2012 Fiscal Year Annual Research Report
宇宙プラズマにおける高空間分解能の科学を拓く超小型プラズマ波動観測器
Project/Area Number |
23244097
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
小嶋 浩嗣 京都大学, 生存圏研究所, 准教授 (10215254)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
臼井 英之 神戸大学, その他の研究科, 教授 (10243081)
八木谷 聡 金沢大学, 電子情報学系, 教授 (30251937)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2015-03-31
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Keywords | アナログASIC / プラズマ波動 / 波動粒子相互作用 / 宇宙プラズマ / 波形捕捉型受信器 / スペクトル型受信器 / 多点同時観測 / 電磁界センサー |
Research Abstract |
プラズマ波動観測器における波形捕捉型チップを一通りの機能のインプリメントを終了し、そのチップをもとにして小型の基板を開発した。基板は、マッチ箱サイズであり、これで電磁界6成分を同時に観測することができる。このような小型のプラズマ波動観測器は世界初のものである。できあがった基板は、外部からの制御信号により、0, 20, 40dBのゲインを切り替えることができる他、デフォルトは100kHzまでの上限周波数であるが、クロックを変更することによって、上限周波数を下げることができる。この成果は学術論文として発表した他、新聞報道にもとりあげられた。 一方、スペクトル型受信器の方では、PLLを開発し、VCOの発振状況の確認を行い、今後の開発へとつなげる知見を得た。 一方、波形捕捉型受信器では必須となるオンボードのcalibration回路をチップ内に組み込むことに成功した。calibration回路では、外部からのデジタル波形をアナログ信号に変換して、それを波形捕捉型のチップそのものの入力や、プリアンプの入力に接続することによって、ゲイン・位相情報を得ることができる仕組みとなる。最終的には、再度デジがル化してCPUなどの処理によって情報を得ることになるため、開発では波形チップからでてくる波形をデジタル化した上で、別システムによってゲイン・位相解析を行い、十分に機能していることを確認した。 一方、繰越申請対象であった電界・プリアンプのアナログASIC化についても成功し、従来難しいとされてきたプリアンプのアナログASIC化に成功し、プラズマ波動観測器のシステム全体を、超小型化することに目処がついた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初予定していたプラズマ波動観測器の小型化のうち、波形捕捉型受信器全体を組み込むことができた。性能については、チップ化にともない、クロストークの増大やノイズレベルの増大など、小型化と引き替えになる部分も想定していたが、クロストークは、通常のプラズマ波動観測器と同程度に抑えられており十分なものが得られている。また、このチップを使った基板の開発に成功し、世界的にみても他に類を見ない小型化されたプラズマ波動受信器ができた。一方、当初は予定していなかった、電界、磁界のセンサープリアンプについてもASIC化に成功した。電界も磁界も、従来のノイズレベルにまったく遜色ないレベルになっている。得に、磁場は3成分を一つのチップ内に納める可能性がみえてきており、それが実現するとセンサーのコア内に納めたり、など、従来では想像もできなかったようなconfigurationの小型センサーを実現することができる見込みがたってきた。 小型電界センサーではCFRPを用いた自己伸展型電界アンテナの伸展機構・センサーそのものをほぼ完成させ、宇宙空間で、モーターなどの動力を使用せずに伸展できる軽量な電界センサーができあがった。 以上のように、当初予定していたものとは比べものにならない成果があがっている。
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Strategy for Future Research Activity |
今後、平成26年度に行う予定の小型センサープローブ宇宙空間放出実験に向けて、そのセンサープローブ内システムの開発と、そこに組み込むための波形捕捉型プラズマ波動観測器チップの高性能化をはかる。高性能化の具体例としては、内部で発生しているオフセットによってダイナミックレンジが犠牲になるため、そのレベルを調整できるようにする他、ゲイン切替のチャンネル間の独立化、アンプやOTAの改良によるダイナミックレンジの改善があげられる。一方、スペクトル型受信器では、その心臓部である周波数変換部をより安定に動作させるチップを開発する。得に、安定したPLLとバンドパスフィルタをつくりあげるようにする。 小型センサープローブは、上記のプラズマ波動観測器のチップ以外に通信として利用する無線LANシステムや、システム全体を制御するCPUなどが必要であり、それらのシステム開発ならびに、それらを制御するオンボードソフトの開発を行う。 先に述べたように、これらは平成26年度に予定しているロケット実験にむけたものであり、これらの他、ロケット実験ならではの放出機構の開発、通信回線の品質の保証方法などアナログASICの開発以外の部分にも力点をおいていくことにする。
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