2012 Fiscal Year Annual Research Report
r-過程重元素合成経路における中性子数126近傍核の生成分離法の開発
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23244060
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Research Institution | High Energy Accelerator Research Organization |
Principal Investigator |
鄭 淳讃 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (00262105)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平山 賀一 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (30391733)
宮武 宇也 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 教授 (50190799)
石山 博恒 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50321534)
渡邉 裕 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 研究機関講師 (50353363)
今井 伸明 大学共同利用機関法人高エネルギー加速器研究機構, 素粒子原子核研究所, 助教 (80373273)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 単一核種生成分離器 / アルゴンガスセル / レーザー共鳴イオン化 / 多核子移行反応断面積 / 入射核側破片核 / 標的側破片核 |
Research Abstract |
当年度では、理化学研究所・リングサイクロトロンからの鉄ビームを用いて単一核種生成分離システムのオンライン試験を行った。又、昨年度末に行った多核子移行反応断面積測定実験のデータ解析を行い、入射核側破片核(Projectile-Like Fragments: PLF)の断面積を見積もった。(1)単一核種生成分離システムのオンライン試験:この試験では、オフライン試験項目(アルゴンガス流によってレーザーイオン化領域まで中性原子を運び、レーザー照射によりイオン化させた後、引き出すこと)に加えて、高速のイオンをアルゴンガスセルの中に打ち込み、阻止・中性化させる過程を主に調べた。その中で、入射高速イオン(トレーサーイオン)を阻止する過程で生成されるプラズマ内での化学反応(トレーサーイオン、又は中性原子とアルゴンガス、不純物との化学結合)を抑えることが要であった。ガス純化システムを補強して、水和物イオンの生成を殆どなくすことができた。又、241Am ソースを用いて、ガスセルの純度(ppb以下)をモニターする手法を見出した。オンライン試験では、阻止・中性化後、レーザーイオン化された鉄イオンを引き出すことに成功したが、レーザーイオン化効率は10-3程度であった。ガス流による輸送時間は200ms程度。(2)多核子移行反応短面積測定実験データ解析:136Xe+198Pt反応系において多核子移行反応により生成されるPLFの同定を行い、陽子4個が移行する反応チャネル(Xe±4p)までの断面積を見積もった。ここでは、測定された136Xeの弾性散乱収量を用いて相対的に見積もったが、GRAZINGの予測より、Ba(+2p)の場合一桁以上、Ce(+4p)の場合二桁以上、その断面積が大きいことが判明した。これにより、本研究で目指している標的側破片核Os、Taなどの生成断面積も予測より大きいことが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
単一核種生成分離器の各要素の製作・性能試験は予定通りに進められているが、オンライン試験の場合には、加速器から供給されるビームを利用することとなり、必ずしも、予定通りの試験が行えるとは限らない。それで、本年度のオンライン試験では、必要なビームを期待することが難しく、次善策として、当初予定した低エネルギー(核子当たり1MeV程度)ニッケルビームの代わりに、高エネルギー(核子当たり90MeV)鉄ビームをガスセルに打ち込む直前に核子当たり1MeVまで減速させた。そのため、得られた効率(10-3程度)の解釈に議論の余地が多く、次のステップに進めるために必要な単一核種生成分離システムの全系効率を精度よく定めることが困難な状況である。入射エネルギーの99%をアルミ板(~2.5mm)で落とさなければいけないので、ガスセルに対するその減速の位置を工夫して減速の効率化を図ったが、精度よくガスセルの中で阻止されるビームの割合を見積もることが難しい。また、その際発生する放射線による中性原子の再イオン化の傾向も見られた。本年度に得られた効率は、高速イオンの阻止、中性化、ガス流による輸送、レーザー照射による共鳴イオン化という全過程効率を含んでいる総合的な数値であり、それを評価するのには各素過程の効率についての考察が必要である。そこで、オフライン試験でアクセスできる過程については、より詳細なオフライン試験によりその精度を上げるようにすると上記で提起した問題点について定量的な考察ができると期待される。
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Strategy for Future Research Activity |
本年度に行ったオンライン試験で得られた全体効率の主な不確定さとしては、減速ビームのエネルギー広がりによる阻止効率の不確定さ、減速板からの照射による効果(中性化効率および元素選択度を悪化させる原因の一つとして考えられる)などが上げられる。放射線ソースを使うなどのより系統的なオフライン試験によって、ガスセルにおける各過程(オンライン試験でしか確認できない阻止効率などの確認を除く)の効率の見直しを行い、全体効率をある程度の精度(一桁以内)で確定する。それに基づいて、到達可能な多核子移行反応チャネルを焦点に、本実験の提案を行えるようにする。
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Research Products
(10 results)