2014 Fiscal Year Annual Research Report
ケニア海岸地方のスピリチュアリティおよび宗教性に関する人類学的国際学術研究
Project/Area Number |
23242055
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
慶田 勝彦 熊本大学, 文学部, 教授 (10195620)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | ミジケンダの聖なるカヤの森 / 世界遺産(文化遺産) / 東アフリカの宗教とスピリチュアリティ / 妖術・託宣・呪術 / 映像人類学 / 国際研究者交流(イタリア) / 国際情報交換(ケニア、イタリア、英国) / 若手研究者育成(スーダン、タンザニア) |
Outline of Annual Research Achievements |
平成26年度は計画の一部を変更したが、ケニアとの国際共同研究体制をより充実させた点が最も大きな成果であり、また、これまで支援してきた若手研究者たちが個々に成果を出してきている点も成果のひとつである。 第一に、代表者の慶田はケニアでの現地調査(カヤ・プロジェクト)を行うと同時に、ケニア海岸地方キリフィにあるプワニ大学人文社会学部・大学院と慶田が属する熊本大学文学部および社会文化科学研究科との間で正式な学術間交流協定を締結し、中長期的な共同研究拠点を確立した。第二に、この共同研究拠点化と連動して、海外連携研究者のシモーネ・グラッシ(映像作家)と協力し、東アフリカ・映像人類学研究センター(仮)の設置を日本、イタリア、ケニアの間で進めてゆく計画に着手した。現地調査においてはマリンディ文化協会(MADCA)と連携し、カヤをめぐる現地の動向についての聞き取り調査を継続し、それ以前の調査については2014年4月にナイル・エチオピア学会で発表した。第三に、アフリカ人類学セミナーの一環として平成26年度は東アフリカの宗教性とスピリチュアリティに関する理論研究成果(エヴァンズ=プリチャードを焦点化)を特集化するための研究会等を開催した。この成果(論文)を『文化人類学』に投稿し(企画者は佐々木重洋、投稿者には若手研究協力者の橋本、代表者の慶田が参加)、すべての論文の採択、掲載(2015年秋)が決定した。 研究連携者の岡崎も予定通りに国際学会での発表を行い、また、海外研究連携者のシモーネもマリンディ文化協会センターおよび英国東アフリカ研究所で開催されたセミナーで研究成果の一部(映画上映含む)を発表した。本年度はケニアとの連携および国内での研究成果発表作業を中心にしたため、予定していた英国研究者との共同研究を推進することができなかったが、2015年度中には彼らとの研究成果を可視的にする予定である。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
海外(英国、イタリア、ケニア)との共同研究の場合、予算、現地や連携先の状況等で当初の計画の一部を変更、修正する必要は常にあるが、全体として本研究は順調に進んでいる。 第一に、カヤ・プロジェクトについては継続的な現地調査を実施しているし、中長期的な国際学術交流拠点化も大学(部局)間の学術交流協定を締結するなど着実な成果をあげている。現在のところ、英国(オックスフォード大学)、ケニア(プワニ大学、マリンディ文化協会、英国東アフリカ研究所、JSPSナイロビ連絡所)と連携しながら国際的な共同研究を推進してきている。 第二に、研究成果についても研究代表者は国内外で研究発表(学会発表含む)を行っているし、その成果も英語あるいは日本語で活字化され、公表される目処が立っている。研究連携者も本科研に関連した著作を刊行したり、国際学会での発表を行ったりと、それぞれの役割(若手研究者育成含む)を順調に果たしている。 第三に、イタリア人映像作家シモーネ・グラッシとの連携を中心として、映像人類学の手法を取り入れたプロジェクトが具体化し、ケニア・日本・英国を結ぶ中長期的な共同研究へと発展させる体制が整いつつあるのは予想以上の成果であった。 最後に、これまでに支援してきた若手研究協力者(岡本:ケニア、橋本:スーダン、香室:ナミビア)がそれぞれに論文等投稿、採択の結果を出してきている点も十分に評価されてよい。その一方で、平成24年度に実施したIUAESでの発表成果の刊行やデビッド・パーキンとの連携研究を平成26年度中には十分に展開、発展させることができなかったし、アフリカ人類学セミナーの提起開催も実現できていない。また、web上での研究進捗状況や研究成果公表が十分に整備できていない点を改善する余地があるため、本研究課題の現在までの達成度は「おおむね順調に進展している」とした。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまでの調査研究実績および研究推進方策の反省点を踏まえ、最終年度となる2015年度は、1)調査研究、2)研究体制の2点について今後の推進方策を明確にしておきたい。 1)本研究はケニア海岸地方を中心として、東アフリカ(一部の中央、南部アフリカを含む)の人類学的国際共同研究をより推進してゆくために、第一に国際共著論文数や国際セミナー等の数を増やしてゆく。そのためにはまず、2014IUAESでのパネル発表を刊行すること、また、これ以外の学会等での発表を英語論文化すること、そして2015年度に総括的なセミナー等を開催し、その成果を英語で公表してゆくことを目標とする。第二にアフリカ人類学セミナーの定期開催を若手研究者育成と連動させることによって日本国内における東アフリカに関する人類学的研究の質的向上を継続し、国際的な共同研究へと参画させる試みを行う必要がある。第三に、今後は映像人類学的な実践の場を国内外で増やし、より社会に開かれた人類学的研究を目指してゆく方針である。 2)1)を可能にするためにはグローバルな研究体制を整える必要がある。これまでに構築してきている英国、ケニア、イタリア、日本との研究機関および研究者ネットワークを強化すると同時に、将来的には中国や韓国等アジアにおけるアフリカ研究者との連携にも着手してゆきたい。当面はオックスフォード大学(社会文化人類学研究所)とプワニ大学(ケニア)、英国東アフリカ研究所(ケニア)、イタリア人映像作家(シモーネ・グラッシ)との研究連携を強化しながら、そして長期的には映像人類学を中心として台湾、ベトナム、中国、韓国の研究者との連携を模索する。 現在まで、研究代表者が1)と2)をほぼ同時に推進しているため、特に2)に関してはURAなどを活用した研究体制整備を行う必要がある。
|
Research Products
(3 results)