2012 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
23244105
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
薛 献宇 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 准教授 (70362986)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
神崎 正美 岡山大学, 地球物質科学研究センター, 教授 (90234153)
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Project Period (FY) |
2011-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | マグマ / ガラス / 構造 / 核磁気共鳴法 / 水 / 二酸化炭素 / メルト |
Research Abstract |
本研究はCO2-H2O成分を含むケイ酸塩メルト(急冷ガラス)の構造を先端NMR測定及び第一原理計算により解明することを目標にしている。本年度では主に下記の研究を行なった。 1.水を含むM2O/SiO2比の異なるM2O-SiO2系(M=Na,Li)の急冷ガラスを、ピストンシリンダーおよび内熱ガス圧装置を用いて合成した。それぞれ1H MAS NMR, 23Na (または7Li)→1H CPMAS NMR, 23Na→1H TRAPDOR, 7Li-1H REDOR, 29Si→1H→29Si CPMAS NMR, 23Na 3QMAS NMRなどの測定を行なった。それによりアルカリケイ酸塩ガラス中の水の存在状態(NaOHやLiOH種の有無、SiOH種の水素結合及び空間的分布など)に関する新たな知見を得た。 2.CO2を含む複数のケイ酸塩(Na2O-SiO2, CaO-MgO-SiO2)及びアルミノケイ酸塩(CaO-Al2O3-SiO2, Na2O-Al2O3-SiO2)急冷ガラスをピストンシリンダー高圧装置を用いて合成した。CO2の存在状態(特にこれまで合意の至っていなかった炭酸塩イオンの局所構造)を解明するために、合成した試料はラマン及びNMR測定を行なった。また、実験データの解釈を支援するために、分子軌道法計算も行なった。その結果、異なった局所構造をもつ炭酸塩イオンの区別には13C化学シフトテンソルが有効であることが分かり、それを用いてケイ酸塩メルトにおけるCO2の溶解機構に関する新たな知見を得た。 3.先端NMR測定法及び第一原理計算を複数のケイ酸塩及び関連無機化合物結晶相(K-cymriteやAlPO4,Zn2SiO4,Ca2Si2O6-Ca2Al2O5系の高圧相等)に応用し、他の手法から得難い知見や未知構造の決定に繋がった。より複雑なガラスの構造解明の基礎を築いた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の核心的な部分である先端固体NMR測定によるCO2-H2O成分を含むケイ酸塩急冷ガラスについて確実に成果を挙げてきた。 H2Oを含むケイ酸塩ガラスについては、異なった重合度(M2O/SiO2比)のM2O-SiO2系(M=Na,Li)含水ガラスを合成し、詳細なNMR測定により、水は主にSiOH及び分子H2Oとして存在することが分かり、またcation field strengthのより高いLi2O-SiO2系については少量のfree OH(LiOH)種の存在も確認した。これらの結果は研究代表者らが以前行なったCaO-SiO2-MgO系における研究を補足し、ケイ酸塩メルトにおける水の溶解機構の組成依存性を一層明らかにした。 CO2を含むケイ酸塩ガラスについては、試料の合成の問題(還元されやすい)や高度なNMR測定法の適用の難しさ(29Si-13C二重共鳴の感度の低さ、27Al-29Si二重共鳴測定のハード上の問題など)から、簡単ではなかった。最終的に複数の代表的な組成の試料の合成に成功し、また、分子軌道法計算などから、異なったCO2化学種、特にこれまで合意の至っていなかった異なった局所構造をもつ炭酸塩イオンの識別には13C化学シフトテンソルが有効であることを突き止めた。合成した試料の13C MAS及びstatic NMR測定から、重合度の低いケイ酸塩組成(天然安山岩―玄武岩に相当)については、CO2は主にケイ酸塩ネットワークと結合しないfree carbonateとして存在することを証明した。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度は最終年度であるため、これまで進めてきたH2O及びCO2を含むケイ酸塩及びアルミノ珪酸塩系急冷ガラスの先端NMR測定及び第一原理計算による解明を完成させ、CO2-H2O成分の化学種及びそのネットワーク構造にもたらす変化を明らかにすることを目指す。H2Oのみを含むケイ酸塩ガラスの測定はほぼ完成したため、完結させ、論文にまとめ、国際誌に投稿する。CO2-H2Oを含む系については、昨年度で代表的な組成のCO2を含む急冷ガラスにおけるNMR測定及び分子軌道法計算から、異なったCO2種、特に解釈が分かれていた異なった局所構造をもつ炭酸塩イオン種の識別には13C化学シフトテンソルが有効であることが判明したため、同様な測定を(重合度、Si/Al比、金属イオンの種類、CO2-H2O成分の異なった)より広い組成範囲、より広い圧力範囲に拡張し、二重共鳴NMR測定、ラマン測定等と組み合わせて、全体像の解明を目指す。また、NMRパラメータの計算は分子軌道法計算に加えて、これまで結晶にしか適応しなかった平面波と擬ポテンシャルを使った第一原理計算も行い、より確かな結論を導く。得られた成果は国内、国際学会での発表及び国際誌への投稿により、積極的に発信する。
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Research Products
(12 results)