2014 Fiscal Year Annual Research Report
医療領域の心理職養成カリキュラムに関するプログラム評価研究
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23243073
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
下山 晴彦 東京大学, 教育学研究科(研究院), 教授 (60167450)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
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Keywords | 臨床心理学 / 心理職 / 医療領域 / 養成プログラム / 認知行動療法 / 発達障害 / 教育訓練カリキュラム / 多職種協働 |
Outline of Annual Research Achievements |
2014年度の研究計画は、「多職種協働の総合的カリキュラム開発」、「医療領域で活用できる認知行動療法用のICT学習システム開発」、「発達障害の理解と支援のためのテキストとマニュアルの作成」を3つの柱として構成されていた。「多職種協働の総合的カリキュラム開発」については、2013年度までの研究成果を整理し、2014年8月の日本心理臨床学会33回大会においてシンポジウム「世界の臨床心理学の現在、そして日本の臨床心理学の未来を考える―DSM-5の登場、国家資格化、多職種協働を踏まえて―」を企画し、医療の心理職の役割と教育訓練システムを議論した。さらに2015年1月発行の臨床心理学誌の15巻1号において「医療・保健領域で働く心理職のスタンダード」との特集を組み、心理職に必要な知識、技能、態度を示すとともに養成プログラムを提案した。「医療領域で活用できる認知行動療法用のICT学習システム開発」については、2013年度からの繰り越しで進行はやや遅れたが、結果として映像ソフトを活用した臨床心理学教材の開発という新たな手法を得ることができ、成果の一部を公開することができた。「発達障害の理解と支援のためのテキストとマニュアルの作成」については、発達障害の症状と家族関係の研究を進め、その成果を踏まえて2014年の臨床心理学誌で「発達障害研究の最前線」(14巻3号:5月発行)、「発達障害を生きる」(14巻6号:11月発行)との特集を組み、養成プログラムで必要な知識、技能、態度を提示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究成果に基づく養成プログラムの教材作成と、それを活用したカリキュラム開発が順調に進んでいる。繰り越し研究によって映像を活用したソフト開発を加えることで認知行動療法のICT学習システム開発を多様な方向で発展させることが可能となった。そこで、複数のコンピュータ化認知行動療法のアプリケーションとWebサービスを組み合わせたe-learning 形式のICT学習システムの構築が次の課題としてみえてきた。発達障害の理解と支援のためのプログラムに関しては、DSM-5において自閉症スペクトラム障害が神経発達障害群に位置づけられたことに示されるように神経心理学的形成メカニズムの学習が必要となった。そこで、基礎心理学の研究者と共同研究を行い、発達障害に関して最新の基本的知識と支援技能を整理し、テキストを作成する準備を整えた。その結果、科学研究を行う学術心理学と臨床実践を行う職能心理学との統合の必要性が強く示唆された。これについては、本研究課題の開始時から取り組んでいた心理学辞典の編集が終わり、新しい形式の読む辞典として出版できたことで、心理職の養成プログラムの基盤となる心理学全般の知識を学ぶ教材を提供することができた。さらに、今後は、学術心理学と職能心理学の統合という観点からは、大学院の専門職教育だけでは不十分であり、今後は学部の心理学教育を含めた体系的な養成プログラムを構築する必要性という、次の課題も明らかとなった。
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Strategy for Future Research Activity |
研究の推進方針は、これまでの研究成果をまとめ、それを実際の心理職養成プログラムで活用できるテキスト及び教材として公表することである。具体的には、①医療領域で働く心理職の標準テキスト作成、②情報通信技術を活用した心理支援ツールと、それを用いた訓練システム開発、③最新のプログラムと訓練システムに基づいて大学院臨床心理学コース修士課程プログラム及び既に現場で勤務している心理職のリカレントプログラムの実施、④上記のプログラム実施の結果に基づき養成プログラムの改定の4点を目指す。 「心理職の標準テキスト作成」については、これまでの研究成果から、従来の心理療法中心の技法体系ではなく、エビデンスベースト・アプローチに基づき、コミュニティにおいて多職種協働チームで心理支援ができるための知識と技能が必要であることが明らかになっている。そこで、認知行動療法を基礎技法とするコミュニティアプローチの技法体系を学ぶ養成プログラムとすることとする。「情報通信技術を活用した心理支援ツールと、それを用いた訓練システム開発」では、コンピュータ化認知行動療法のWebサービス・システムを開発し、多くの人がアクセスしやすい教材の制作を目指す。「大学院臨床心理学コース修士課程プログラム及び心理職のリカレントプログラム」については、認知行動療法と発達障害のテーマを絞ったプログラムを提供し、その効果評価をすることに重点を置く。なお、標準テキスト作成については、医療・保健領域の基本方針となっている多職種協働チームにおいて心理職が的確な役割を担うことができるために科学者-実践者モデルと生物-心理-社会モデルに基づく内容とする。さらに両モデルの基礎教育を充実させるために学術心理学との連携を進めることも目標とする。
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Research Products
(14 results)