2012 Fiscal Year Annual Research Report
コンテンツの創作・流通・利用主体の利害と著作権法の役割
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23243017
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Research Institution | Meiji University |
Principal Investigator |
中山 信弘 明治大学, 研究・知財戦略機構, 教授 (40009816)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
大野 幸夫 明治大学, 法学部, 教授 (20282965)
金子 敏哉 明治大学, 法学部, 講師 (20548250)
横山 久芳 学習院大学, 法学部, 教授 (30313050)
白田 秀彰 法政大学, 社会学部, 准教授 (50318599)
藤本 由香里 明治大学, 国際日本学部, 准教授 (50515939)
蘆立 順美 東北大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (60282092)
田中 辰雄 慶應義塾大学, 経済学部, 准教授 (70236602)
今村 哲也 明治大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (70398931)
潮海 久雄 筑波大学, ビジネス科学研究科(系), 教授 (80304567)
前田 健 神戸大学, 法学(政治学)研究科(研究院), 准教授 (80456095)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 著作権 / コンテンツ / 権利制限 / 計量経済学 / 同人 / 二次創作 / 出版権 / 電子出版 |
Research Abstract |
昨年度に引き続き、創作・流通・利用に関する様々な主体の活動実態について把握、分析する作業を進めた。平成24年度は特に、白田秀彰准教授を中心とする同人誌の実態の予備調査(類似性判断の再検討)、藤本由香里准教授によるタイでの正規版・海賊版の流通状況の実態と、めざましい成果をあげた海賊版対策の実際についての調査、及び日本マンガ学会での二次創作に関するシンポジウムの企画・司会、田中辰雄准教授を中心とする著作者の人格的利益に関するアンケート調査、私的複製についての検討(その成果は2013年4月の著作権法学会での報告の一内容となっている)、出版者の権利を巡る検討・シンポジウム開催・政策提言において重要な成果を得た。また本研究成果の一環として平成24年3月20日にロンドン大学IALSにて、日本の著作権を取り巻く議論状況についての報告を行った。 特に出版者の権利については、「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」から隣接権を創設すべきとの案が公表されたことに鑑み、平成24年11月25日に公開セミナー「出版者の権利とその役割」を開催した。また、議論状況から速やかな政策提言が望ましいと判断し、本研究会やセミナーでの議論を踏まえ、平成24年度末から、研究代表者の中山信弘を中心に6人のメンバー(金子講師、連携研究者の上野達弘教授、研究協力者の福井健策弁護士を含む)により、出版者の権利に関する政策提言(「出版者の権利のあり方についての提言」「ナショナル・アーカイブと権利情報に関するビジョン」)を取りまとめ、平成25年4月4日に公表した。この提言は同日「印刷文化・電子文化の基盤整備に関する勉強会」に提出され、同勉強会の方針とすることが決議されている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に実施をしたクリエイター・パブリッシャー・ユーザーの著作権意識に関する実証研究については、その調査結果と分析を2012年度中に公表をすることを予定していた。しかし研究会内部での検討により、プロのクリエイターを対象とする調査対象の拡大と、著作者の人格的利益に関する調査と合わせて追加的な調査を行い公表をすることが望ましいとのこととなった。また電子教材の利用の実験については、当初の計画にはなかったものの2011年度に協力の依頼があり、2012年度中の実験を予定していたが、協力先の状況の変化により、2012年度中の実施をすることができなかった。 他方で、具体的な政策提言については、本研究課題では後半の年度以降での提言を予定していたが、特に出版者の権利をめぐる議論状況に鑑み、平成24年度末に集中的な検討により「出版者の権利のあり方についての提言」「ナショナル・アーカイブと権利情報に関するビジョン」をまとめた。著作者・出版社・利用者の利害に対応した出版権制度の拡大と、コンテンツデータと権利情報とを合わせて集積することで商業利用にも応用可能なナショナル・アーカイブの構築という方向性を示すことができた。 実証研究の公表等の点では平成24年度の計画よりも若干の遅れがみられるものの、出版者の権利について具体的な政策提言を取りまとめた点では計画以上の進展がみられ、両者を勘案し「おおむね順調に進展している」との自己評価をしている。
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Strategy for Future Research Activity |
今年度も月1 回の頻度で研究会を開催するとともに、創作・流通・利用に関わる主体を招聘し、実態のついてのヒアリングを行うとともに、出版者の権利にかかる提言、アンケート調査結果等についての意見交換も行う。研究会の前後にメンバー間の打ち合わせの時間を設け、各人の研究活動について情報交換を行う。また明治大学内では2週に1度の頻度で研究打ち合わせを継続的に行っている。 研究体制の点では、これまで連携研究者として協力を得ていた上野達弘教授(「出版者の権利についての提言」の提言者の一人でもある)が研究分担者として加わわった。他方、2012年度から2013年度にあたり研究分担者を離れた研究者は、2013年度中の在外研究を理由とするものであり、研究会などへのネットを通じた参加や在外調査等において今年度も連携研究者として協力を得る。 初年度・昨年度までのクリエイターなどの著作権及び人格的利益にかかる意識調査のデータについての分析作業を進める。今年度の後期は、図書館や教材利用などの問題について権利者・媒介者・利用者の意識調査などを中心にアンケートを行う予定である。研究会の開催等に伴い関係者・団体との交流は密となっており、調査への協力が期待できる。 また最終的な成果のとりまとめについて、研究成果の書籍等としての公表を念頭に、具体的な執筆分担なども含めて検討するとともに、出版者の権利以外の問題についても、政策提言の方向性につき検討を進める。
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Research Products
(20 results)