | インド哲学諸派(ダルシャナ) / 存在論 / カテゴリー論 / 文献実証的 / 学派横断的 / 比較思想 / 国際研究者交流(欧米、東アジア) |
Research Abstract |
本研究プロジェクトは、世界認識の枠組みとしての存在論・カテゴリー論のインド的展開を解明する、世界でも初めての本格的共同研究である。その目的は、いわゆる「六派哲学」を中心とするインド哲学諸派(ダルシャナ)における、〈存在〉をめぐる議論の全体像を明らかにすることにある。そのために、世界の第一線で活躍する日本のインド哲学研究者を結集して、ひとつに各派固有の理論的展開を文献実証的方法により研究し、同時に学派横断的・比較哲学的な視点を取り入れた共同研究を進めていく。 当初計画では最終年度に予定していた日本印度学佛教学会学術大会でのパネル発表を、本年度(第3年次)、前倒しで実施することにした。3年次に至って、本プロジェクトでの議論も方向性が定まり、内外に意見を問うべきときがきたと判断されたからである。パネルではカテゴリー論(和田)、宗教的・解脱論的存在論(片岡)、比較形而上学(吉水)、言葉の意味と世界の関係(小川)を論じ、また桂がこれらの諸問題を横断的に総括した。質疑応答やその後の対話で多くの意見が寄せられた。これらを踏まえて最終年度は公開シンポジウムを実施する。 また、京都大学や龍谷大学のプロジェクトと共催というかたちで、比較哲学的観点のワークショップを催した。これらで西洋哲学研究者らと意見交換を行い、本プロジェクトの柱のひとつとしていた比較哲学的研究は大いに前進することとなった。 各班の個別研究も着実に進展している。昨年度から継続して、ラグナータ、カマラシーラ、パタンジャリ、シャンカラ、ウマースヴァーティ、サディヨージョーティスらのテキストの研究が進行中であり、それらの成果は最終年度の合同研究会で集約する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度も研究成果の点数は期待を大きく上回るものとなった。また、計画していた日本印度哲学仏教学会学術大会でのパネル発表を、前述の通り前倒しで実施し、最終年度のシンポジウムに向けた大きな足がかりをつくることができた。比較哲学的研究についても、今年度、濃密な研究会を繰り返し実施したことにより、西洋哲学研究者らとの太いパイプが構築されつつある。本年度の特筆すべき成果は、これまで毎年行ってきた合同研究会での議論が成熟し、本プロジェクトの主要な目的のひとつである啓蒙書刊行に向けての道筋が明確に見えてきたことにある。それらは、(1)ニヤーヤ・ヴァイシェーシカ学派の存在論を特徴付ける「属性と基体」構造による世界分析、(2)言葉を通して存在の分析へ迫る文法学派の理論、(3)アリストテレス的「カテゴリー論」とインド哲学的「パダールタ論」の本質的差異、(4)修道論と結びついたサーンキヤ・シヴァ教の宗教的存在論等に整理できる。これらの論点は最終年度さらに突き詰めて論じていくが、啓蒙書の大まかな目次を作り、出版までの具体的な段取りを組むところまで進んだ。本研究プロジェクトの申請時に計画していた目標は、現状の見通しではおおむね達成できる見込みである。
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Strategy for Future Research Activity |
プロジェクトの最終年度に入り、本年度はこれまでの成果を形にしていくこと、そして今後の研究へとつなげる道筋を作ることを意識してプロジェクト運営を行う。まず、当初計画通り公開シンポジウムを11月に開催する。登壇者はすでに決定し、会場も確保してある。また、インド存在論の啓蒙書をプロジェクト終了から日を措かずに刊行するため、年度内に出版社の決定、目次の決定、さらに執筆の開始を行う。執筆者は概ね決定しており、現在、目次の決定に向けて執筆者間で協議している。また、啓蒙書とは別に、文献学的・専門的研究、とくに若手のプロジェクトメンバーによる先進的研究を世に出すため、「合同研究会プロシーディング」なる特別編集誌を年度内に刊行することを決定した。これは当初計画には含まれていなかったが、執行メンバーにより必要と判断され、決定したものである。 本研究プロジェクトで築いた研究者のネットワークと目的の共有は、プロジェクト終了後も存続させねばならない。プロジェクト終了の翌年には、国際サンスクリット学会(バンコク)と国際ワークショップ(ソウル)という、本プロジェクトのメンバーがおそらく最前線で活躍する大きな学会がふたつある。本研究の成果も、これらの学会で発表されることになるだろう。それまでプロジェクトの活動を維持するために、メーリングリストやウェブサイトを継続運用し、緊密な連絡体制を保っていく。
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Research Products
(83 results)