2011 Fiscal Year Annual Research Report
ダイヤモンド結晶欠陥をλ型原子として利用した、単一光子の高効率量子メモリの実現
Project/Area Number |
23244079
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Research Category |
Grant-in-Aid for Scientific Research (A)
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
竹内 繁樹 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (80321959)
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Keywords | 光子 / 量子メモリ / 量子情報 / 量子中継 |
Research Abstract |
量子情報通信処理において、光子は、長距離伝送が可能などの特長を持つ、有力な情報担体である。その光子を用いた量子情報技術で、現在ボトルネックとなっているのが、光量子メモリである。本研究では、λ型原子の2つの基底状態間に状態を転写するという理論提案を、ダイヤモンド窒素欠陥(NV)中心と、低損失で高いQ値を有するファイバ結合微小球共振器を組み合わせた系により実現を目指す。そのために、NV中心とファイバ結合微小球共振器を組み合わせたデバイスを作成し、それを極低温下で評価する。また、評価実験に際しては、窒素欠陥中心の微細構造準位を、マイクロ波等で制御することが望まれる。 平成23年度および平成24度の計画延長においては、オンデマンド操作によるナノ光デバイス作成、極低温下でのデバイス評価実験などを行った。その結果、平成23年度、ナノ光ファイバへの微粒子のピック&プレイスの初期的実験に成功、また、ファブリペロ共振器を用いた、高分解能(100MHz)でのスペクトル取得の初期実験に成功した。その他、直径300nmのナノ光ファイバを実現(Opt.Exp. 2011)、その上に付着させた半導体量子ドットからの発光の、ファイバへの高効率結合を実証した(Nano Letters 2011)。 また、特定の基板上に分散させたダイヤモンドナノ結晶中のNV中心が、非常に鋭い共鳴ピークを示し、かつ、フォノンサイドバンドが大きく抑制されることを見出した(Optics Express2012)。さらに、平成24年度中に目標としていた、ダイヤモンド窒素欠陥中心とファイバ結合微小球を組み合わせたデバイスについても、実現に成功(Optics Express 2012)、また、ファイバ結合微小球共振器の極低温下(10K以下)での厳密な制御にも成功した(Optics Express 2012)。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
ダイヤモンド窒素欠陥準位のピック&プレイスに成功、また、微小球共振器とナノ光ファイバの結合の精密な制御により、極低温下での偏光解析による位相シフトスペクトルの取得に成功する(Opt. Exp. 2012)など、当初計画した、NV中心とファイバ結合微小球共振器を組み合わせたデバイスを作成し、それを極低温下で評価する技術をほぼ確立することができた。 それに加えて、固体単一発光体の発光のナノ光ファイバへの高効率結合に初めて成功、Nano Letters (IF=13.2)に掲載された。この成果は、量子ドットや蛍光蛋白などの光ナノプローブからの蛍光を、共焦点顕微鏡などのシステム無しで、直接単一モードファイバに高効率で出力できることを意味する。単一モードファイバに高効率で出力する単一光子源の実現という、光量子情報への応用上の意味だけでなく、光化学やライフサイエンスにいたるまで、幅広く応用可能性がある発見だと考えている。他にも、従来困難と考えられていた、フォノンサイドバンドの抑制に関し、その基板依存性を発見した。それらをNano Letters 1件、Opt. Exp 7件の論文として発表することができた。このことから、当初の計画以上の進展が得られたと考える。
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Strategy for Future Research Activity |
以上のように、当初計画の柱の一つである、NV中心とファイバ結合微小球共振器を組み合わせたデバイスを作成し、それを極低温下で評価する技術については、ほぼ確立することができた。 今後は、窒素欠陥中心の微細構造準位のマイクロ波等で制御に関し、単一窒素欠陥中心の光検出磁気共鳴(Optically detected magneto resonance, ODMR)の実験系の構築をすすめる。具体的には、ODMR実験系の完全な立ち上げ、ODMR信号の観測ならびに、マイクロ波によるスピン状態の制御を目指す。また、デバイスのアセンブリ技術に関しては、ピック&プレイス装置の改良を行い、より小さなダイヤモンド結晶の、より正確な制御を可能にする。それらにより、テーパ光ファイバに結合したダイヤモンドナノ結晶の、極低温下での発光の観測を目指す。 また、NV中心からの発光のコヒーレンスは、本研究はもちろん、光量子情報科学全体において重要な問題である。ごく最近、バルクダイヤモンド中のNV中心の超高分解能(分解能~100MHz)蛍光(PL)スペクトルの報告が、HP研究所(米国)とデルフト大学(オランダ)からなされたが、ダイヤモンドナノ結晶中のNV中心に関してはまだ報告がない。我々は、今回発見したフォノンサイドバンドが大きく抑制効果を利用して、高分解能蛍光スペクトルの解析を進める予定である。また、引き続き連携研究者である越野准教授とデバイスの最適な検証実験スキームについて議論をすすめる。
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[Journal Article] Noncollinear parametric fluorescence by chirped quasi-phase matching for monocycle temporal entanglement2012
Author(s)
A.Tanaka, R.Okamoto, H.H.Lim, S.Subashchandran, M.Okano, L.Zhang, L.Kang, J.Chen, P.Wu, T.Hirohata, S.Kurimura and S.Takeuchi
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Journal Title
Opt.Exp.
Volume: 20
Pages: 25228-25238
DOI
Peer Reviewed
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