2011 Fiscal Year Annual Research Report
ミクロ・データを用いた我が国世帯の経済行動と政策効果に関する研究
Project/Area Number |
23243046
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Research Institution | Hitotsubashi University |
Principal Investigator |
堀 雅博 一橋大学, 経済研究所, 教授 (50284667)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
稲垣 誠一 一橋大学, 経済研究所, 教授 (30526380)
村田 啓子 首都大学東京, 都市教養学部, 教授 (90526443)
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Keywords | 恒常所得仮説 / 日本的雇用 / 所得・資産格差 / ミクロ・データ / 遺産相続 / 世帯消費 / 政策効果 |
Research Abstract |
本研究では、消費に係る「恒常所得仮説」の日本における現実妥当性を中核に据えつつ、世帯調査の個票データを用いて80年代以降に生じた世帯構造や資産分布の変化を特定し、それが消費者行動及び政策効果に与えた影響を分析することを目的としている。 平成23年度には、各種統計調査の個票を入手して本研究の基礎となるわが国世帯のミクロ・データベースの構築を進めるとともに、それらからは得られない世帯属性・行動情報を収集するアンケート調査を企画・実施した。また、データベースの構築と並行して、部分的な個票でも可能な恒常所得仮説関連の検証分析を開始し、幾つかの成果を公表した。 ミクロ・データベースの構築については、まず、「家計調査」、「賃金構造基本統計調査」、「消費生活に関するパネル調査」のそれぞれについて個票データの利用を申請(一部は平成22年度に申請済)し、データ入手の後、各世帯について金融資産、実物資産、人的資産の推定作業を行った。 アンケート調査(第一回:「家族とくらしに関するアンケート」)は、既存のデータでは十分な情報が得られない世代間所得・資産移転等に関する情報収集を主たる目的として行った。具体的には、家族構成等世帯属性情報と併せ、資産保有状況、遺産相続の実態、社会階層等を調査した。 データベースの構築作業、及びアンケート結果の最終的な取りまとめには相当の時間を要することから、それらの作業と並行して、部分的な個票で対応可能なテーマについて分析を開始し、幾つかの成果について学会で報告するとともに、研究代表者が所属する一橋大学世代間問題研究機構のディスカッション・ペーパーとして公表した。具体的には、(1)日本的雇用の弱体化とそれが家計経済に及ぼす影響、(2)世帯消費における過剰感応の検証、(3)遺産相続は格差の世代間移転を引き起こしているか等のテーマを扱った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
平成23年度中に完成を予定していたミクロ・データベースの構築には若干の遅れ(人的資産部分の構築がまだ終わっていないが、平成24年夏までには完了見込み)が見られるが、アンケートについては予定通り企画・実施を完了し、また学会発表、3本の学術雑誌への寄稿(うち一本は査読付き英文誌)、5本のディスカッション・ペーパーの公刊等、当初の計画を上回る実績が上がっている部分もあることから、概ね順調に進展していると評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究課題は概ね順調に進展していることから、基本的には研究計画に則って研究を遂行する。平成24年度では、若干遅れが生じたミクロ・データベースの完成を急ぐとともに、第二回のアンケート調査を実施する。また、所得・資産分布の変遷分析、人的資産の推定結果まで組み込んだ恒常所得仮説の検証、及びわが国における恒常所得仮説の現実妥当性の評価を踏まえたマクロ経済政策(景気対策としての減税施策)や税・社会保障制度(改革)の評価を行う。平成25年度には、平成24年度迄の成果を踏まえつつマクロ経済政策や税・社会保障制度改革の評価を行うとともに、研究の成果を基礎パラメータに反映したモデルを用いたシミュレーション分析を行う。
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