2014 Fiscal Year Annual Research Report
高次システム創出のための共生的産業間技術創造メカニズムの研究
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23243056
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Research Institution | Tokyo Institute of Technology |
Principal Investigator |
藤村 修三 東京工業大学, 大学院イノベーションマネジメント研究科, 教授 (90377044)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
日高 一義 東京工業大学, 大学院イノベーションマネジメント研究科, 教授 (50565736)
辻本 将晴 東京工業大学, 大学院イノベーションマネジメント研究科, 准教授 (60376499)
尾形 わかは 東京工業大学, 大学院イノベーションマネジメント研究科, 教授 (90275313)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 高次システム / 技術の階層 / 事後モジュール化 / アーキテクチャ / 共生的協業 |
Outline of Annual Research Achievements |
2件の海外国際学会発表と3件の国内学会発表を行った。 ISPOR 19th Annual International Meeting では日本での医療機器の認証期間に申請企業の過去の認証申請経験が影響していることを独自に作成したデータベースを用いて実証した。また、ISPIM 2015 ではナノインプリント分野の学術論文の引用関係を著者の所属組織(大学or企業)に着目してクラスター分析を行い、基礎的分野と応用分野の研究がどのように相互に関連しながら発展する様子とその際の大学と企業の役割を明らかにすることで、産学間の共生的協業の実態を分析した。この内容は研究・技術計画学会においても発表した。 組織学会で発表した2件は共に技術と市場の関係に関する理論的研究で、西尾はコンピュータシミュレーションを用いて、破壊的イノベーションのような技術の発展がもたらす市場の現象を統一的に説明した。また、徳永はアーキテクチャに基づく設計理論、DSM (Design Structure Matrix)と公理設計が技術の階層を考慮すると等価であることを数学的に証明した。 一方企業の中核幹部社員が研究員として参加し、公開データもしくは公開可能データだけを用いて自社研究を行う「産業間協創システム研究会」の活動では2014年7月9日と8月27日に企業の経営者が組織する価値創造フォーラム21上期エグゼクティブ・ワークショップで4人の企業研究員(全日空、帝人、富士ゼロックス、千代田化工)が成果発表を行った。後日三井不動産ファシリティーズの会長が全日空を訪問し発表内容について議論するなど、企業秘密を明かさずとも産業分野を超えてビジネスモデルや産業技術について情報交換が可能であることが確認された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
大学としての研究を共同で進めている学生の大半が社会人であり、そのため業務との関係で研究の進捗が予定通りに進まないことが多い。 今回一部資金を繰り越した社会人学生の場合は勤務先の所属変更が落ち着き研究を進めることが可能となり、繰越期間中に英文学術誌に論文投稿した。 専任の博士学生で体調不良から国際学会からの実質的な招待を断らざるを得なかった高次システムとしての原子力発電事業の危機管理に関する研究は、学生の体調が回復せず資金を繰り越したにもかかわらず国際学会発表はあきらめざるを得なかった。しかし、学生の体調維持に努めながら博士論文執筆に専念させることで研究が進んだ。 一方、論文の引用関係に着目してナノインプリント分野の産学間での共生的協業を解析する研究は予想以上の結果が得られたことから、繰り越した資金を使って国際学会ISPIMで成果発表を行い、海外の研究者から高評価を得ることができた。ISPOR で発表を行った研究も国際学会で発表が採択されるまでのレベルの成果が得られるかどうか不明であっただけに、想定以上によい結果が得られたと判断している。 企業の中核幹部社員が研究員となって進めている産業間協創システム研究会の研究は、いずれの企業研究員の研究も順調に進んでいるが、全日空所属の研究員が行っている安全性に関する研究では、企業として求める安全整備の外注化の是非という経営課題に留まらず、人の安全に対する認識とその判断プロセスという、より一般的で基礎的な研究課題が根底にあることが明らかとなり、この部分は大学として研究を進めることになった。すでに行動経済学分野において注目を得られるであろう成果が得られており、当初目的とした産学間での連携研究が実現した。なお、実務面でも全日空と帝人の間で両者の研究成果を基に新たな製品の開発が行われることになり、目的通りの成果が生まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
27年度は本研究の最終年度であり、これまで進めてきた研究のまとめを行う。形式な面では当初計画で予定した国際的な成果発表会を開催する他、産業間協創システム研究会での企業研究員の成果をワーキングペーパーとして公表する。 高次システムとしての原子力発電事業の研究は担当した博士学生の博士論文としてまとめる。一方で、ナノインプリントを題材とした産学間共生的協業の研究成果を海外学術誌に投稿できるよう英論文執筆を進める。製品設計と市場の関係に関する理論研究では海外論文誌に採択された内容をさらに進化させ、設計パラメータと市場との関係を議論するための理論的枠組みを追求する。 本年度その必要性が明らかとなった人の安全に対する認識とその判断プロセスに関する研究は、現在得られている結果をより説得力のある結果とするよう研究を発展させ、行動経済学関連の国際学会で発表する。また、本年度より開始した自動車産業と鉄鋼産業の関連については、技術的必然性を考慮することで従来経営学で言われている企業間関係では説明できない現象を説明できる可能性があることが分かったので、技術的に高次システムを実現していく上で考慮すべき企業間関係の一つとしてその解明を進める。 産業間協創システム研究会は26年度で第一期が終了するが、続いて第二期をこれまで同様進める。第一期に参加した全日空、富士ゼロックスが引き続き参加する他、新たに三菱ガス化学、日産自動車、JFE鋼板の三社が加わり,5社体制でスタートしている。第二期では高次システム産業の創造に向けて、単に各企業研究者が自社の研究を進めるだけでなく、産業、企業が異なっても共通するビジネス課題やビジネス慣行等について議論する機会を増やし、新ビジネス創成への効果を確認する。
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Research Products
(5 results)