2013 Fiscal Year Annual Research Report
中国における土地領有の慣習的構造と土地制度近代化の試み
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23242043
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
片山 剛 大阪大学, 文学研究科, 教授 (30145099)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 茂 大阪大学, 文学研究科, 名誉教授 (30087150)
田口 宏二朗 大阪大学, 文学研究科, 准教授 (50362637)
稲田 清一 甲南大学, 文学部, 教授 (60221777)
荒武 達朗 徳島大学, その他の研究科, 准教授 (60314829)
大坪 慶之 三重大学, 教育学部, 准教授 (30573290)
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Project Period (FY) |
2011-11-18 – 2015-03-31
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Keywords | 伝統中国 / 近代東アジア / 土地制度 / 開発史 / 国際情報交換 |
Research Abstract |
本年度の成果は12月のワークショップで発表している。①近代南京の土地登記史において、1933年の「南京市不動産登記條例」は大きな画期であったが、その直前の画期としては、19世紀後半の江寧善後総局による「執照」発給事業が該当するとの仮説を提示した。②南京国民政府は〈抵押権〉(抵当権に近似)を権利非移転的なものと規定し、その浸透を図ったが、果たして非可逆的なものとして定着したかという問題を提起した。③20世紀前半の南京付近の中洲開発における地権の分化(一田両主制の形成)に関連して、開発のための資金・労働力の大部分は地主ではなく佃農が提供していた事実を発掘した。④1950年代前半の南京市郊外の「査田定産工作」(特に定産工作)を具体的に復元するとともに、本年度発掘した「農業税徴収清冊」という興味深い資料を紹介した。これらはいずれも近現代中国の土地制度を中国史上に位置づけ、また土地の調査・整理事業を復元するという本科研の課題にとって、初めて発掘した、ないし照明を当てた事実・問題群であり、課題の最終的とりまとめに向けた重要な基礎作業となっている。 ワークショップ後の広東省での実地調査では、土地改革前の「村の土地」に関する新知見を得た。すなわち、一筆々々の農地の〈所有権=管業権〉は自然村を超えて売買される。しかし所有権とは別に、「ラン」([土+朗]の一字。日本の小字に相当)ごとに「プ」([土+歩]の一字)と呼称される、売買されない〈管理権〉が存在し、この管理権は各自然村が保持していた。そして一筆の農地の所有権者が売買によって変動しても、自然村が有する管理権には影響を与えない。その一例として、農地に残った〈落ち穂〉は所有権者のものではなく、管理権をもつ自然村のものである、と。これは、土地改革前の中国には「村の土地」がないとする通説を再考させる重要な知見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1930年代から40年代の南京市における土地登記文書の整理については、分量が厖大であるため整理できた量は計画よりも遅れているが、質的には有意な成果を出すことが可能である。1930年制定の土地法で「他項権利」が法制化された背景のうち、〈ドイツ租借地である青島で行われた土地行政における「他項権利」の取り扱い方〉については、参照に値する先行研究や関連史料を見いだすことができない状態であるので、その分の作業を遅れている南京市土地登記文書の整理に注いでいる。それ以外については、当初の研究目的がほぼ順調に進行しているため。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度が本研究課題の最終年度となるので、調査・分析を継続するとともに、4年度にわたる調査研究のとりまとめのために、11月もしくは12月に開催するワークショップにおいて、最終的とりまとめに向けた報告を行うとともに、本課題に関連する研究を行っている研究者を招聘してコメントを頂戴する。それらの報告やコメントは、年度末に刊行するニューズレターに収録する。なお、海外における調査としては、南京市・台北市における文献調査、広東省における文献ならびに実地調査を予定している。
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Research Products
(14 results)