2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23243077
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Research Institution | Tamagawa University |
Principal Investigator |
坂上 雅道 玉川大学, 脳科学研究所, 教授 (10225782)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松田 哲也 玉川大学, 脳科学研究所, 准教授 (30384720)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 前頭前野 / 意思決定 / モデルベース / 思考 / 目標指向性 |
Research Abstract |
ヒトを始めとする霊長類の判断(あるいは意思決定)は、複数の神経回路によって実現されていることが明らかになってきた。皮質下の脳機能によるモデルフリー型意思決定と前頭前野機能に依存するモデルベース型意思決定である。後者は、ヒトの熟慮的判断に対応するものと考えられており、①推論可能性、②顕在性、③目標志向性を特徴とする。本プロジェクトは、サルを使った神経生理学実験とヒトを被験者とするfMRI実験により、ヒトの熟慮的判断の神経メカニズムを明らかにすることを目的とする。熟慮的判断(モデルベース型意思決定)が、前頭前野内のどのような神経回路の働きによって作り出されているかを理解するために、平成24度は、主にニホンザルを使った3つの神経生理学実験を行った。①推論課題(推論可能性の神経メカニズム):前頭前野外側部のニューロンは、推移的推論を行うことができるが、この機能は情報の抽象化(カテゴリー機能)によって可能になっていることが示唆された。②自由/強制選択課題(意図性とそれにかかわる顕在性の神経メカニズム):局所場電位(LFP)データを使った、得ようとする報酬情報のデコーディングを行った。自由選択に関わるニューロン群と強制選択に関わるニューロン群は前頭前野内で異なっていることを示唆する結果が得られた。③コスト-ベネフィット(CB)課題(価値情報の統合にかかわる神経メカニズム):サル中脳ドーパミンニューロンから課題遂行中のニューロン活動を記録した。ドーパミンニューロンは、報酬の情報とコストの情報を統合してコードしていることがわかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ヒトを始めとする霊長類では、前頭前野機能に依存するモデルベース型意思決定に特徴がある。これがヒトの熟慮的判断を可能にするものと考えられており、①推論可能性、②顕在性、③目標志向性を特徴とする。①に関しては、前頭前野のニューロンが推移的推論機能を有しており、これは、情報の抽象化機能に依存していることを実験的に示すことができた。また自由/強制選択課題を使った実験から、外側前頭前野には自由選択課題でだけ、その目標情報を表現するニューロン群があり、作業記憶的情報保持とは異なる目標指向性の計算メカニズムがあることを示すことができた。サルを使った神経生理実験は、順調に進んでいる。これを補完する実験として、前頭前野全体のネットワーク機能をヒトで調べるfMRI研究を今後は行っていく。
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Strategy for Future Research Activity |
サルを使った神経生理実験により、前頭前野には、熟慮的判断の基礎を担う推論可能性、目標志向性に関係するニューロン活動があることが分かった。最終年度では、動物実験の成果を国際誌に発表すると同時に、これらの機能がどのように、より広い範囲の前頭部(前頭前野外側部、眼窩部、内側部)ネットワークの中で統合されているかをfMRI実験により調べる。また、これらの脳活動が、実際の行動や言語報告とどのような関係があるかについて検討することにより、熟慮的判断のもう一つの特徴である顕在性についても明らかにする。
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Research Products
(9 results)