2013 Fiscal Year Annual Research Report
トランスジェニック技術を用いた軟体動物貝殻形成遺伝子の機能解析
Project/Area Number |
23244101
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
遠藤 一佳 東京大学, 理学(系)研究科(研究院), 教授 (80251411)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
棚部 一成 東京大学, 総合研究博物館, 研究員 (20108640)
|
Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2016-03-31
|
Keywords | 貝殻形成 / 軟体動物 / 比較ゲノム / バイオミネラリゼーション / 進化発生学 / トランスジェニック生物 / 形態形成 / in vivoタンパク質機能解析 |
Research Abstract |
アコヤガイにおいてトランスジェニック系統を作出するために、以下の実験を行った。(1)ベータチューブリンおよびベータアクチン遺伝子のプロモーター領域の単離、(2)minosトランスポゾンを含むプラスミドへの上記プロモーターおよびeGFP遺伝子のクローニング、(3)トランスポゼースを含むプラスミドへの上記プロモーターのクローニング、(4)上記プラスミドのアコヤガイ受精卵へのエレクトロポレーションによる導入。これまでに、アコヤガイ受精卵にエレクトロポレーションがベストな状態で行われる条件検討を体系的に行っており、受精卵にプラスミドDNAが取り込まれる電圧、通電時間等を明らかにした。アコヤガイの上述プロモーターが受精卵において働いているかどうか現在確認を行っている。また、アコヤガイに関しては、一昨年出版されたゲノム概要配列に含まれる一連の遺伝子の同定、解析(アノテーション)を行い、Zoological Science誌の特集号として論文集を出版した。これらの成果は、トランスジェニック技術を用いた今後の遺伝子機能解析のための基礎的な情報を提供する。 モノアラガイに関しては、マイクロインジェクションによる遺伝子導入を行うための基礎的実験を行った。具体的には、受精卵への色素のマイクロインジェクションと、卵膜を除去し、むき出しにした胚を毛細管内で発生させる飼育実験を行った。今後さらに条件検討を勧め、遺伝子導入を行う。モノアラガイでは、貝殻のらせん成長に関与する遺伝子としてdpp遺伝子の発現解析を進め、dpp遺伝子が発生初期だけでなく、幼生期、成体期においても外套膜において、らせんに巻く貝では左右非対称に、モノアラガイの右巻き系統と左巻き系統では鏡像対象に、傘型の貝では左右対称に、それぞれ発現していることを明らかにした。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では、軟体動物においてゲノムに外来遺伝子を導入したトランスジェニック体を作出することにより、貝殻形成に関与する遺伝子のin vivoでの機能解析を行うことが大きな目標である。そのようなトランスジェニック軟体動物の作出にはまだ成功していないが、そのための基礎的な技術開発、条件検討は進んでおり、外堀は埋められた状況にある。アコヤガイに関しては、発生実験を行うことのできる繁殖期が2月から7月までの半年に限られている、卵サイズが小さくマイクロインジェクションを行うことが困難であるという制約があるが、エレクトロポレーションによる遺伝子導入を行える可能性が見えてきた。一方のモノアラガイは、年中実験ができる、マイクロインジェクションを行うのに十分な卵サイズであるなどの利点がある一方で、実際にマイクロインジェクションを成功させることが困難である(インジェクションすると胚が死滅してしまう)という困難がある。現在これらの問題を克服すべく、いくつかの条件検討を進めている。一方で、貝殻形成への関与が疑われる遺伝子の同定は、高速シーケンサーによるゲノム、トランスクリプトーム解析や質量分析計を用いたプロテオーム解析の技術を用いることで、大きく進展させることができた。これらの研究成果を総合的に見ると、おおむね順調に研究は進展していると判断することができる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も、アコヤガイとモノアラガイの双方において、受精卵に含まれるそれぞれのゲノムに外来のDNAコンストラクトをインテグレートさせることを目指した研究を推進する。アコヤガイにおいては、DNAを取り込みつつ、卵の死亡率を低く抑えることのできるエレクトロポレーションの条件をさらに詳細に検討する。また、トランスポゼースやGFPの発現を制御するプロモーターの活性を確認し、より強力なプロモーターの探索を行う。一方のモノアラガイでは、マイクロインジェクションによる胚へのダメージを最小にするための条件検討(飼育水のpH、添加物等による細胞膜の物理化学的性質の制御等)や卵膜を除去した状態での飼育条件の検討を進める。 これらの検討を通じてアコヤガイ、モノアラガイのそれぞれでトランスジェニックの系が確立できた後には、最近非モデル生物においても遺伝子ノックアウト実験に応用され始めているTALENやCRISPER/Cas9などを用いて、貝殻形成や形態形成への関与が疑われる遺伝子についてノックアウト実験を行い、軟体動物において貝殻形成がどのようなメカニズムで行われているか研究を進める。また、特にモノアラガイではゲノム解読がまだ完了していないため、国際協力のもと、ゲノム解析、トランスクリプトーム解析、プロテオーム解析、定量PCRやin situ hybridizationによる発現解析などを積極的に推進し、軟体動物の貝殻形成、形態形成に関与する遺伝子群の同定を進めていく。
|
Research Products
(13 results)
-
-
[Journal Article] Assessment of the mechanism of elemental incorporation into bivalve shells (Arctica islandica) based on elemental distribution at the microstructural scale2014
Author(s)
Shirai, K., Schöne, B.R., Miyaji, T., Radarmacher, P., Krause Jr., R.A. and Tanabe, K.
-
Journal Title
Geochimica et Cosmochimica Acta
Volume: 126
Pages: 307-320
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
[Journal Article] An in-silico genomic survey to annotate genes coding for early development-relevant signaling molecules in the pearl oyster Pinctada fucata.2013
Author(s)
S., Davin; Shimizu, K.; Kuroda, J.; Inamura, K.; Sato, K.; Isowa, Y.; Ishikawa, M.; Maeda, R.; Nakano, T.; Yamakawa, T.; Hatori, R.; Ishio, A.; Kaneko, K.; Matsumoto, K.; Sarashina, I.; Teruya, S.; Zhao, R.; Satoh, N.; Sasaki, T.; Matsuno, K.; Endo, K.
-
Journal Title
Zoological Science
Volume: 30
Pages: 877-888
DOI
Peer Reviewed
-
-
[Journal Article] The diversity of shell matrix proteins: genome-wide investigation of the pearl oyster Pinctada fucata.2013
Author(s)
H. Miyamoto, H. Endo, N. Hashimoto, K. Iimura, Y. Isowa, S. Kinoshita, T. Kotaki, T. Masaoka, T. Miki, S. Nakayama, C. Nogawa, A. Notazawa, F. Ohmori, I. Sarashina, M. Suzuki, R. Takagi, J. Takahashi, T. Takeuchi, N. Yokoo, N. Satoh, H. Toyohara, T. Miyashita, H. Wada, T. Samata, K. Endo and 3 others
-
Journal Title
Zoological Science
Volume: 30
Pages: 801-816
DOI
Peer Reviewed
-
-
-
-
-
-